第216回 鉄道総研月例発表会:鉄道のダイナミクスに関わる最近の測定技術

鉄道システムの測定技術

鉄道力学研究部 部長 石田 弘明

鉄道の研究開発における重要な項目として、その複雑な現象を捉えるための測定が必要であり、いろいろな測定技術を開発しているところである。本発表では、鉄道のダイナミクスに関わる測定技術として、各論で発表するもの、車輪/レールの真実接触面積測定法、摩擦係数・レール表面性状測定装置などを取り上げ、その概要を紹介する。


架線・パンタグラフ系の相互作用に係わる測定技術

鉄道力学研究部(集電力学)研究室長 池田  充

架線・パンタグラフ系はAC25kV、AC20kV、あるいはDC1.5kVに加圧されるため測定が容易ではなく、使用するセンサにも制約が多い。そのような環境のなかで、架線とパンタグラフの相互作用を決定付ける接触力の測定技術について開発・改良を進めており、最近では特定区間を通過する全列車の接触力測定も可能となった。本発表では、これらの技術について紹介する。


小型試験機による車輪/レール間のクリープ力測定技術

鉄道力学研究部(車両力学) 副主任研究員 土井 久代

車輪/レール間に作用するクリープ力特性を、さまざまな条件下で容易に把握することが出来る試験機を開発した。従来は実験自体が難しいころがり摩擦状態を、開発した試験機で実現出来る。本発表では、この試験機の仕組み、実験方法、データ処理や現時点で得られた知見を紹介する。


まくらぎから道床に伝わる動的荷重の測定技術

鉄道力学研究部(軌道力学) 研究員 浦川 文寛

レールからまくらぎに伝わった列車の動的荷重は、まくらぎ下面において砕石層との接触点を介して道床に伝えられる。まくらぎと道床間の荷重伝達のしくみを解明するために、超薄型の動荷重センサをまくらぎ下面に多数敷き詰めた「センシングまくらぎ」を開発した。本発表では、「センシングまくらぎ」を使った測定方法と軌道での測定結果について紹介する。


三次元センシングストーンによる道床振動加速度測定技術

鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 相川  明

列車の走行荷重を受けて、バラスト砕石がどのような動きをしているのかを詳しく調べるための「三次元センシングストーン」を開発した。これを使うことにより、砕石内部に三軸加速度センサを取り付けたことにより、砕石がどのような方向を向いても動きを正確に測定できるようになった。また、センサを2個内蔵したセンシングストーンでは、これまで測定が出来なかった砕石の回転挙動も測定できる。ここでは、「三次元センシングストーン」による測定のメカニズムと、営業線軌道での測定結果について紹介する。


構造物の固有振動モード測定技術

鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 曽我部 正道

近年、新幹線の営業速度や試験最高速度は飛躍的に向上しており、更なる速度向上への技術開発も進められている。列車の速度向上においては、安全性の観点からは共振に対する評価が、使用性の観点からは、振動・騒音などの周辺環境への影響評価が重要な課題となってくる。これらの課題に的確に対処するためには、構造物の部材レベルでの振動性状も重要となることから、測定システムを構築するとともに,実構造物での測定を実施し、これに基づき簡易な振動性状予測手法を提案したので報告する。


“Uドップラー”による構造物振動の遠隔非接触測定技術

鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 上半 文昭

構造物の振動測定作業をより簡単かつ安全にするために開発した非接触振動測定システム「Uドップラー」は、レーザ照射により測定対象の振動を測定できる装置で、最大約100mの測定距離と広い測定範囲(DC〜600Hz、0.2μm/s〜100mm/s)を有している。独自の補正技術の採用によって屋外環境においても構造物振動を精度良く非接触で測定することができ、高架橋や橋脚の固有振動数の推定、橋桁の動的たわみ測定等に活用できる。本発表では、「Uドップラー」の原理および測定結果例を紹介する。



第216回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2008 Railway Technical Research Institute