第98回 鉄道総研月例発表会:鉄道防災の動向

風上側風速計による強風時の列車運転規制方法


環境防災技術開発推進部(気象防災) 技師(係長) 今井 俊昭

 強風監視用の風速計は、建物や盛土などの影響を受けない位置に取り付ける必要がある。橋梁の構造物が巨大な場合には、橋梁の側部に10m程度の柱をたてて風速計を設置しても、風速計の位置が風下側となる風向の時は構造物の影響を受けて、風上側の風速とは異なった性質を示すことがある。造物の風下側で観測された特徴ある風速変動について紹介し、風向評価を含めた強風監視方法の適正なあり方について言及する。



車両に働く斜め風の空力特性


環境防災技術開発推進部(気象防災) 技師(主席) 種本 勝二

 強風時の鉄道の安全性と定時性を確保するためには、運転規制と規制解除を確実かつ効率的に行うことが重要であり、このためには強風の特性とともに横風による車両の空気力特性を明らかにする必要がある。従来からの研究で明らかになった車両に働く空気力が車両形状、橋梁形状に依存することに加えて、築堤上を走行する車両、特に先頭車両では、斜め風によって大きな空気力が働くことを明らかにしたので報告する。



のり面の降雨に対する危険度予測と評価プログラムの開発


環境防災技術開発推進部(地質防災) 主任技師 杉山 友康

 自然災害のうち降雨時の斜面崩壊は、発生頻度から見ると最も多く、鉄道の安全・安定輸送の大きな阻害要因となっている。このような災害を未然に防止するためには、弱点となる斜面の的確な判定と、降雨時の運転規制が必要となる。ここでは、多くの災害事例を統計的に分析して得た新しい斜面の危険度予測手法と現場の技術者でも容易に斜面の危険度評価が可能な評価プログラムを開発したので紹介する。



のり面植生工の耐雨性効果と現地適用への試案


環境防災技術開発推進部(地質防災) 技師 外狩 麻子

 のり面植生工は浸食防止の目的で、経済性及び施工性の利点から鉄道沿線において採用されているが、適用限界に関する定量的な指標が現在のところ明示されていない。この植生工に期待されるべき効果としては、植被による雨水遮断や蒸散による土中水の消失作用及び植物根系による表層土粒子の拘束がある。ここでは、この3つの効果による耐降雨性の向上を実験的に検証した結果を報告すると共に、現地への適用に関しても試案を挙げる。



のり面格子枠工の耐降雨性防護効果について


環境防災技術開発推進部 技師(主席) 佐溝 昌彦

 盛土のり面の降雨に対する防護工法としてのり面格子枠工が多く施工されている。しかしながら、のり面格子枠工の降雨に対する定量的な効果は明らかでない。そこで、のり面格子枠工をモデル化した模型実験を行うとともに、斜面の危険度評価基準を用いた対策前後の降雨履歴の相違によるケーススタディを行った。その結果、雨量指標換算によれば概ね20%の耐降雨性の向上が見込めることがわかった。



常時微動による被災高架橋の鋼板巻き耐震補強効果


ユレダス開発推進部(地震防災) 技師 井上 英司

 兵庫県南部地震により鉄道構造物は甚大な被害を受けた。特に高架橋・橋梁の被害は、破壊落橋という今までに経験したことのないものであった。そして復旧方法として柱の外側を鋼板で被覆して、柱と鋼板の隙間を無収縮モルタルで充填するということがなされている。ここでは、被災前に測定されていた常時微動の測定結果と、復旧工事後に測定した結果を用いて地震動特性の比較や、高架橋耐力の向上程度について比較したので報告する。



常時微動を用いた兵庫県南部地震の被害分析


ユレダス開発推進部(地震防災) 技師 上半 文昭

 1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震は関東大震災以来最大の被害を我が国に与えた地震であり、特に被害の激しい地域は震災の帯と呼ばれる帯状地域を形成した。この地震被害を分析することは都市の地震防災を考える上で非常に重要であると考え、常時微動測定調査を神戸周辺で実施し、表層地盤と構造物(建築物・高架橋等)の地震動増幅特性を推定し、その推定された地震動増幅特性と地震被害との関係について考察した。



鋼板巻き補強されたRC柱の変形性能


構造物技術開発事業部(橋梁) 技師 瀧口 将志

 既設RC柱の耐震補強工法として、鋼板巻き補強工法が多く用いられている。しかしながら その変形性能評価にあたっては、降伏変位算定時の鋼板の評価方法が明らかにされていない。また、限界変位(降伏荷重を下まわらない最大変位)算定のため、じん性率算定式としていくつかの式が提案されているが、これらには軸力の影響が考慮されていない。本研究では、既往の実験結果をもとにして解析を行い、鋼板巻き補強された柱の降伏変位は鋼板を無視したRC部材として算定すればよいことを明らかにしたうえで、く形および長方形部材における、精度のよいじん性率算定式を提案する。


第98回 鉄道総研月例発表会

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