第194回 鉄道総研月例発表会:最近の輸送情報技術

最近の輸送情報技術


輸送情報技術研究部 部長 富井規雄

 現在、鉄道総研 輸送情報技術研究部においては、「動的デマンド推定に基づく輸送計画の効率化」、「鉄道における高速大容量情報通信技術の開発」、「設備管理業務へのセンシング技術・ITの適用」の3つの課題に取り組んでいる。本講演では、これら3つの課題を中心に、鉄道総研における最近の輸送情報技術関連の研究成果について、その概要を報告する。


視覚障害者向け情報提供システムの実証的評価


輸送情報技術研究部(旅客システム) 主任研究員 深澤紀子

 視覚障害者向け情報提供システムの鉄道への実導入に向けた課題を整理するため、神戸地区において実証実験を実施した。列車移動を伴う複数駅に跨る案内や大規模な乗換駅における案内の有用性が確認された。また、案内内容や案内タイミング、システム機能等に関するニーズが、利用者属性により大きく異なることを明らかにした。駅員等による人的案内との連携や人による支援との役割分担に関する検討の必要性も明らかになった。



自由席・指定席および交通機関の選択行動に関する分析


輸送情報技術研究部(交通計画) 研究員 田村一軌

 旅客の交通機関選択行動(特急列車と高速バス)および座席選択行動(指定席と自由席)に関する旅客アンケート調査を実施し、その結果から行動モデルを構築し旅客の選択行動を分析した。旅客の選択が運賃・所要時間などの定量的な基準だけでなく、定時性や着席などに関する意識的な要因に影響を受けているなど、いくつかの新しい知見が得られたので、アンケート調査結果と合わせ報告する。



大規模なダイヤ乱れに対応した運転整理支援アルゴリズム


輸送情報技術研究部 部長 富井 規雄

 事故等により1時間を超える不通が発生した場合(大規模なダイヤ乱れ)に対応した運転整理支援アルゴリズムを開発した。大規模なダイヤ乱れに対しては、多数の運休とそれに伴う車両運用変更が実施される。このような運転整理案を自動的に作成するため、指令員が用いる運転整理の定石(運転整理パターン)を活用したアルゴリズムを考案し、コンピュータ上に実装した。実際の列車ダイヤへの適用を試みた結果、現実的な運転整理案を作成できることがわかった。



ダイヤ乱れ時の迂回経路案内と旅客の選択行動


輸送情報技術研究部(旅客システム) 研究室長 土屋隆司

 ダイヤ乱れ時における、エリア内の各目的駅までの推定所要時間に基づいて各駅別に迂回の適否(運転再開を待つべきか、目的地への迂回経路を取るべきか)を判定し、旅客に案内するシステム(プロトタイプ)を開発した。ここでは、本システムの概要を紹介するとともに、本研究を進めるにあたって実施した、ダイヤ乱れ時の旅客の選択行動に関する調査結果についても合わせて報告する。



ダイヤ乱れ時の駅社員向け旅客案内情報配信システム


輸送情報技術研究部(設備システム) 主任研究員 野末道子

 ダイヤ乱れ時においては、大量に発生する運転整理情報や列車遅延情報を取捨選択して各駅員に提供する選択的情報配信の仕組みが求められている。情報を選別する基準は対象となる駅の規模や特性、ダイヤ乱れの状況等に依存する複雑なものであるため、システムへの実装は容易ではない。そこで、駅員経験を持つ専門家に対するインタビューとAI(人工知能)の学習手法を組み合わせることで、情報選別基準を効率的に獲得する手法を開発した。この基準を、規模等が異なる複数駅において検証した結果についても合わせて報告する。



データマイニング手法を用いた電気転てつ機の異常検出


輸送情報技術研究部(設備システム) 副主任研究員 安達久信

 設備の異常検出に使用するしきい値が、その設備の設置環境から影響を受ける場合がある。このようなしきい値を設定するには経験に基づいた知識が必要であるが、その知識を持つベテラン社員は減少している。本研究では、しきい値を設定せずに異常検出ができる手法としてデータマイニング手法の適用を検討し、実際にその手法を用いて解析を行った。その結果、検定、区間推定、判別分析などの手法が、異常検出に適用できる可能性が高いことが示された。



異常検知システム用画像処理アルゴリズム


信号通信技術研究部(信号) 主任研究員 鵜飼正人

 駅構内やホーム等に設置した監視カメラの映像から、置き去り荷物や不審者の徘徊・暴力といった異常行動、さらには転倒者や立ち入り禁止域への侵入者等を自動的に検知し、その情報を指令・監視センターや必要箇所に送信し分析を行ない、最寄りの社員に指示連絡をする、異常検知・情報配信システムの研究を進めている。本発表では、人間の動線や挙動を解析する画像処理アルゴリズムの概要と、実映像による検証実験結果を報告する。




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