第112回 鉄道総研月例発表会:大型低騒音風洞

風洞試験の意義と大型低騒音風洞の位置づけ


風洞技術センター センター長 前田 達夫

 鉄道の高速化に伴って、空力騒音、空気抵抗など空気力学的な現象が顕著となるため、環境にやさしい高速鉄道を実現するためには、それらの現象解明と低減対策法の開発が不可欠である。そのための研究設備として、鉄道総研に高性能な大型低騒音風洞が平成8年に完成した。ここでは、風洞試験の意義と鉄道の空気力学的現象の解明に必要な風洞の仕様、鉄道総研の大型低騒音風洞の設計の考え方について述べる。



大型低騒音風洞の概要(装置と計測システム)


風洞技術センター 副所長 近藤 善彦

 鉄道総研の大型低騒音風洞は、開放型(空力騒音測定用)と密閉型(空気力測定用)の二つの測定部を持ち、世界に比類なき低騒音性能を誇り、大型で世界最高速の移動地面板を有している。ここでは、この風洞の装置と計測システムについて、移動地面板、トラバースや6Wレーザー2台による可視化装置等の諸設備、計測装置など風洞各部の詳細をビデオを交えて紹介する。また、低騒音性の秘密について紹介する。



大型低騒音風洞の基本性能


風洞技術センター 技師(係長) 井門 敦志

 風洞試験において、空力騒音、空気抵抗など空気力学的な現象を解明するためには、風洞の気流の質が重要であり、鉄道総研の大型低騒音風洞の気流の質は、基本性能試験の結果、当初の仕様を満足するものであった。ここでは、風洞の流れの基本性能、すなわち、密閉型および開放型の各測定部における最高風速、風速分布、乱れ強さ、静圧偏差、温度分布、境界層厚さ、暗騒音(開放型測定部のみ)について述べる。



車両から発生する空力音に関する風洞試験


環境防災技術開発推進部 空力・騒音 主任技師 善田 康雄

 高速の鉄道車両から発生する空力音と言えば、ひところまで集電装置を含めた車体上部が主な発生部位であった。しかし、それらへの対策が進むにつれ車両下部からの空力音も無視できない状況にある。現車走行時と同等な車両床下の空気流れを風洞試験において模擬できる模型設置方法を探りながら、車両下部空力音の性状を明らかにしつつある。また、平滑にすればする程良いという考えではなく、どこまで凹凸が許されるかという観点からも実験を進めている。



低空力音パンタグラフPEGASUSの開発


基礎研究部(集電力学) 研究員(係長) 池田 充

 大型低騒音風洞の「大きい」「速い」「静か」という特性を活用し、新幹線用の低空力音パンタグラフPEGASUSの開発を進めている。低騒音パンタグラフとは空力音の発生を抑制するために部材形状の平滑化を進めたものである。ただし空力音の低減と同時に空力的な安定性を確保することも要求される。本発表ではPEGASUSの概要と、その風洞実験結果について紹介する。



横風に対する車両の空力特性に関する風洞試験


環境防災技術開発推進部 気象防災 技師(係長) 種本 勝二

 強風時における鉄道の安全輸送と定時性向上のための方策について検討する際には、強風の特性とともに車両に働く空力特性を明らかにする必要がある。車両に働く空気力の大きさは、自然風の風速、車両形状及び線路構造物形状(橋梁・築堤等)に依存する。また、自然風の風向及び列車走行速度によっても変化し、条件によっては斜め方向から吹く風で最大になる場合があることが明らかになったので報告する。


第112回 鉄道総研月例発表会

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