第188回 鉄道総研月例発表会:鉄道技術推進センターの活動および調査研究の成果

鉄道技術推進センターの活動


鉄道技術推進センター  センター長  白取 健治

 鉄道技術推進センターは、鉄道関係事業者約360社の会員とコミュニケーションをとり、「技術情報サービス」、「技術の体系化と課題解決」、「技術力の維持向上」の3本の活動の柱からなる9種類の活動を行っている。これらの活動は、その成果を会員へ反映させ、鉄道界が安全で安定した輸送手段として「社会の信頼にこたえる」ことができることを目的としている。平成8年の推進センター発足以来、9年間の各活動のレビューと今後の方針について述べる。


技術基準関連活動の概要


鉄道技術推進センター  次長  小西 真治

 鉄道技術推進センターは「鉄道構造物設計標準」等の技術基準の改正原案作成を国から受託し進めるとともに、技術基準の細目作成やその参考書にあたる手引き、マニュアル、事例集作成の取りまとめを行っている。平成13年の省令改正により鉄道の技術基準が性能規定化されたのに伴い、現在は,性能照査型設計法の導入や維持管理標準のような新たな標準作成作業を行っている。推進センター発足以来9年間の技術基準関連活動のレビューと今後の取組みについて述べる。



構造物管理支援システムの構築


鉄道技術推進センター  課員  進藤 良則

 受託事業の一環として、構造物管理支援システムの構築を行っている。これは土木構造物の維持管理を効率的に行うため、構造物の諸元および検査記録をデータベース化し、全般検査における検査記録や変状データを蓄積管理するものである。鉄道構造物維持管理標準(仮称)に準拠した健全度の判定を支援する機能として、現地調査における健全度の目安判定にマトリクスを用いることで、検査者個人の違いによる判定の差異を少なくするメリットがある。



リスクマネジメント手法を用いた鉄道構造物の維持管理計画手法


構造物技術研究部(トンネル)  主任研究員  佐藤  豊

 近年、構造物の効率的な予防保全や説明責任の完遂等の要請が高まりつつあり、鉄道事業者においても、客観的かつ定量的な維持管理計画手法の導入が求められている。本報告では、鉄道構造物の長期的な維持管理計画に活用できるよう、実在するトンネルを対象にケーススタディを行った検討結果を示す。ここでは、構造物の劣化や劣化進行を制御する行為(点検や補修等)をモデル化し、構造物の将来の状態遷移をシミュレートして、その過程で発生するリスクを含んだトータルコストを算出している。



車両の検査周期延伸の提言に向けた調査活動


鉄道技術推進センター  副主査  阿保 史彦

 車両や機器の長寿命化や信頼性の向上、およびメンテナンスの軽減化を図った車両の導入などにより、検査周期の見直しが求められている。検査周期の延伸に当たっては、制約となる因子の抽出、試験方法の検討、試験の実施、結果の分析、およびまとめを行ない、政策への反映を提言する。今回、これまでの成果について紹介するとともに、現在実施中である特殊鉄道および路面電車の検査周期延伸に向けた取り組み状況について報告する。



車両用電子機器の故障の傾向とその対策


車両制御技術研究部(動力システム)  研究員  川村 淳也

 鉄道車両ではインバータ制御装置などの電子機器が広く普及しており、これらの故障に対して適切な保守方法や故障防止対策が課題となっている。そこで、平成14年度より車両用電子機器、電子制御装置の保守や故障対策に関して鉄道事業者の事例を研究し、過去の調査事例及びメーカの知見を加えて現状の分析と適切な検査方法を提案することを目的として検討を進めている。ここではその検討結果について報告する。



中小鉄軌道事業者不具合対策事例集の作成


鉄道技術推進センター  主査  鈴木 哲也

 調査研究の一環として、中小鉄軌道事業者不具合対策事例集を作成した。その目的は、鉄道における過去の不具合とその対策例をアンケート形式で収集することにより、鉄軌道事業者間で知識の共有化を図り、同様の不具合を持つ事業者の参考となる資料にすることである。ここでは、本調査研究におけるデータの分類手法や結果について報告する。



レールアドバイザーによる技術支援活動


鉄道技術推進センター  主査  柿嶋 秀史

 中小の鉄軌道事業者では経営環境のみでなく、技術者の確保と技術力の維持が課題となっている。これに対する技術支援策の取り組みとして、レールアドバイザー制度を創設した。鉄道技術の各分野において、経験と知識が豊富な人材をレールアドバイザーとして登録することにより、鉄軌道事業者を訪問しての技術的サポートの実施や講演会での講演など活動の成果を報告する。




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