第140回 鉄道総研月例発表会:環境技術と環境マネジメントシステム

鉄道総研における環境問題への取り組み


環境工学研究部 部長 前田 達夫

 鉄道が環境に及ぼす負荷には、騒音・振動、CO2、大気・水・土汚染物質、廃棄物などの問題があり、これらの環境負荷を低減し、今後も更に環境に優しい鉄道を構築していくことが社会から求められている。今回の発表では、鉄道総研における環境工学研究部の紹介と環境工学研究部で現在取り組んでいる研究の進捗状況と今度の展望について報告する。


汚染防止のための廃棄物の適正処理


環境工学研究部(生物工学) 研究室長 金原 和秀

 環境負荷の低減した社会を築くことが21世紀の社会に求められています。鉄道は環境にやさしい交通手段ですが、今後更に環境負荷の低減を進めるため、環境との調和を目指したシステムを指向することが重要と思われます。そこで、ここでは鉄道事業で排出される化学物質ならびに汚染物に焦点を絞り、環境汚染を引き起こす可能性のある物質の適正な管理と処理をどのように行えば良いのか現状を述べ、今後の展望を行いたいと思います。



自然浄化法によるPCB処理の実用化


環境工学研究部(生物工学) 主任研究員 早川 敏雄

 鉄道総研が独自に開発した『自然浄化法』は、太陽光成分の一部である紫外線と、自然界から選抜した優秀なPCB分解細菌を利用するユニークなPCB無害化処理技術である。昨秋、旧厚生省による廃掃法施行規則の一部改正に伴い、本法はPCB処理法として追加記載された。現在、さらなる効率向上を目指し、装置の改良および実証試験を行っている。本報告では、本法の特徴と実用化に向けた取組について述べる。



植物を用いた環境のモニタリングと汚染物の除去


環境工学研究部(生物工学) 副主任研究員 志村 稔

 鉄道から発生する可能性のある環境汚染に関して、モニタリング技術と汚染除去法の開発を目的として研究を行った。化学分析による環境調査では未知汚染物質や汚染物質の生物影響を評価することはできないため、微生物・植物を用いた環境モニタリング法の開発を試みた。植物は土壌中に根を張って栄養分を吸収するが、その際に汚染物質を一緒に吸収・蓄積することが知られており、土壌からの汚染物質除去への応用を検討した。



鉄道の磁場環境とその安全性


環境工学研究部 主任研究員 小穴 孝夫

 我々の身の周りには、送電線や家電製品、事務機器やエレベータなど、静磁場および極低周波変動磁場を発生するものが数多く存在する。同様の磁場は電化鉄道の床下機器や架線からも発生し、客室や沿線に漏洩している。その強度は弱いとはいえ、一部の疫学調査の結果から小児白血病を誘発するとされる強度を上回る場合も少なくない。我々は生物実験により、静磁場および極低周波変動波磁場の発癌性について定量的に評価し、またその機構についても考察したので話題として提供したい。



鉄道における環境マネジメントシステム(ISO14001)の取り組み動向


ISO14001審査登録センター 課長 御船 直人

 国際規格である環境マネジメントシステム(ISO14001/JIS Q 14001)の取得が鉄道事業者にも急速に広がっている。その背景には、「企業としての社会的責任の達成」「社会貢献」「環境施策に充実」「環境イメージアップ」「経費節減」などの要因があると想像される。本発表では、鉄道事業者における取得状況や他業種との比較などを総括的に概観し、取得の傾向や今後の動向を予測する。



鉄道における ISO14001 環境影響評価方法の分析


ISO14001審査登録センター 副主査 野澤 浩之

 環境マネジメントシステムを構築する上で最も重要な要因のひとつとして、組織の活動の中から環境に著しい影響を与える面を特定するための手順、すなわち環境影響評価法の確立を挙げることが出来る。本発表では、鉄道における環境影響評価法を調査し、鉄道の環境影響評価法の特徴を分析するとともに、鉄道全体に拡張可能な環境影響評価法の確立の可能性を探る。



鉄道における環境マネジメントシステムの構成要素分析


ISO14001審査登録センター 副主査 遠藤 三郎

 日本国内の鉄道事業者のJIS Q 14001/ISO14001(環境マネジメントシステム)取得数は18件(2001年3月末)となり徐々に増加している。取得には、規格が求める"継続的な改善"に配慮し、環境マネジメントシステムを構築しなければならない。"継続的な改善"の達成には、マネジメントシステムの構成要素が大きな影響を及ぼすことになる。本発表では、鉄道事業者が構築したシステムの構成要素の"継続的な改善"への寄与について分析し、その結果を報告する。

              
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