第210回 鉄道総研月例発表会:最近の軌道技術

最近の軌道技術の動向

軌道技術研究部 部長 石田  誠

軌道技術の開発においては、材料・構造の性能と軌道と車両の相互作用に関する知見を基に対象とする破壊・劣化等の現象解明が重要である。ここでは、特に軌道と車両の相互作用に着目した取組みを中心に、地震時の脱線対策や軌道材料の損傷防止に関する研究開発などの、最近鉄道総研で実施している課題について概説する。


軌道における地震時の新幹線脱線対策

軌道技術研究部(軌道構造)研究室長 柳川 秀明

鉄道総研では、新潟中越地震における新幹線の脱線事故を踏まえ、今後発生が予想される地震に対して新幹線に生じる被害の軽減を図るために、車両ガイドが有効に機能するためのレール転倒防止装置、地震対策用接着絶縁レール、改良型伸縮継目、脱線を防止する脱線防止ガードおよび地上側で逸脱防止を行う逸脱防止ガードについて、JR会社、鉄道・運輸機構と共同で開発を進めている。ここではその概要について紹介する。


ベイナイトレールの長期敷設試験による耐シェリング性の確認

材料技術研究部(摩擦材料) 主任研究員 佐藤 幸雄

1994年から敷設試験を開始した耐シェリング用ベイナイトレールの敷設試験が終了した。試験の結果、JIS規格範囲内で硬さレベルを変えた試験レールの中で、最も硬さの低い低硬度ベイナイトレールが、現用の普通レールよりも耐シェリング性に優れていることが確認できた。また、溶接部についても特に問題のないことが確認できた。本講演では、ベイナイトレールの開発コンセプト、試験に供したベイナイトレールの材質特性について概説するとともに、上記敷設試験の結果について紹介する。


エンクローズアーク溶接の欠陥発生傾向と対策

軌道技術研究部(レール溶接) 主任研究員 辰巳 光正

本線軌道上で施工されるエンクローズアーク溶接では、内部欠陥の発生が避け難く、施工直後に実施される超音波探傷検査による良否判定が重要となる。そこで、エンクローズアーク溶接を標準条件および溶接時間を短縮する特殊な条件によって施工し、溶接欠陥の発生傾向を調査するとともに、敷設された溶接部に対して適用されるBスコープによるレール探傷法の問題点について検討した。ここではこれらの結果と溶接欠陥を抑制する施工法について紹介する。


まくらぎ直角変位の発生メカニズムの把握と抑制策の考案

軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員 片岡 宏夫

曲線半径600m〜1000m程度の緩曲線においてレールが内外軌で逆方向にふく進し、まくらぎ直角変位やロングレールの設定替えが発生している。そこで、まくらぎ直角変位の実態調査と営業線におけるレールふく進力の測定を実施し、まくらぎ直角変位の発生メカニズムを把握した。その抑制策として改良形のレール締結装置を考案し、まくらぎ直角変位に対する抑制効果を確認したのでその内容について紹介する。


構造物境界部における軌道沈下対策

軌道技術研究部(軌道・路盤) 副主任研究員 桃谷 尚嗣

ボックスカルバートなどのコンクリート構造物と盛土の接続する構造物境界部ではバラスト軌道の局所的な沈下が生じ,軌道保守上の弱点箇所となっている。そこで,本研究では構造物境界部の盛土の路盤を強化することによって,局所的な軌道沈下の発生を回避する方法について検討した。解析および模型実験の結果,コンクリート製の踏掛版の設置や鋼管の挿入により盛土を強化することで,局所的な軌道沈下の発生を回避できることを明らかにしたのでその内容について紹介する。


新たな軌道変位進み予測モデルの提案

軌道技術研究部(軌道管理) 研究室長 古川  敦

バラスト軌道の沈下メカニズムについては、国内外で多くの研究が行われている。一方、これを軌道変位進み予測に適用するには、地点毎の沈下量の違いを説明するモデルが必要となる。これに対し、地点毎の動的輪重の違いに着目した新しい軌道変位進み予測モデルを考案した。ここでは、このモデルの概要および実測値との比較結果について紹介する。


軌道モーターカー運用計画作成支援システムの開発

軌道技術研究部(軌道管理) 副主任研究員 泉  英治

複数の軌道モータカー(MC)を保有する現業区においては、MCの運用計画は予定作業を各MCに割り付けながら作成される。このような計画は担当者により手作業で作成されており、作成された計画の妥当性が不明であると共に計画の作成に多くの手間を要している。これに対し、MCの運用と計画作成作業の効率化を目的とした軌道MC運用計画支援システムを開発したので紹介する。



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