第129回 鉄道総研月例発表会:最近の材料関係技術

材料技術開発推進部の研究開発について


材料技術開発推進部 部長 上山 且芳

 従来から主にメンテナンスの改善を目的とする鉄道用材料の耐久性向上と評価・診断法の深度化、また、高機能材料の開発等を行ってきた。最近では地球環境問題に対する負荷を評価するライフサイクルアセスメントによる車両、トロリ線等の概略評価や環境に調和する成分への変更を試みたグリース、パンタグラフすり板等の開発にも取り組んでいる。ここでは、鉄道総研が実施している材料関連の技術開発の現状と成果について概説する。


材料のリサイクルとエコマテリアルについて


材料技術開発推進部(金属材料) 主幹技師 辻村 太郎

 地球環境問題の深刻化に伴い、材料の選択、使用に関しても環境への配慮が求められるようになりつつある。環境配慮材料=エコマテリアルという概念が提唱され、定着してきているが、ここでは具体例の紹介を交え鉄道材料のエコマテリアル化について述べる。特に、近年注目されているリサイクルに関しては、実施に当たっての留意点、総合的なメリットの評価について言及する。



鉄道車両用長寿命空気ホースの開発


材料技術開発推進部(有機材料) 主任技師 半坂 政則

 現行ホースの2倍の使用期間を目標として、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れたエチレンプロピレンゴムあるいはクロロプレンゴムを用いた2種類の一般車両用長寿命ホースの開発を行った。両ホースとも補強布には強度・耐衝撃性に優れた合成繊維を用い補強布の耐久性向上も図っている。現車試験および促進劣化試験の結果、両長寿命ホースは 13.5年間以上の使用に対する耐久性を有することが推定された。



油中摩耗粉分析による電車用歯車装置の状態診断法


材料技術開発推進部(有機材料) 技師(主席) 中村 和夫

 油中摩耗粉分析による電車用歯車装置の状態診断を試みるため、歯車試験機や歯車装置を用いて、現車で発生する可能性のある故障(歯車の焼付きや異常摩耗等)を人為的に発生促進させる試験を実施し、その時に発生する摩耗粒子や摩耗量の特徴の把握および摩耗量の推定について検討した。その結果、潤滑油中の摩耗粉を分析することにより、歯車装置の状態診断がかなりの程度まで可能になることが明らかになった。



鋳鉄複合化制輪子の開発


材料技術開発推進部(金属材料) 技師 宮内 瞳畄

 在来線には、停止ブレーキ距離が 600m以内という制限があり、高速化のためには、高速域のブレーキ力の向上は不可欠である。在来線の最高速度 130km/h から、さらなる高速化に対応するため、合金鋳鉄制輪子と車輪の摩擦界面にセラミックス粒子を分散させる方法を考案し、ブレーキ初速度 140km/h〜150km/h においても対応しうる合金鋳鉄制輪子を開発した。その開発過程を紹介し、今後の課題について述べる。



腐食環境におけるPHCちょう架線の耐食性評価


材料技術開発推進部(摩擦材料) 技師(主席) 片山 信一

 電気鉄道に用いられるちょう架線は、トロリ線以上に長期間架設されている。各地域の環境特性と春夏秋冬の季節特性により、さまざまな影響を受けている。腐食による断線事故を防止し、設備の保守コスト低減を図るため、ちょう架線の信頼性の向上と長寿命化が必要である。新しく試作した Cr-Zr 系銅合金より線を用いたPHCちょう架線の耐食性評価について述べる。



車輪板部形状の最適化解析


材料技術開発推進部(金属材料) 主任技師 赤間 誠

 有限要素法によって、現在投入されつつある新A形波打車輪及び耐ブレーキ熱(H T)車輪の抑速ブレーキ時及び輪重・横圧負荷時の板部に発生する応力を求めて比較したところ、H T車輪の方がかなり安全率が高いことがわかった。そこでH T車輪の形状をもとにして、板部の最適化解析を行った。その結果、重量及び剛性は新A形波打車輪と同等で、板部の最低の安全率が新A形波打車輪よりも 60%、H T車輪よりも 25% 向上する軽量化した板部形状が得られた。この他、新A形波打車輪の問題点も明らかにした。


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