第126回 鉄道総研月例発表会:山梨実験線の試験状況

山梨実験線の試験経緯


浮上式鉄道開発本部(技術部) 主幹 高橋 潔

 山梨実験線で走行試験が開始されてから約3年が経過し、超電導磁気浮上式鉄道の実質的な実用化のめど立てを目標として位置づけられた節目の年を迎えている。
 走行試験は順調に推移し、予定していた試験項目も殆ど実施することができている。運輸省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会にても、開発目標の達成が順調に進んでいるとの評価を頂いている。本報告では、3年間の主要な走行試験とその結果について紹介する。



山梨実験線車両の車両運動特性


浮上式鉄道開発本部(吉岡研究室) 研究員(係長) 渡邉 健

 山梨実験線では、99年4月には5両編成車両により最高速度 552km/h を記録した。また、98年夏から2編成車両を用いた高速すれ違い試験を実施し、99年11月には相対速度 1003km/h を記録した。これらの結果から、基本的な車両運動特性に問題はないことを確認した。さらに、将来に向けた乗り心地のより一層の改善のため、各種方策の特性確認を進めている。本発表では、これら車両運動関連の走行試験結果を紹介する。



山梨実験線車両用超電導磁石の運転特性


浮上式鉄道開発本部(山梨実験センター) 技師(係長) 岡井 忠生

 山梨実験線車両用超電導磁石の運用における信頼性安定性の確保は、超電導磁気浮上式鉄道にとって全体システムを左右する重要課題である。平成9年12月に車両は目標速度である 550km/h を達成したことにより、当初重要課題の1つであった耐クエンチ性への信頼性が実証できた。本発表では、その後の第二編成車両を加えたより営業線レベルの走行試験も含み、超電導磁石に関するこれまでの各種試験に対する結果並びに運用について概要を述べる。



山梨実験線インバータにおける中性点バイアス制御


浮上式鉄道開発本部(電気部) 主任技師 川口 育夫

 地上一次式のリニアシンクロナスモータ方式に於いては、列車の速度に応じた周波数と推力に応じた大きさの電流を供給する必要があり、山梨実験線ではPWMインバータを採用している。このインバータは長大列車を高速で走行させるために大容量の電力変換器となっており、経済性、実用性を考慮した容量の低減が課題となっている。そこで、電力変換器の設備要領を低減する一方法である中性点バイアス制御をインバータに適用し、走行試験で確認した特性について報告する。



ガイドウェイ狂い管理


浮上式鉄道開発本部(土木部) 主任技師 上野 眞

 浮上式鉄道では車両の推力、支持および案内を地上のコイルで行っている。山梨実験線の高速走行区間のガイドウェイは、この地上コイルとコンクリート構造物を一体化した1ユニット長 12.6m のモジュール構造となっている。地上コイル狂いの管理が車両の乗り心地管理に重要となるが、この地上コイル狂いを検知する検測車のデータを用いたユニットごとの管理の具体例を紹介するとともに、走行安全性を監視する計測システムによるガイドウェイの変位監視結果についても紹介する。



地上コイルの電磁力特性


浮上式鉄道開発本部(藤本健研究室) 研究員(係長) 饗庭 雅之

 山梨実験線には、地上コイルとして、推進コイルと浮上案内コイルの2種類のコイルが敷設されている。地上コイルと車両に搭載されている超電導磁石との間には、電磁力が発生する。地上コイルの電磁力特性(推力、浮上力、案内力、磁気抗力、電流)等を確認するために、既設の地上コイルを取り外して計測用コイルを仮設し、コイルに作用する電磁力、電流を直接測定した。ここでは、その結果について紹介する。


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