第153回 鉄道総研月例発表会:構造物技術の研究開発

鉄道総研における最近の構造物技術の研究開発


構造物技術研究部 部長 村田 修

 構造物技術研究部では、1)技術基準整備、2)構造物の維持管理に関する研究開発、3)建設費節減に関する研究開発、4)快適な駅空間の創造に関する研究開発を柱として活動をおこない、鉄道事業者に役立つ成果を多くあげてきたと考えている。今回の発表では、それぞれについて最近行っている主な研究開発の成果や開発状況について紹介する。


線路上空建築物構造設計法の改定


構造物技術研究部(建築) 主任研究員 武居 泰

 橋上駅に代表される地中梁が無い低層の線路上空建築物に対して、性能規定化を踏まえた要求性能とその評価手法を検討し、新しい構造設計法を提案し、「線路上空建築物(低層)構造設計標準」を全面改定した。従来の設計法では、地中梁を線路直角方向の一方向のみ省略していたが、ホーム下部等に設置されていた線路方向の地中梁も省略すると共に、建築物の性能を明確にして設計の自由度を拡大し、杭や柱脚工法の多様化にも対応した。



高性能材料のコンクリート鉄道橋梁への適用


構造物技術研究部(コンクリート構造) 研究員 黒岩 俊之

 RC構造物における過密配筋対策や更なる高耐久化等の要求に対応する技術の一つとして、高性能材料の適用が考えられる。そこで、高性能材料として高強度コンクリート、高流動コンクリートおよび高強度鉄筋を対象に、これらの材料を適用した鉄道RC構造物の設計方法を提案することを目的として、高性能材料を用いたRC部材の曲げ・せん断耐力の算定式、変形性能算定式および復元力モデル、ひび割れ幅算定式について検討を行った。



鋼管杭とフーチング接合部の耐荷力の評価


構造物技術研究部(鋼・複合構造) 副主任研究員 吉村 剛

 鋼管杭とフ−チング接合部の耐荷力は、鋼管杭と同径の仮想RC断面の耐荷力と同等としている。兵庫県南部地震以降、耐震設計法では部材の損傷を許容した設計法に移行したが、接合部の損傷は許容していない。しかしL2地震動のような大規模地震を想定した場合、従来に比べて応答値が大きくなったため、結果、接合部の過密配筋による施工上の問題が大きくなっている。そこで接合部の交番載荷試験を行い、耐荷性能の再評価を行った。



繊維シート接着によるトンネル補修工設計法


構造物技術研究部(トンネル) 副主任研究員 吉川 和行

 最近、トンネル覆工の剥落対策として、炭素、アラミド等の繊維材料をエポキシ樹脂等で覆工内面に接着する工法が普及してきている。今回、新たに押抜き実験や同シミュレーション解析を行い、これら剥落対策工の設計法を提案した。本設計法では、剥落規模に応じた繊維シートの適用範囲を示し、設計に際しては簡易化を図るため繊維シートの単位剥離強さやトンネル覆工の曲率の大きさによる低減率等についてノモグラム化を行った。



断層と構造物の交差角度に着目した構造物の挙動予測


構造物技術研究部(基礎・土構造) 副主任研究員 室野 剛隆

 本研究は、断層を跨ぐ構造物が地表断層変位により橋梁がどのような挙動を示すかを実験的に検討したものである。その結果、90度以下の交差角度では、断層を跨ぐ橋梁には引張方向の変形が作用するので、桁同士が接触することなく、断層を跨ぐ桁のみに被害が集中する。90度以上の場合は、断層を跨ぐスパンにとっては圧縮方向の変形なので、断層を跨ぐ桁の動きが次々に隣接スパンに伝播し、最終的には5スパン全体に影響が及んだ。



流動化処理土の設計法


構造物技術研究部(基礎・土構造) 副主任研究員 神田 政幸

 建設発生土の再利用の観点から流動化処理土が注目されている。流動化処理土は建設発生土に水とセメントを加え、高い流動性を有することから締固め工程を省略できる。また、体積の約3分の1が建設発生土であるため、開削トンネル工事のように大量の土が発生する工事では積極的に流動化処理土が使われるようになってきた。本発表では流動化処理土の配合設計例を示し、ポリプロピレン繊維を混入した新しい流動化処理土の力学特性の紹介を行う。


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