第161回 鉄道総研月例発表会:防災技術に関する最近の取組み

防災技術に関する研究開発への取組み


防災技術研究部 部長 藤井 俊茂

 厳しい地質・地形環境と気象条件下にある日本の国土に敷設された鉄道が、自然災害発生の防止・被害の軽減のために行なってきた技術開発を振り返るとともに、現在、鉄道総研が取り組んでいる防災に関する研究開発課題について簡単に紹介します。


地震防災システムへの取組みの現状


防災技術研究部(地震防災)研究室長 芦谷 公稔

 鉄道における地震防災では、施設の耐震性を向上させる一方で、地震時には的確に列車運行を制御することが重要となる。鉄道における地震時の自動列車制御は、東海道新幹線の開業とともに導入されたが、それ以降、さらなる安全性向上のため、様々な地震防災システムが開発されてきた。本講演では、地震防災システムに関する過去の研究開発の経緯を概観するとともに、最新の取り組みについて紹介する。



地震防災システムにおけるナウキャスト地震情報の活用


防災技術研究部(地震防災)研究員 中村 洋光

 被害を及ぼす可能性のある地震が発生した場合に、素早く的確な警報を出し、列車を制御することは、地震防災システムにおける重要な機能の一つである。気象庁は全国約180ヶ所の地震観測点を用い、地震発生時の早い段階において地震の位置や規模、予測震度などの情報を含んだナウキャスト地震情報を配信する計画を進めている。本講演では、ナウキャスト地震情報とこれを活用した早期警報システムを紹介する。



地震防災システムにおける構造物の早期被害予測


構造物技術研究部(基礎・土構造)副主任研究員 室野 剛隆

 迅速な運転再開を支援するために,地震後速やかに鉄道構造物の被害を推定できるアルゴリズムを構築した.本アルゴリズムは,面的な地震動情報(最大加速度と最大速度)と,構造物の基本諸元により,広範囲な鉄道沿線の被害状況を迅速かつ細かく把握できるものである.本発表では,アルゴリズムの紹介をするとともに,気象庁から配信される面的な地震情報を用いた場合の被害推定例を紹介する.



伸長ネットを用いた落石防護柵の衝撃エネルギー吸収機構


防災技術研究部(地盤防災)研究室長 村石 尚

 鉄道沿線で発生頻度の大きい小規模な落石を対象として、変形性能に優れた伸長ネットを用いた簡易落石防護柵を開発した。本発表では、開発した簡易落石防護柵の性能を確認するための実物大実証実験の概要と実験によって確認できた落石が柵に衝突したときの柵による衝撃エネルギーの吸収状況について報告する。



石積壁の地震時倒壊メカニズム


防災技術研究部(地盤防災)副主任研究員 太田 直之

 兵庫県南部地震以降、土木構造物の耐震性能を向上する工事が進められている。しかし石積壁(土留壁)については倒壊メカニズムが明確でないために、安定性の評価がなされていない現状にある。そこで、石積壁の高さや勾配など構造の実態を明かにするために調査を行った。さらに、調査結果を基に作成した模型石積壁を用いて振動台実験を実施した。本発表では、実験で確認した石積壁の地震時における変形・崩壊形態について述べる。



凍結地盤の融解に伴う地盤強度の変化


防災技術研究部(地盤防災)研究員 布川 修

 寒冷地域では、凍結していた地盤が春先に融解し表層地盤内の含水状態が高まることにより、降雨が少ないにもかかわらず斜面崩壊が発生することがある。しかし、凍結地盤の融解時における土の状態を計測した事例は少なく、その実態は明らかではない。そこで、本研究では寒冷地域での現地長期観測及び凍結地盤の融解時を模擬した模型実験を行い、凍結地盤の融解時における水分状況や地盤強度変化を確認した。



列車からの落氷雪によるバラスト飛散現象の再現試験


防災技術研究部(気象防災)主任研究員 河島 克久

 車体に付着した雪塊が列車の高速走行中に落下することによって発生するバラスト飛散現象の再現試験を行った。試験では空気砲を用いて雪塊を高速で射出し、この雪塊とバラスト表面との衝突状況を高速度ビデオカメラで撮影した。その画像の解析等から、バラストは雪塊との衝突後に時間遅れを伴って飛散し、その初速度は雪塊の衝突速度に比べて著しく小さいことが明らかになった。



第161回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 2003 Railway Technical Research Institute