第204回 鉄道総研月例発表会:地震時の鉄道システムのダイナミクス

地震時の鉄道システムの動的応答解析に関する研究の現状


鉄道力学研究部 部長  鈴木 康文

 鉄道システムの地震時の動的応答に関わる問題を概観し、なかでも車両の走行安全性に関して各構成要素の動的挙動解析技術に関する研究の現状について紹介する。地表面の揺れの推定、地震時の軌道や構造物の挙動解析、地震時および脱線後の車両の挙動解析など現象解明に関わる研究や、構造物の耐震・免震・制振、軌道構造や車両の改良による安全性向上策の研究などについて概説する。


広域な地震波動伝播の予測手法


構造物技術研究部(耐震構造) 主任研究員 室野 剛隆

 鉄道のような線状構造物は、地震時には場所的に特性が異なる地震動を受ける。そこで、断層を含む数十kmの広域な地震動の伝播をマクロに予測する解析法と、表層の数百mの地盤挙動をミクロに評価する解析法をカップリングさせて、地震動をマクロ−ミクロに予測する手法を開発した。本手法を用いて、地震動が複雑な空間分布特性を示すことを報告する。



地震時における構造物群の挙動解析


構造物技術研究部(コンクリート構造) 副主任研究員 宇野 鋸a

 代表的な鉄道構造物をとりあげ、地震時の車両走行性に影響を及ぼすと考えられる地震時の構造物の変位について,変位標準の規制値に対する照査の観点から報告する。個々の構造物の三次元挙動や各種パラメータの影響、構造物が群として連続する場合の境界条件の影響、あるいは連成挙動について有限要素法を用いた構造物の動的非線形解析に基づき検討する。



不連続変形法による地震時のバラスト挙動解析


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 相川  明

 地震時のバラスト軌道の変状や塑性変形挙動のメカニズム解明に資するために、バラスト砕石の実測形状を用いて、バラスト軌道の道床構造を精密に模擬した不連続体構造モデルを作成し、不連続変形法解析により地震波を作用させて、個々の砕石粒子の地震時の微細な動的挙動を再現した。本報告では、道床内の局所的なダイレタンシー特性とエネルギー消費特性に着目したバラスト軌道の地震時の挙動特性について紹介する。



地震時の車両挙動解析と走行安全性評価


鉄道力学研究部(車両力学) 主任研究員 星野 宏則

 車両運動シミュレーションの方法と実台車振動台試験によるその検証及び補正方法を述べる。そのうえで、ランダムな設計地震動を入力した場合の解析結果を示し、大きな地震動を受けた新幹線電車の動的挙動の特徴について報告する。また、正弦波加振により作成した走行安全限界線図と推定地震動との関係や、車種(車両諸元)が異なる場合の挙動の相違についても言及する。



台車の改良による地震時の車両走行安全性向上


鉄道力学研究部(車両力学) 主任研究員 宮本 岳史

 新幹線電車の一車両モデルを用いたシミュレーションにより、左右動ダンパ、ストッパ、空気ばね等の台車諸元を変えることで、地震時の走行安全限界が向上することを示す。また、クラッシャブルストッパや高速度高減衰ダンパの採用など、地震時の走行安全性向上策とその効果の程度について、解析結果を報告する。



構造物の改良による地震時の車両走行安全性向上


鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 曽我部 正道

 ラーメン高架橋や橋りょう等の鉄道構造物をとりあげ、車両と構造物との動的相互作用解析プログラムを用いて地震時車両走行性に関する各種パラメータ(構造形式、等価固有周期、径間数、地震動の大きさ、減衰定数)の影響を評価するほか、地震時車両走行性改善のための構造物としての対策について数値解析及び設計法の観点から論じる。




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