第208回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術に関する最近の研究開発

構造物技術研究部 部長 小西 真治

構造物に関する研究開発においては、実務で活用できる研究成果を挙げることを目標に、「技術基準整備」および「構造物の維持管理」、「建設費節減」、「耐震設計・耐震診断」、「環境」に係わるテーマを推進している。これらのうち、今回は、「建設費削減」、「維持管理」、「環境」に関する最近の研究開発の概要について紹介する。


ケーソン基礎頂版の合理的設計法の開発

構造物技術研究部(コンクリート構造)研究室長 谷村 幸裕

ケーソン基礎の頂版においては、耐震設計において想定すべき地震力の増大にともない、頂版高、および鉄筋量が増大する傾向にある。そこで、本研究では、頂版のせん断力、およびせん断耐力に関する新たな算定式を用いた設計法を提案した。せん断耐力の算定においては、実験により観察されたひび割れ性状より、現行の設計法で考慮していない引抜き側の有効幅を提案した。そして、提案した有効幅をFEMにより検証し、設計法の精度、および経済性が向上することを明らかにしたのでその内容について紹介する。


土構造物や地盤改良工法へのセメント改良礫土の適用

構造物技術研究部(基礎・土構造) 研究員 松丸 貴樹

近年、粒度調整砕石に若干のセメントを添加し十分締固めを行うことによって、コンクリートにも匹敵する性能が得られることが明らかになってきた。そこで、本研究では、室内試験や原位置試験によってセメント改良礫土の強度・変形特性を把握し、実際にスラブ軌道を支持する盛土材へ適用した。また、補強材を併用した部材の曲げ変形特性を把握し、軟弱地盤改良工法への適用を提案し、その効果を模型振動実験により確認したのでこれらの内容について紹介する。


自動車等の衝突により変形が生じた鋼桁の健全度評価法

構造物技術研究部(鋼・複合構造) 主任研究員 池田  学

架道橋では、桁下空頭制限高を超えた自動車等が鋼桁に衝突する事故が年間数例発生し、これにより鋼桁に変形が生じるケースが多い。このような場合に、現地で変形パターンや変形量をもとに健全度を評価できる手法が望まれている。そこで、各種年代別の鋼材の材料試験と3次元FEM解析を行い、鋼材の脆性破壊を防止する限界ひずみ量と桁の耐力を確保するための限界変形量を定めた。そして、両者を踏まえた健全度評価法を提案したのでこれらの内容について紹介する。


欧州地下鉄トンネルにおけるワイヤレスセンサネットワークの適用

輸送情報技術研究部(運転システム) 副主任研究員 平井  力

鉄道総研では英国ケンブリッジ大学の地盤工学研究グループと、構造物の劣化等を監視するためのワイヤレスセンサネットワークシステムの共同研究を2006年秋より進めている。このシステムではトンネル内や橋梁等、各構造物に設置したセンサから観測されるデータを共有できる統合的なシステムの構築を目指しており、ロンドン地下鉄、プラハ地下鉄等での現地試験を実施している。ここではプロジェクトの概要、現地試験の状況、センサの配置方法等に関する内容について紹介する。


構造物管理支援システムの開発

輸送情報技術研究部(設備システム) 研究室長 菊地  誠

鉄道土木の分野においては、これまで大量に構築した構造物の劣化が顕著になりつつあり、適切な維持管理が不可欠となっている。そこで、鉄道事業者が土木構造物の維持管理を効率的に実施するため、各構造物の諸元及び関連情報の内容をデータベース化し、全般検査における検査結果や変状データを蓄積管理していくシステムを大手民鉄及び公営地下鉄と鉄道総研が共同で新たに開発したのでその内容について紹介する。


開床式鋼橋の音源寄与度解析と対策

材料技術研究部(防振材料) 主任研究員 半坂 征則

鋼鉄道橋ではレール/車輪間で発生する転動音に加えて、多数の鋼部材の振動に起因する構造物音が発生し、騒音対策が大きな課題となっている。これまで種々の騒音対策が行われてきているが、騒音対策をより効果的なものとするためには、どの音源からの騒音が大きいかを明らかにすることが重要である。そこで、開床式鋼鉄道橋を対象として、軌道および構造物に着目した詳細な測定を行い、転動音と部材毎の構造物音を区分し、音源別寄与度を推定する解析手法を新たに考案したのでその内容を紹介する。また、開床式鋼橋の騒音対策に関する考え方について解説し、最近の対策事例を紹介する。


駅空間の音環境評価

構造物技術研究部(建築) 主任研究員 伊積 康彦

大都市ターミナル駅では、多数の騒音源と音を反射しやすい仕上げ材料のため、騒音レベルが高く残響時間も長くなり良好な音環境とは言えない状況となっていることが多い。そこで、今後の音環境を改善するための基礎資料を得るため、駅コンコースを対象とした実態調査と主観評価試験を行うとともに、対策の一例として吸音体を用いた音環境改善効果を明らかにしたのでその内容について紹介する。



第208回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2007 Railway Technical Research Institute