第128回 鉄道総研月例発表会:自然災害防止と地盤環境

鉄道総研における自然災害防止に関する技術開発の現状


環境防災技術開発推進部 部長 野口 達雄

 日本は世界有数の地盤変動帯に位置し、地形、地質が複雑でもろく、かつ雨や雪も多いという過酷な自然条件にさらされている。このため、毎年各地で様々な自然災害にみわれており、国土全域に敷設された鉄道の安全・安定輸送を確保するためには自然災害を防止することが重要な課題である。ここでは、鉄道に係わる自然災害を防止するために鉄道総合技術研究所が実施している技術開発の現状と成果について概説する。


小水量散水消雪工法の開発


環境防災技術開発推進部 主任技師 河島 克久

 多雪地域の高架橋区間ではスプリンクラーによる散水消雪が主に行われている。今後建設予定の線区では、水の確保と運転経費の節減が課題となっている。この解決のため、軌道スラブ構造で計画されている区間を対象に、新しい消雪方式として小水量散水消雪方式を開発した。この方式は、軌道スラブへ散水ノズルを設置し、車両の走行部分への少量の水を散布して消雪するものである。実物の軌道スラブを用いた消雪試験の結果から、この消雪方式は軌道回路に悪影響を及ぼさないこと、及びこの消雪方式を貯雪式高架橋と併用すれば、スプリンクラーによる散水消雪に比べて散水量を大幅に低減できることが分かった。



風向・風速要素を取り入れた強風時の運転規制方法


環境防災技術開発推進部 技師 島村 泰介

 車両の転覆限界風速(横風を受けた車両の風上側の輪重が0となる自然風の風速)は、車両形状と線路構造物形状、列車の走行速度のほか、自然風の風向によっても値が異なる。一般に強風時の運転規制は風速要素のみで行われているが、これに風向要素を加えることによって、より合理的な規制を行うことができる。本発表では、風向要素を取り入れた運転規制方法の基本的な考え方とその実施例について述べる。



地形解析手法を用いた危険斜面の抽出方法の開発


環境防災技術開発推進部 技師 日向 哲

 地形図や空中写真から災害地形を読みとる作業には、技術・経験を要する、結果が定量化できない、などの問題がある。本報告では、これらの問題を解決することを目的として開発中の災害地形抽出手法などについて概説する。この手法は、標高データを定量的に分析することにより災害地形の有無・程度を判断するものである。ここでは例として地すべり地形の抽出方法などについて述べる。



落石防護柵に使用されるネットの耐荷力評価と新型ネットの開発


環境防災技術開発推進部 技師(係長) 佐溝 昌彦

 鉄道沿線で発生する落石災害は比較的小規模なものが多い。その対策として落石防護柵が多く用いられている。しかし、落石防護柵に利用されている金網(ネット)耐荷力を定量的に評価した例は少ない。ここでは、従来の防護ネットと新たに開発した変形性能が良く、エネルギー吸収効率の高い新型ネットの両者について、それらの変形挙動やエネルギー吸収性能を評価するために実施した各種載荷試験の結果について紹介する。



都市における地盤および地下水に関する調査・評価法


環境防災技術開発推進部 主任技師 榎本 秀明

 従来施工計画に重点をおいて実施されてきた都市における地盤・地下水調査の実態を、一般的な都市での地盤条件、立地条件の観点から見直し、周辺環境への影響評価といった面まで考慮した調査・評価の考え方を整理、提案する。また、今後影響評価への利用が期待される三次元シミュレーション解析法(浸透流解析、流体流動−力学連成解析)を用い、都市の地盤構造の特徴をモデル化したパラメータ解析の概要を報告する。



列車振動を用いた地盤構造の調査法


環境防災技術開発推進部 主任技師 芦谷 公稔

 地盤や構造物の動的応答解析を行う場合、地盤構造は不可欠な情報であるが、これらの情報は、従来、地質ボーリングやPS検層の結果から推定してきた。しかし、地質ボーリング等は、予算や調査箇所の立地条件等の制約を受け、実施個所が限定される場合が多い。そこで、今回、地盤を伝播する表面波を用いて地盤構造を推定する簡易な調査法を考慮し、列車振動に適用してその妥当性を検証したので報告する。


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