第103回 鉄道総研月例発表会:基礎構造物

基礎の設計法と今後の展望


構造物技術開発事業部(基礎) 主任技師 棚村 史郎

 本年3月に刊行した「鉄道構造物等設計標準・同解説(基礎構造物・抗土圧構造物)」は、限界状態設計法を導入するとともに、近年の研究の成果や新工法の開発に伴う設計・施工技術を取り込んだ斬新な内容となっている。基礎の荷重〜変位曲線に基づいた合理的な設計体系をベースにしているが、今後は土質諸定数等の設計用値に関する信頼性理論に基づいた研究や兵庫県南部地震規模の地震動に対応した設計法の開発が期待される。



大地震力を考慮した直接基礎の設計法の提案


構造物技術開発事業部(基礎) 技師(係長) 羽矢 洋

 兵庫県南部地震規模の地震力を考慮した基礎構造物の設計では、従来のような動的作用力を静的な作用力に置き換える、いわゆる震度法に依ることには限界があり、上下部工を適切にモデル化した上で、動的解析を行うことが必要となる。本発表は、このような大地震力を念頭に、「直接基礎」の設計法の確立を目的に行ってきた実験的研究および解析的研究の成果をまとめ「大地震力を考慮した直接基礎の設計法」を提案するものである。



ケーソン基礎の模型実験と新しい設計法


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 西山 誠治

 平成9年3月、限界状態設計法による「鉄道構造物等設計標準・同解説(基礎構造物・抗土圧構造物)」が刊行された。この設計法を導入するには基礎の限界状態を設定する必要があり、模型基礎による水平載荷実験、振動実験により、基礎の大変位領域に及ぶ支持力性状および挙動を調査し、基礎の限界状態を把握した。ここでは深い基礎であるケーソン基礎について、実験結果およびその結果を反映した設計法について紹介する。



杭基礎の新しい設計法における部材評価


構造物技術開発事業部(基礎) 技師(主席) 近藤 政弘

 新しい設計法(限界状態設計法)では、基礎の変形性能を考慮した照査を行う。杭基礎の変形性能は、地盤反力の非線形性のみではなく杭体の非線形特性にも影響する場合が多い。ここでは、杭体の非線形性を考慮した部材評価の考え方、簡易的な杭体変形性能の算定について述べる。また、場所打ち杭の段落とし・定着長については限界状態設計法に対応した新しい手法を用いることとなるので、その結果を許容応力度法と比較して紹介する。



液状化の評価と設計の考え方


構造物技術開発事業部(基礎) 技師(主席) 澤田 亮

 地震時に液状化する地盤における基礎構造物の耐震安全性の評価手法の確立は急務である。液状化地盤中における基礎構造物は、支持力の低下、変位の増大が懸念され、加えて側方流動が発生する場合には、安定上極めて不利な状態となる。本発表は液状化地盤中の基礎構造物の挙動に関する模型実験結果と、それに基づく耐震安全性の評価の考え方について報告する。



応答変位法による設計の考え方と検証実験


構造物技術開発事業部(基礎) 技師 室野 剛隆

 応答変位法は地震時の地盤変位を考慮して耐震設計を行う方法である。そのためには地盤−杭−構造物系の地震応答特性の把握が大切であり、模型を用いた振動実験を行った。その結果、杭の応力には慣性力と地盤変位の効果が複雑に影響しており、両者の影響は地盤と構造物の固有周期の比に大きく依存していることが分かった。これらの結果に基づき、地盤変位と慣性力の組合せ方法を考慮した応答変位法の考え方を確立した。



地震時土圧と橋台の新しい設計法


構造物技術開発事業部(基礎) 技師(主席) 小林 雅彦

 このたび鉄道構造物の設計標準が改訂となり、抗土圧構造物の設計に限界状態設計法が導入された。土圧の影響を常に受けている抗土圧構造物の設計では、地震時土圧を正しく評価して限界状態を定める必要がある。設計標準の改訂にあたり、大地震時における地震時土圧の検討を行い、それにもとづく限界状態を設定し、新しい設計法を確立した。この検討経緯と橋台の新しい設計法について紹介する。


第103回 鉄道総研月例発表会

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