第166回 鉄道総研月例発表会:浮上式鉄道の試験状況と技術開発

浮上式鉄道の技術開発の現状


浮上式鉄道開発本部 技師長 高橋 潔

 山梨実験線での走行試験も6年半を経過し、平成12年度以降5年計画で進めている第二フェーズの試験計画に沿って、長期耐久性検証に向けた走行試験は順調に進められている。さらに、コスト低減に向けた技術開発や車両の空力特性改善に向けた取り組みについても、それぞれの成果が挙がってきた。超高速大量輸送システムの開発を目標に掲げて進めてきた山梨実験線プロジェクトの、技術開発に対する現時点での集約と今後の展望について述べる。


山梨実験線における高速連続耐久試験状況


浮上式鉄道開発本部(山梨実験センター) 主査 島 雅則

 山梨実験線では、平成14年度までに、高速連続走行による信頼性・耐久性の検証と、コスト低減技術および車両の空力的特性の改善技術を盛り込んだ最新設備の導入とその性能検証を実施してきた。今年度は、さらに、より高い性能を実証するために、高速連続耐久走行試験、最高速度向上試験を実施した。今年度からスタートした500km/hでの100名試乗を含め、走行試験状況について報告する。



新型車両の走行試験結果


浮上式鉄道開発本部(車両部) 副主査 田川 直人

 平成14年7月、空力特性の改善を主眼に開発した新型車両Mc5、M4を山梨リニア実験線に搬入した。走行試験によりトンネル微気圧波,台車まわりの空気の乱れ等の改善、乗り心地レベル、車内騒音の低減を確認した。これら新型車両の特性を従来車両と比較し、得られた効果について発表する。



インバータの出力電圧増大制御方式の開発


浮上式鉄道開発本部(電気部) 主査 黒部 久名

 浮上式鉄道の電力供給システムは、営業線に向けコスト低減の技術開発に取り組んでいる。LSMに供給する電力は可変電圧・可変周波数の電源が必要であり、PWMインバータを用いている。インバータ容量は出力電圧・電流の最大値で決まる。最大電圧は車両が高速域での加速時に必要であり、この期間は運転時間の数%程度である。
 そこで、インバータの主回路構成を変えず、出力電圧を増大させる各種制御方式を開発したので報告する。



自立式ガイドウェイの開発


浮上式鉄道開発本部(土木部) 主査 浦部 正男

 山梨実験線ではガイドウェイ側壁にビーム方式、パネル方式および直付方式の3タイプを採用した。目的は施工実績および走行実験のデータをもとにそれぞれの方式を評価し、長所および短所を明らかにすることにあった。これらの3タイプの側壁の評価にもとづき、コスト低減および機能向上を目指した新しい方式のガイドウェイ側壁の開発を行った。本方式は従来の3タイプの側壁のそれぞれの長所を生かした設計となっており、形状を自立可能な逆T型としたプレキャストコンクリート製の側壁である。



浮上式車両の乗り心地向上策


浮上式鉄道開発本部 研究開発部(浮上式技術) 主任研究員 渡邉 健

 乗り心地の向上は、浮上式鉄道をより魅力的なものとするための重要な課題である。山梨実験線では、パッシブ系サスペンション最適化や、セミアクティブサスペンション等の制御要素を含んだ乗り心地向上策を実施してきた。また、台車〜地上間の発生電磁力を直接制御する、誘導集電装置を用いた新しい乗り心地向上策の開発も行っている。本発表では、これら乗り心地向上策の試験結果およびシミュレーション結果について報告する。



実用型日の字PLGコイルの開発


浮上式鉄道開発本部 研究開発部(電磁路) 主任研究員 饗庭 雅之

 浮上式鉄道の地上コイルは敷設数が莫大となるため、コスト低減、施工性の向上および高い信頼性が求められている。そこで、建設コスト低減策として、推進、浮上、案内の3機能を兼用させた実用型日の字PLGコイルの開発を行った。その第一ステップとして、コイルの概念設計およびコイル間接続部の試作試験等を行った後、これらの結果を踏まえてコイルの試作試験を行い、充分に満足する初期絶縁強度等を有していることを確認した。



剛体振動に伴う超電導コイルの発熱現象解明


浮上式鉄道開発本部 研究開発部(極低温技術) 主任研究員 浅原 哲郎

 超電導磁気浮上式鉄道のコスト低減策の一環として、浮上コイルを簡略化する日の字浮上コイル対応の超電導磁石の開発を進めている。超電導磁石は地上コイルからの電磁気的外乱によって加振され、日の字浮上コイルでは超電導磁石全体が曲げられる振動モードで発熱する。その際、超電導コイルは主にヨーイングおよびピッチングで剛体振動するため、超電導コイル単体の加振試験により、その発熱特性を把握した。



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