第116回 鉄道総研月例発表会:信号通信関係技術

鉄道沿線における電波伝搬特性推定法の検討


輸送システム開発推進部 通信システム担当 桐山 栄治

 鉄道沿線で任意に移動する作業従事者への連絡手段として、移動体無線によるシステムの構築が求められている。無線によるシステムの構築では、効率的な基地局設置の設計が重要であり、事前に電の届く範囲を把握する必要がある。そこで、鉄道沿線での電波伝搬特性を、実測することなく推定できるモデルの作成を検討した。本発表では、検討した推定モデルと、実測値との比較による推定モデルの妥当性を検証した結果とを紹介する。



電気鉄道における電波雑音と国際規格の動向


輸送システム開発推進部(通信システム) 技師(係長) 川崎 邦弘

 電気電子機器が稼動することによって不要な電波(電波雑音)が発生し、他の機器の動作に障害を及ぼす場合がある。電気鉄道も電気を使用しており、又駆動方式の発展もあって電波雑音を発する場合があり、電波環境への配慮(EMC)が従来以上に重要となっている。本発表では、CISPR(国際無線障害特別委員会)やCENELEC(欧州電気標準化委員会)が整備しつつある鉄道のEMC規格の概要と、鉄道総研の取組みについて紹介する。



無線による列車制御システムCARATの事前安全性解析


輸送システム開発推進部(列車制御) 技師 岩田 浩司

 無線による列車制御システムCARATの基本機能を対象に、事前安全性解析を行った。列車保安制御システムの安全性技術指針の事前安全性解析を適用し、軌道回路による列車制御システムとも対応づけた事前ハザード解析、FT解析、およびハザードの起因事象に対する安全性対策を中心に解析を行い、CARAT基本機能について考慮すべき事故形態とその安全性対策を特定した。これらの解析から、新たな安全性解析によってもCARAT基本機能の安全性を確認できた。



信号システムへの高安全性ソフトウェア開発手法の適用


基礎研究部 信頼性工学 研究員 松本 真吾

 昨今欧米で、高安全性が要求される軍事、原子力、航空関係のソフトウェアの開発手法として注目されている、VDM, Z, B等の形式的技法(フォーマルメソッド)の紹介。さらに、形式的技法の鉄道信号システムへの具体的適用について、連動装置、ディジタルATCを例に解説する。



分岐器の接着状態照査装置の開発


輸送システム開発推進部(信号) 主任技師 櫻井 育雄

 分岐器のトングレールと基本レール間に砕石、雪等が介在すると軌間縮小による脱線の恐れが生じる。高速通過する新幹線分岐器にはこれを検知するための設備があるが、機械式リレーなので、定期的に行う動作点の調整に多大な労力を要している。そこで、トングレールの接着位置を計測して判定する装置を開発した。判定値の設定は判定用鉄片を介在させて押しボタンを押すだけなのでだれでも迅速に行える。



ヨーロッパの連動機能仕様共通化の検討(ERRI A201委員会)


輸送システム開発推進部(列車制御) 主幹技師 平尾 裕司

 1993年から1997年までERRI(European Rail Research Institute)に連動装置の機能仕様の共通化 をめざした委員会である「ERRI A201プロジェクト」が設置された。このプロジェクトには、ヨーロッパの主な 鉄道組織と日本から鉄道総研が参加し、今後の共通化検討のベースとなる連動機能の一般要求事項と共通コアについてまとめた。本論文では、このようなERRI A201プロジェクトの検討成果について述べる。



中国高速鉄道用ディジタルATC


輸送システム開発推進部(信号) 主幹技師 高重 哲夫

 鉄道総研、信号メーカ、中国鉄道部科学研究院の3者で日中共同研究として中国高速鉄道用ディジタルATCを開発している。基本的には日本ですでに発表しているディジタルATCと同じであるが、軌道回路長が最大2kmの無絶縁構成であること、最大漏れコンダクタンス0.5S/kmまで安定に動作することなどが異なっている。昨年から科学研究院の9kmのループ試験線に装置を仮設し、試験を行い、良好な結果が得られた。日本のシステムとの違いを中心としたシステムの概要や試験結果について紹介する。


第116回 鉄道総研月例発表会

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 1999 Railway Technical Research Institute