第175回 鉄道総研月例発表会:防災技術に関する研究開発開発

防災技術に関する研究開発の紹介


防災技術研究部 部長 藤井 俊茂

 日本の鉄道は厳しい地質・地形環境と気象条件下に敷設されているため、雨・風・雪・地震などの自然現象が原因となった災害を被ることがあり、安全で安定した鉄道輸送の提供は容易なことではない。そこで、鉄道における自然災害の発生防止ならびに被害軽減のために、鉄道総研が現在取り組んでいる研究開発の課題について紹介する。


自然風下の実物大車両模型に働く空気力の評価


車両構造技術研究部(車両運動) 副主任研究員 日比野 有

 自然風下の車両に働く空気力を精度良く評価するために、北海道の強風地(島牧)に実物大の高架橋模型と車両模型を設置し、約2年3か月間にわたり風の観測と車両模型に働く空気力の測定を行った。また、強風時の測定データから、車両の空気力係数を風向角別に求めた。本発表では、これらの測定・解析結果について述べるとともに、自然風下の車両の転覆限界風速の考え方を紹介する。



自然風を模擬した風洞試験による車両に働く空気力の評価


環境工学研究部(熱・空気流動) 副主任研究員 鈴木 実

 強風時の車両に働く空気力を風洞試験により評価するため、自然風の特性を模擬した乱流境界層を米原風洞内で生成した。島牧で用いた模型の 1/40 縮尺模型を風洞内に設置して、車両に働く空気力を測定し、自然風化の実物大模型試験との比較検討を行った。本発表では、自然風を模擬した乱流境界層の生成方法と車両模型に働く空気力の評価方法について報告する。



線路構造物形状に応じた効果的な防風対策工


環境工学研究部(熱・空気流動) 主任研究員 種本 勝二

 強風時の車両に働く空気力は車両形状のみならず、車両が走行する橋梁や築堤などの線路構造物の形状にも依存する。そこで、車両形状・線路構造物形状の違いによる空気力を評価し、ハード対策による車両に働く空気力の低減効果を確認するために風洞試験を行った。本発表では、線路構造物形状に対応した防風柵の空気力低減効果に関する試験結果を紹介する。



風速変動の統計的な特性と今後の運転規制への展開


防災技術研究部(気象防災) 研究室長 今井 俊昭

 強風時の運転規制方法や規制基準の妥当性を検討する際に考慮すべき自然風の変動特性を調べることを目的として、複数地点で得た風向風速データを統計的に分析した。風が弱い状態から短時間に強風となった事象や、弱い風を観測している地点の近傍が強風となっていた事象などの風速変動の発生頻度に関する統計的な性質を紹介し、これらの特性を考慮した運転規制方法のあり方について考察する。



早期地震警報システムの開発


防災技術研究部(地震防災) 研究室長 芦谷 公稔

 鉄道総研は、地震検知の後に数秒で地震の発生位置や規模を推定する新たな方法を気象庁と共同で考慮し、この手法を搭載した早期警報用地震計を開発した。この新地震計は、九州新幹線の対震列車防護システムに導入されている。また、気象庁は新地震計を全国展開し、「緊急地震速報」として地震後にいち早く情報を配信する計画を進めている。鉄道総研では、緊急地震速報を活用した地震警報システムを試作し検証試験を実施している。



濡れ雪の舞い上がりを抑制する台車周辺の車体形状の評価


防災技術研究部(気象防災) 主任研究員 飯倉 茂弘

 高速走行時の車両の着雪防止を目的として、平滑化が難しい台車部に着目し、その周辺の車体形状の相違が濡れ雪の舞い上がりに及ぼす影響を模型実験によって評価した。濡れ雪の舞い上がりを抑制するためには、列車通過時に車両床下で発生する急速な圧力降下を抑制することが必要である。本研究では、複数の台車周辺の車体形状について模型実験により圧力降下量の比較を行うとともに、濡れ雪の舞い上がり抑制効果を定量的に示した。



衛星画像等の数値情報を用いた災害危険斜面抽出法の開発


防災技術研究部(地質) 研究員 長谷川 淳

 鉄道沿線の斜面の災害長谷氏危険度を定量的に評価するために、高分解能衛星画像および数値地形モデル(DEM)を用いた斜面の評価法について検討を行った。その結果、高分解能衛星画像を用いて解析を実施することで空中写真判読結果とほぼ同様の土地被覆分類を行うことが可能であり、この結果をDEMの解析結果と合わせることで斜面の災害発生危険度を定量的に評価出来る可能性があることが明らかになった。



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