第105回 鉄道総研月例発表会:電気関係技術の最近の成果

整流器用変圧器の電圧切替によるレール対地電圧の抑制


電力技術開発推進部(き電システム) 技師 川原 敬治

 直流電鉄では、一般にレールを帰回路として用いているので、負荷電流とレールの抵抗及び漏れ抵抗によりレール対地電圧が発生する。漏水等で全体的に湿っているようなトンネル区間では、レール対地電圧により大地への漏れ電流が生じ、レール電食現象、火花や感電等の障害を引き起こす場合がある。そこで今回、整流器用変圧器のタップを調整することによってレール対地電圧を抑制できることをシミュレーションにより確認し、現地試験を実施した結果、その効果が顕著であることが分かったので報告する。



電車線路用フッソ樹脂塗膜がいしの開発


電力技術開発推進部(き電システム) 技師 安喰 浩司

 電車線路用がいしの塩害対策は、がいしの増結の他、シリコーン・コンパウンドの塗布が広く適用され、大きな効果をあげている。しかしシリコーン・コンパウンドは汚損物の蓄積により、ある期間経過するとその塗布効果を失うので定期的な塗り替えを必要とするという短所がある。そこでシリコーン・コンパウンド゙塗布に代わる塩害対策として、塗り替えが不要なフッソ樹脂塗膜がいしを開発した。



地震動による電車線柱の振動・曲げ特性


電力技術開発推進部 (き電システム) 主任技師 藤井 保和

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により、新幹線、在来線において電車線柱が大きな被害を受けた。土木構造物の損壊・落橋により電車線柱が損傷を受けた二次的被害が多かったが、構造物が健全で電車線柱のみが被害を受けた一次的被害も数例あった。そこで、電車線柱の振動・曲げ特性を調査するため、実物電車線柱を用い、共振周波数、神戸海洋気象台の観測波形による振動試験および曲げ破壊試験を行ったので報告する。



高速用き電分岐装置の開発


基礎研究部 (集電力学) 主任研究員 網干 光雄

 近年、電気車の速度向上などに伴い、き電分岐装置箇所におけるパンタグラフの離線並びにこれに伴うトロリ線局部摩耗の多発が各地で顕在化し、保全上の問題点となっている。そこで、これらの問題を解消し、さらに今後の速度向上にも対応するため、軽量化と低ばね定数化を図った装置を試作し各種試験を実施してきた。本発表では、装置の概要を紹介するとともに、その離線低減効果などの集電性能について報告する。



C-R式離線測定方法の開発


電力技術開発推進部 (集電管理) 技師 福谷 隆宏

 交流電化区間における離線測定方法として、現在は測定用パンタグラフ電位をコンデンサによって分圧して測定する容量分圧式の離線測定装置が使用されているが、架線電圧の高調波の影響を受けやすいため、VVVF車両等の走行による測定誤差が生じ易くなっている。そこで、精度の高いC-R式離線測定方法が考案され、その実用化を進めてきた。その測定原理と、現車試験の結果について報告する。



ATSを利用した情報伝送装置の開発と踏切定時間制御への応用


輸送システム開発推進部 (信号) 主任技師 佐藤 和敏

 車上から地上に列車番号や列車種別等の情報を伝送することによって、地上で駅の案内情報や踏切の開扉制御等きめ細やかな制御が可能となる。そこで、JR各社で使用されているATS−S形車上装置を活用して、現行機能には何ら影響を与えることなく40ビット程度の情報を伝送できる装置を開発した。この装置は、車上アンテナの新規取付けや接続ケーブル等の艤装が不要なため経済性に優れている。ここでは、装置の概要と列車種別情報により踏切の警報制御を行う応用について述べる。



3極保安器の効果的利用による電子踏切の雷害対策


輸送システム開発推進部 (信号) 主任技師 若林 武夫

 電子踏切はマイコンの導入で便利になったが、雷に対して非常に弱く障害が多発した。原因を究明するとともに効果的で経済的な雷害対策と現地試験結果を述べる。踏切は立地環境条件の悪い場所が多く総合的な雷害対策も必要であり、施工上の注意事項、調査結果等も紹介する。また、非電化区間の架空ケーブルからの雷サージ誘導は特に強力であるが、3極保安器で機器を防護しながら踏切の安全性を維持できる手法も含めて報告する。


第105回 鉄道総研月例発表会

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