第215回 鉄道総研月例発表会:材料技術に関する最近の研究開発

材料の研究開発の最近の動向

材料技術研究部 部長 久保 俊一

鉄道の機能向上、経済性向上のために新たな材料および材料関連技術の鉄道分野への適用について研究開発に取組んできている。材料分野での最近の話題である資源リスクについて概説するとともに、最近の研究開発の取り組みと主な成果について紹介する。


ジオポリマー法による環境負荷低減コンクリートの開発

材料技術研究部(コンクリート材料)主任研究員 上原 元樹

普通セメントを生産する際に排出される二酸化炭素量は膨大な量である。そこで、廃棄処理が問題となっている石炭灰とケイ酸アルカリ溶液を混合硬化させるジオポリマー法により、普通セメントを全く使用しない、CO2削減効果の大きな新しい環境負荷低減コンクリートを作製した。作製したコンクリートについて強度試験、化学的耐久性試験を行ったところ、優れた特性を確認することができた。本発表では、提案するコンクリートの作成法およびその特性について報告する。


新しいアルカリ骨材反応抑制剤の開発

材料技術研究部(コンクリート材料) 主任研究員 水野  清

コンクリートの早期劣化現象のひとつとしてアルカリ骨材反応がある。これを抑制する材料としてCa−A型ゼオライトのイオン交換反応を活用した補修材を実用化している。今回、新たにLi−A型ゼオライトによる反応抑制効果を確認した。また、メタカオリンを出発物質としてLi型ゼオライトを低価格で合成する方法を開発した。ここでは、新たに開発したアルカリ骨材反応抑制剤および低コスト化について報告する。


レール防音材の開発

材料技術研究部(防振材料) 主任研究員 半坂 征則

従来よりレール/車輪間で発生する転動騒音に対して簡単に施工ができる有効な対策の開発が求められてきた。そこで、内層に軟質の発泡エチレンプロピレンゴム、外層に制振鋼板を積層した構造からなるレール防音材の開発を行い、営業線において効果確認試験を行った。開発した防音材は簡単に施工できるうえに、着脱可能であるため、施工後のレール点検等のメンテナンスも容易である。ここでは、今回開発したレール防音材の特性および現地での検証結果を紹介する。


鋳鉄複合化制輪子の開発

材料技術研究部(摩擦材料) 副主任研究員 半田 和行

寒冷地で主に使用されている合金鋳鉄制輪子は、車輪への攻撃性が低く高い粘着力が得られるが、さらなる高速化に対応するためには高速域における摩擦力の向上が課題である。そこで、制輪子摩擦面に炭化けい素を介在させると摩擦係数が高まる効果を踏まえ、合金鋳鉄制輪子に炭化けい素フィルタを鋳ぐるんだ鋳鉄複合化制輪子をその量産方法とともに開発した。ここでは、開発した鋳鉄複合化制輪子の特性、ベンチ試験および現地試験の検証結果などを報告する。


主電動機グリースポケットの改良と寿命延伸効果

材料技術研究部(潤滑材料) 主任研究員 日比野 澄子

現在、主電動機のメンテナンス周期は、軸受部の中で最も寿命の短いグリースのメンテナンス周期に支配されるため、その耐久性向上が求められている。そこでグリースの潤滑寿命を延伸する目的で、主電動機のグリースポケットを改良し、実物大軸受による寿命比較試験を行なった。その結果によると、改良GPを使用した場合には、玉軸受側で2倍程度、ころ軸受側で1.3倍程度のグリース使用寿命が期待できることがわかった。本発表では、グリースポケットの改良内容およびこれを使った寿命試験結果を報告する。


高磁場発生を目指した高温超電導バルク磁石の開発

材料技術研究部(超電導応用) 研究室長 富田  優

高温超電導バルク磁石の実用化における課題のひとつとして、機械的特性と熱的安定性の問題がある。そこで、樹脂含浸と金属含浸の手法を開発し、高温超電導では最も高い17.24テスラの磁場を発生させることを可能とした。これは超電導材料の機械強度や耐久性等の物性を評価しながら改良を行った結果であり、フライホイール、磁気分離装置、核磁気共鳴等、超電導の応用分野に幅広く活用されようとしている。本発表では、今回開発した高磁場を発生させることが可能な、高温超電導磁石の作製手法とその特性について報告する。


鉄道用材料のLCAによる環境評価

材料技術研究部 主任研究員 相原 直樹

環境負荷を定量的に評価する手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)は、近年の環境への関心の高まりにより各産業において導入が進んでいる。鉄道用材料においても、環境負荷の低減に関する評価が必要とされる。本発表では、鉄道用材料におけるLCAの評価手法、および、既存製品の材料を変更した際の環境負荷の比較事例を紹介する。



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