第141回 鉄道総研月例発表会:軌道技術の研究開発の現状と今後の方向

軌道技術の研究開発の現状と今後の方向


軌道技術研究部 部長 内田 雅夫

 列車の繰返走行による軌道材料劣化や軌道狂い進みが避けられない軌道では、できるだけ少ない交換・補修作業コストで必要な軌道品質を実現するための技術の確立が最大の使命である。このようなメンテナンスの立場から、「車輪/レールの接触問題とレールのメンテナンス」、「有道床軌道の沈下抑制策と直結系省力化軌道構造」、「軌道狂い管理の効率化と高品質化」という3つの主題を選定し、軌道技術の現状と今後の課題について概説する。


輪重・横圧推定式による推定脱線係数比の算出とその評価


軌道技術研究部(軌道管理) 副主任研究員 村松 浩成

 乗り上がり脱線に対する安全性の評価方法としては、脱線係数がナダルの式による限度値より小さい場合は車輪の乗り上がりは生じないと判断する方法がある。鉄道総研では、簡易に脱線係数を推定するため、理論的検討や実測データの解析結果をもとに構成した輪重・横圧推定式を提案した。本発表では、輪重・横圧推定式の構成を示すとともに、推定脱線係数比(=限界脱線係数/推定脱線係数)の算出例とその評価について紹介する。



復元波形を用いた長波長軌道狂い整備


軌道技術研究部(軌道管理) 主任研究員 古川 敦

 列車の高速化に伴い、長波長軌道狂いの効率的な整備手法の必要性が高まっている。これに対し鉄道総研では、軌道検測車によって定期的に得られる検測データから算出される復元波形(軌道狂い波形の近似形状)を用いた、軌道整備手法を実用化した。本報告では軌道検測から、移動量制限を満たす移動量の計算、マルタイ制御データ作成(有道床軌道のとき)、施工に至るまでの一連の手順・施工上の注意点および施工例を紹介する。



動的荷重を考慮した軌道の座屈解析


軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員 柳川 秀明

 軌道の座屈安定性の評価においては、走行中の列車荷重が座屈安定性に影響することが指摘されており、その主な要因としては、列車荷重による軌道のアップリフト、振動、横圧が挙げられる。本発表では、軌道の浮き上がり時および載荷時の道床横抵抗力測定試験を行い、その特性を考慮した座屈解析を行うことにより、軌道のアップリフトが座屈荷重に与える影響を調べた結果について紹介する。



軌道動的応答モデルを用いた軌道狂い進みシミュレーション


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 小野 重亮

 有道床軌道における軌道狂い進みの定式化は、軌道構造の決定、保守方法と時期の適切な選択にとって重要な課題である。レール凹凸や軌道狂いが存在することによって輪重変動が発生し、道床に加わる力が一様とならないため、道床が不等沈下を起こし軌道狂いが進行する作用を、軌道動的応答モデルを用いて解析した。走行速度・レール種別・軌道の支持剛性(弾性まくらぎ、路盤の剛性)が軌道狂いに及ぼす影響について考察した。



荷重振幅、振動数に着目した有道床軌道の繰返し載荷試験


鉄道力学研究部(軌道力学)主任研究員 名村 明

 有道床軌道は、敷設費が安く、補修が容易である長所を有するが、列車の通過に伴い道床バラストが緩み、これによって生ずる軌道狂いの修復に定期的な保守が必要である。軌道狂い進みの解明のためには、繰返し荷重下における道床部変形特性を把握することが重要となる。ここでは、高架橋上を想定した実物大有道床軌道に対して、荷重振幅、振動数に着目した上下方向の繰返し載荷試験を行った結果について紹介する。



路盤の剛性と路盤圧力分布に関する検討


軌道技術研究部(軌道・路盤) 研究員 大塚 勝

 道床バラストの繰返し荷重による沈下と路盤剛性との関係を把握するために、路盤の剛性を変化させ、模型による繰返し載荷試験を行ってきた。今回は、その模型試験に関してのシミュレーション解析を行い、道床バラスト層内及び路盤表面に作用する応力分布についての検討を行った。その結果、従来の設計用鉛直応力分布モデルと比較して、路盤部分の剛性により、応力分布形状、値が大きく変わることが確認できた。



レール溶融溶接法の最近の技術動向


軌道技術研究部(レール溶接) 研究室長 深田 康人

 ロングレール化のための溶接には、圧接法に分類されるフラッシュ溶接及びガス圧接と溶融溶接法のエンクローズアーク溶接及びテルミット溶接の4種類の方法が採用されている。JRグループにおける圧接法と溶融溶接法の適用比率はほぼ同一である。溶融溶接法は既敷設定尺レールの溶接並びに三次溶接として欠くことのできない溶接法であり、本報告では溶融溶接法に関し、施工法及び仕上り検査法の最近の技術動向について概説する。

              
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