第113回 鉄道総研月例発表会:構造物技術

鋼とコンクリートを組合わせた新しい複合構造物の設計


構造物技術開発事業部 主幹 村田 清満

 営業線に近接して鉄道土木構造物を建設する事例が増えており、狭隘な場所でも施工の安全性を確保し易く、工期の短縮が可能な構造が求められている。これらの様々な要求を満たす構造物として、鋼とコンクリートの合成部材からなる複合構造物が注目を集めている。しかし、構造特性を反映した設計法は充分に整備されているとはいえない。ここでは、複合構造に関する研究開発とその成果を基に完成された新しい設計法について概括する。



塑性地圧によるトンネル変状と対策工の効果


構造物技術開発事業部 (トンネル) 主任技師 小島 芳之

 トンネルにおける代表的な変状原因の一つである塑性地圧を取り上げ、事例分析、模型実験、数値解析を行った。本報告では、まず、事例分析により、変状現象と対策工(裏込注入工、ロックボルト補強工、内面補強工、インバートなど)の効果の実態について示す。次に、覆工の模型実験とひび割れ進展を考慮した骨組解析により、各対策工の効果を定量的に把握する。以上の結果から、塑性地圧による変状対策工の合理的な設計法を提案する。



大型基礎の新しい設計法


構造物技術開発事業部 (基礎) 技師(主席) 小林 雅彦

 兵庫県南部地震の経験から、今後の構造物の耐震設計法は大変位領域を考慮した動的解析法が中心となる。そのため、基礎〜地盤系の挙動(荷重〜変位曲線)を精度よく算定する必要がある。大型基礎のうち、鋼管矢板井筒基礎の設計は、矢板相互間のずれの影響を考慮するため曲げ剛性を低減していたが、この手法は大変位領域では使えない。そこで、矢板を群杭と継手管の組合せでモデル化した新しい構造解析法を開発した。これを紹介する。



フローティング型ラダー軌道の力学特性および車両走行性


構造物技術開発事業部 (構造システム) 主任技師 奥田 広之

 鉄道総研内のループ線(半径180mの急曲線)に敷設したフローティング型ラダー軌道(敷設延長24m)およびモルタル道床型ラダー軌道(敷設延長24m)に対して、3両編成の試験車を走行させ、フローティング型およびモルタル道床型ラダー軌道の力学特性および振動伝達特性について検討を行った。また、フローティング型ラダー軌道上の車両走行性の検討も行った。



切取補強土留壁の性能に関する研究


構造物技術開発事業部 (土構造) 技師 木村 英樹

 近年、良質な栗石の入手難や、熟練栗石工の減少により、切取土留壁の確実な施工および管理体制を維持するのが困難になりつつある現状から、切取土留壁の設計・施工に対する改善が求められていた。そこで、切取土留壁にロックボルトを組合せて補強した複合構造の新しい土留壁を提案した。この新土留壁の耐震性を確認するため、中型実験土槽内に自立性地山、非自立性地山の土留壁模型を作成して振動実験を行い、条件の相違による補強効果の確認を行った。



動的注入工法に関する実験的研究


構造物技術開発事業部 (土構造) 技師 駒延 勝広

 薬液注入工法の品質改善、施工能率の向上を目的として、従来の速度一定で行う注入工法に対して、注入速度を変化させながら注入を行う動的注入工法を提案し、その改良効果を室内試験および現場実験により検討してきた。その結果、動的注入工法は薬液の浸透範囲が広い、固結体の強度が大きい等、従来工法よりも高い注入効果が得られ、また、浸透注入が期待できない粘性土地盤においても良好な注入が行える可能性をヤード実験により確認することができた。



列車走行に伴う建物振動伝搬解析


構造物技術開発事業部 (建築) 技師 (係長) 武居 泰

 都市部軌道敷の有効活用のため、線路上空・近傍に多様な建築物を建設するニーズが高まっている。しかし、軌道近傍では列車走行に伴う振動や騒音が発生し、建築物の用途によっては支障をきたす場合が見られるため、設計段階での振動騒音予測が必要となる。ここでは、建物内部における振動伝搬性状を把握するための強制加振実験、間接法による列車加振力の算定及び骨組みモデルを用いた数値解析による振動予測について報告する。


第113回 鉄道総研月例発表会

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 1999 Railway Technical Research Institute