第130回 鉄道総研月例発表会:軌道技術の最近の成果

鉄道総研における軌道技術の最近の研究開発成果


軌道技術開発推進部 部長 内田 雅夫

 鉄道総研における軌道技術分野では、コスト低減(構造・材料の強化・長寿命化、軌道保守管理の効率化)、高速化の実現(高品質化・高規格化、沿線環境対策)、安全性・快適性の確保という3つの目標を柱として、保線実務に密着したニーズの的確な把握と新技術の導入やシミュレーション技法の活用によるシーズ探索を組み合わせながら、研究開発を推進している。ここでは、ハード・ソフトの両面からみた最近の研究開発成果の概要を紹介する。


レール継目部に発生するレール応力の確認試験と解析


軌道技術開発推進部(軌道構造) 技師(係長) 片岡 宏夫

 定尺レールの疲労寿命を評価するためにはレール腹部に発生する応力を明らかにする必要がある。本研究では、レール継目部の室内静的載荷試験、現地測定、および FEM を用いた静的解析を行い、ボルト穴周辺に発生する応力の傾向を把握した。その結果、ボルト緊締時には水平方向の応力が大きく、載荷時には 45°方向の応力変動が大きいことがわかった。また、それらの解析結果から、ボルト穴内側の発生応力の推定が可能となった。



エンクローズアーク溶接部の健全性評価方法


軌道技術開発推進部(レール溶接) 技師(主席) 山本 隆一

 エンクローズアーク溶接法は、新幹線軌道における三次溶接法等として不可欠の接合手段である。しかし、本法は溶融溶接法であり、テルミット溶接法と同様に内部欠陥発生の可能性があるため、従来から、仕上がり検査として超音波探傷検査が適用されている。今回は、エンクローズアーク溶接部の健全性評価方法を確立することを目的に、溶接欠陥の許容範囲基準を継手性能試験等に基づいて提案した。



ゲージコーナー/フランジ接触と側摩耗に関する解析と実験結果


基礎研究部(軌道力学) 研究員(係長) 金 鷹

 本報告では、ゲージコーナーの摩耗(側摩耗)に関して、実際の場合と実験条件のレールと車輪の接触応力を3次元弾性接触有限要素モデルを用いて解析し、実験条件における輪重および横圧を決定するとともに、アタック角がある場合とない場合の室内実験を行い、側摩耗の進行により変化する形状を定量的に把握した。また、残留応力の分布、表面塑性流動の様子および摩耗粒子の形態などを調べ、レール・車輪の接触に起因した側摩耗の実態を明らかにした。



車両走行特性を考慮した曲線線形諸元の検討


軌道技術開発推進部(軌道管理) 技師(係長) 古川 敦

 曲線区間においては超過遠心力、カント逓減に伴う輪重変動、曲線終始点付近での過渡対応など、直線区間とは異なる様々な車両応答が発生する。曲線諸元を決定する際には、これら車両応答を考慮し、走行安全上問題が無いことを確認する必要がある。本研究では、これまでの走行試験の統計解析、および車両走行シミュレーション結果から、車両走行特性を考慮した各種曲線諸元の検討を行う。



慣性正矢法による軌道検測装置の開発


軌道技術開発推進部(軌道管理) 技師(主席) 矢澤 英治

 軌道狂いの検測手法として、加速度の2回積分から変位を求める慣性測定法を用いれば、低コストで小形の検測装置が製作できる。しかし、既往の慣性測定法には波形処理の途中で軌道狂い波形にひずみを生じる欠点がある。そこで、慣性測定法と、3台車式軌道検測車で用いる正矢法の特性を組み合わせ、ひずみのない正矢狂いを得る「慣性正矢法」を考案した。今回はこの手法の検証試験の結果と、試作した検測装置の概要を報告する。



既設線省力化軌道を敷設するための路盤条件の検討


軌道技術開発推進部(軌道・路盤) 技師 村本 勝己

 新設線に省力化軌道を敷設するための条件については、「省力化軌道用構造物設計標準」の完成によって一応の決着をみた。しかし、既設線に省力化軌道を敷設する場合の路盤条件については多くの要因が絡むため、画一的に規定するのは難しい。既設線用の省力化軌道を不適切な条件で敷設するとどのような問題が生じるか、あるいは、その適用において留意すべき点について、これまでの現場での事例や実験結果を踏まえて検討する。



新たな弾性まくらぎ直結軌道(D型弾直軌道)の開発


軌道技術開発推進部(軌道・路盤) 技師(係長) 堀池 高広

 近年の新設建設には、建設費、保守費、環境保全および施工性に優れた軌道が求められている。これまで、高架橋上にはスラブ軌道あるいはB型弾性まくらぎ直結軌道が採用されてきたが、前者は騒音が高いこと、後者は建設費が高いことおよび弾性材の交換が困難なこと等の解決すべき課題があった。そこで、上記を改良することを目的として「D型弾直軌道」の開発を行った。

              
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