第115回 鉄道総研月例発表会:最近の軌道技術

軌道技術の研究開発の現状と今後の課題


軌道技術開発推進部 部長 内田 雅夫

 JR移行後10余年間の世の中の変化は極めて激しく、老齢化・少子化等による社会構造の変化、経済環境の激変、地球環境問題の深刻化、知識・情報産業の発展等は、鉄道経営にも無縁のものではない。このような状況の中で、軌道技術の研究開発に望まれるものは何か。新しい省力化軌道構造の開発、既存設備の長寿命化、効率的な保守計画策定法、安全・快適・環境に配慮した線路づくり、車両/軌道の相互作用と軌道の動的応答特性の解明等、軌道技術の研究開発の現状と今後の課題について概観する。



軌道検測装置の現状


軌道技術開発推進部(軌道管理) 主任技師 竹下 邦夫

 従来、軌道狂い検測は在来線ではマヤ34型軌道検測車(通称マヤ車)、新幹線では921型軌道検測車(通称ドクターイエロー)により行われていた。近年高性能な検測に対するニーズ等から新しい検測車が製作されている。これらの新しい検測車では光式や電磁式の非接触レール変位検出器が用いられ、また従来のような3台車を必要としない2台車の検測車も製作されている。このような最新の軌道検測装置の現状について述べる。



短波長軌道狂い管理の現状


軌道技術開発推進部(軌道管理) 主任技師 須永 陽一

 新幹線の高速化に伴い、レール頭頂面凹凸や浮きまくらぎ等の短い波長領域の軌道狂いに起因した輪重変動や転動音が増大する傾向にある。また、在来線における転動音低減の要求も高まりつつある。この発表は、これら輪重変動や転動音を効率的に適正に維持するために、軸箱加速度や床下騒音を活用した短波長軌道狂いの波長別の発生原因を特定し、効率的に管理する手法を紹介する。



レール波状摩耗の原因と対策


基礎研究部(軌道力学) 室長 石田 誠

 国鉄時代には大きな問題とならなかった波状摩耗が、民営分割後、特に在来線において大きな問題となっている。報告されている波状摩耗は、直線、曲線外軌および曲線内軌に発生する3種類に分けられる。ここでは、それら3種類の波状摩耗の発生の特徴を紹介し、特に、最も多くその発生が報告されている急曲線内軌の波状摩耗について、ここ数年取組んできた研究成果として、想定される発生原因とその対策について紹介する。



レール溶接部疲労寿命予測


軌道技術開発推進部(軌道構造) 主任技師 阿部 則次

 レール関係のメンテナンスコストの低減を目的として、動的軌道応答モデルを利用したレール曲げ応力、現地測定に基づくレール溶接部凹凸進み、ロングレールの軸力および破壊確率等を考慮し、各種軌道構造および各種車両形式に対応できる溶接部曲げ疲労寿命推定法を確立した。ここでは、新幹線および在来線におけるレール溶接部の寿命推定例および定期的なレール凹凸削正による溶接部曲げ疲労寿命の延伸効果について発表する。



エンクローズアーク溶接部の評価基準


軌道技術開発推進部(レール溶接) 主任技師 深田 康人

 エンクローズアーク溶接部頭部の超音波探傷方法及び判定基準の提案を行うために、損傷事例の分析及び撤去溶接部に対する探傷結果と各種強度試験の対応を検討した。その結果、頭頂面下15〜40mmの欠陥検出及び評価・判定には、頭側面からの二探触子法が有効であること、また、二探触子法による欠陥等級3〜4級の溶接部を不良判定すべきことを明らかにした。



ガス圧接法の改良に関する検討


軌道技術開発推進部(レール溶接) 主幹技師 上山 且芳

 レールガス圧接作業における端面研削の簡素化、加熱バーナ及び加圧方式の改良に関する検討を行った。その結果、新しい圧接施工法では、突合せ部に隙間(1〜2mm)がある場合でも、接合界面の酸化介在物に起因するフラット破面及び押抜き割れを防止できることが判明した。この理由として、新圧接施工法は、従来施行法に比し、高い圧接温度が得られること、またガス炎によるシールド効果が増加したと考えられることがあげられる。



新設線用土路盤上省力化軌道構造の開発


軌道技術開発推進部(軌道構造) 主任技師 安藤 勝敏

 軌道保守の軽減を目的として、1965年以降スラブ軌道が開発されたが、その適用範囲は事実上トンネルや高架橋に限定されてきた。そこで、土路盤上にも敷設可能な新たな構造を提案した。1992年日本鉄道建設公団において、現地試験盛土の構築を含めて本構造の試験が行われ、最終的に北陸新幹線(高崎〜長野)において本格採用されるに至った。ここでは、欧州における省力化軌道の現状を含め、開発経緯と試験結果について報告する。



分岐器の研究開発の現状


軌道技術開発推進部(軌道構造)主幹技師 鬼 憲治

 在来線における速度向上に伴い、分岐器については片開き分岐器直線側の速度向上に関する研究が従来からなされてきたが、近年、単線区間に多く使用される両開き分岐器など分岐線側(曲線側)の速度向上が必要とされ、この研究も進められている。また、新在直通運転のために必要とされた三線式分岐器および伸縮継目についての研究もなされている。今回、このような分岐器に関する研究開発の現状を述べる。


第115回 鉄道総研月例発表会

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 1999 Railway Technical Research Institute