第217回 鉄道総研月例発表会:車両技術に関する最近の研究開発

車両に関わるシミュレーション技術に関する最近の研究

車両構造技術研究部 部長 石塚 弘道

鉄道総研の車両分野では、安全性・信頼性向上、速度向上、乗り心地向上、省エネルギー、省メンテナンス等をキーワードに研究開発を行っている。これらの研究開発においては、シミュレーションは今や不可欠の技術である。本講演では車両に関わるシミュレーションの概要を紹介するとともに、車両運動、ブレーキディスクの熱応力などに関するシミュレーションを具体例として紹介する。


アシスト操舵台車の開発

車両構造技術研究部(車両振動)主任研究員 鴨下 庄吾

鉄道車両に新しい操舵制御技術を導入し、台車の曲線通過性能を向上させる技術を紹介する。ボルスタレス台車の台車枠−軸箱間に空気圧アクチュエータを組み込み、曲線位置に合わせて輪軸の自己操舵性を補助するように操舵制御力を付加する。最大操舵力には制限を加え、非制御時には通常の軸箱前後支持剛性を確保できるため、フェイルセーフ性が高い操舵方式である。本報告では、このアシスト操舵システムの概要と基礎的な特性試験の結果について報告する。


台車枠溶接部強度評価のための実働応力ひん度分布推定法

車両構造技術研究部(車両強度) 主任研究員 織田 安朝

台車枠溶接部の強度評価、特に寿命評価においては、当該溶接部の実働応力ひん度分布を知ることが重要である。実働応力ひん度分布は走行試験によって得られるが、設計段階および使用条件を変更する際においては、実働応力ひん度分布を予測する必要がある。そこで、これらの実働応力ひん度分布の推定を可能とするため、過去の走行試験から得た実働応力ひん度分布の特性を明らかにし、走行条件(速度、線区、積空等)による影響について検討したので報告する。


非構造部材を活用した車体剛性向上方法

車両構造技術研究部(車両振動) 主任研究員 瀧上 唯夫

通勤車両で主流となっているステンレス鋼製車体は、車体の軽量化・製造工程の省力化に貢献しているが、一方で、車体の床、屋根、側各面が独立に振動する複数の曲げ振動モードが、乗り心地に影響を与える傾向が見られる。鉄道総研では、従来強度部材として考慮されていなかった非構造部材を活用して、車体の長手方向の剛性を向上するとともに、車体各面の面外変形を抑制するため、戸袋部に「リング化構造」を追加した「剛性試験車体」を製作した。本報告では、その概要と、車両試験台による加振試験結果について報告する。


低コスト振子制御システムの開発

車両構造技術研究部(車両振動) 研究室長 佐々木 君章

車両の大幅な改造を伴わずに既存の自然振子に適用可能な制御付き振子車両システムを開発した。線路情報を用いる従来の振子制御方式より簡便(先行隣接車両のヨー角速度による傾斜角制御)な制御方式となるため低コストとなる。自然振子車両に本システムを適用し、乗り物酔い暴露量値(乗り物酔いの起こりやすさの指標:低周波左右振動加速度の累積値)が30%程度改善できることを走行試験で確認したため、概要を報告する。


架線・バッテリーハイブリッドLRVの軌道線走行試験結果

車両制御技術研究部(駆動制御) 研究室長 小笠 正道

回生有効利用による省エネを目指し、架線と車載リチウムイオンバッテリーによる電源ハイブリッド型LRV車両をNEDO委託により開発した。2007年11月から2008年3月まで軌道事業者の営業線における走行試験を行った。バッテリーのみによる1充電無架線走行距離、架線とバッテリーのハイブリッド走行による消費エネルギー削減効果、低温降雪環境下における起動試験など、試験結果について報告する。


ディーゼル車両用消費エネルギー計算システムの開発

車両制御技術研究部(動力システム) 主任研究員 村上 浩一

エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)の改正で、車両を300両以上保有する鉄道事業者には、低燃費車両の導入、エネルギー使用量の定期報告など、環境への取り組みが求められている。このような取り組みを支援するツールとして、運転曲線作成ソフトから得られる走行データを用いて、燃費特性を示すエンジン性能データなどから、走行に必要な燃料消費量や排気されるCO2排出量などを推定する計算システムを開発したので、その概要を紹介する。


踏面清掃装置のかじり抑制に関する研究

車両制御技術研究部(ブレーキ制御) 副主任研究員 嵯峨 信一

高速から停止に至るまで、緩解せずに減速する一段ブレーキを採用した新幹線車両において、踏面清掃装置の研摩子摺動面にかじり鉄片の発生が見られることがある。かじり鉄片は車輪の凹摩耗を伴い成長してレールに落下するため、車輪が通過する際に異音や振動が発生するなどの問題の原因となっている。本研究では、原因と対策に向けた台上試験機によるかじり鉄片の再現及び制御手法の検討を行ったので、その内容について報告する。



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