第220回 鉄道総研月例発表会:輸送情報技術に関する最近の研究開発

輸送情報技術の最近の研究開発

輸送情報技術研究部 部長 後藤 浩一

輸送情報技術に関する鉄道総研における研究開発に関しては、鉄道事業の各種業務において情報通信技術を積極的に活用することにより、運営効率、利便性、サービス品質、安全性の向上を図ることを目指して活動を進めている。本発表では、「動的デマンド推定に基づく輸送計画の効率化」、「鉄道における高速大容量情報通信技術の開発」、「設備管理業務へのセンシング技術・ITの適用」の3つの将来指向課題を中心に、最近の研究開発活動の概要を紹介する。


日常生活圏内における新幹線需要予測モデルの開発

輸送情報技術研究部(交通計画) 研究員 柴田 宗典

需要の細かな実態が捕捉されていないため、日常生活圏内における新幹線需要を対象とした需要予測の方法論は確立されているとは言い難い。そこで本研究では、日常生活圏内における新幹線の利用実態の捕捉を目的としたアンケート調査を実施した。その結果、「日常生活圏内の新幹線旅客の多くは他の交通手段から転換した旅客である」等の特性が明らかとなり、他の交通手段から新幹線への転換需要を予測可能な需要予測モデルを開発した。ここでは、日常生活圏内の新幹線需要の特性とともに、開発した需要予測モデルの概要や需要シミュレーション事例を紹介する。


ダイヤ乱れ時の旅客流動推定と運転整理案作成アルゴリズム

輸送情報技術研究部(運転システム) 研究員 國松 武俊

ダイヤ乱れ時の運転整理は、旅客流動を考慮し、利用者の迷惑を最小限に抑える必要がある。しかし、従来、ダイヤ乱れ時の旅客流動の推定は困難で、ある運転整理案を実施したとき、どの程度の迷惑が利用者にかかるのかが把握できなかった。本研究では、ダイヤ乱れ時における利用者の案内情報取得、他経路への迂回を考慮した旅客流動推定手法、旅客流動を考慮した運転整理案作成手法を構築した。これらの手法に基づく旅客流動推定システム「列車運行・旅客行動シミュレータ」、および運転整理案作成アルゴリズムの内容と効果について紹介をする。


貨物列車を対象とした機関車・乗務員運用整理案の作成手法

輸送情報技術研究部(運転システム) 研究室長 福村 直登

長距離運行が多い貨物列車では、ある地域の輸送障害の影響が波及し全体のダイヤが大幅に乱れることがあるが、機関車・乗務員の運用整理は経験を積んだ担当者の手作業に委ねられており、業務負担の軽減と迅速化が望まれている。そこで本研究では、数理最適化技術に基づき運用整理案を作成する手法を開発した。障害事例による検証により、短時間で妥当な整理案が得られることを確認したため、その内容について紹介する。


シリーズハイブリッド車両に対応した運転曲線作成システムの開発

輸送情報技術研究部(運転システム) 主任研究員 山下 修

シリーズハイブリッド車両は、エンジンで発電した電力を蓄電池に蓄え、モータを駆動する車両である。回生電力の活用により省エネ効果が高いという特徴がある。しかし、引張力が充電状態によって変化することから、従来の方法では運転曲線の作成が困難であった。本発表では、他のハイブリッド形式車両にも応用が可能な手法を用いて車両機器のモデル化を推し進め、「省エネ効果と運転時間を評価することを可能としたシリーズハイブリッド車両の運転曲線作成システム」を開発したので、その概要について紹介する。


終電時間帯における旅客案内業務支援システム

輸送情報技術研究部(旅客システム) 研究員 中川 伸吾

大都市圏における終電時間帯の接続に関する業務は、鉄道ネットワークの複雑性、通常時間帯との運行状況の変化等により、勤務者にとって負荷が大きくなっている。そこで、指令員による接続業務、駅社員による旅客案内業務の支援について研究してきた。本発表では、その中で開発した駅社員の業務支援システムについて紹介する。本システムは、特定の発駅からの一定路線区間への到達可否情報を路線図によって網羅的に表示することにより、駅社員が旅客に対して有益かつ迅速な案内ができるように支援するものである。


保守区向け勤務計画自動作成システムの開発

輸送情報技術研究部(設備システム) 主任研究員 佐藤 紀生

保守区における勤務予定表作成業務は多くの場合人手で行っており、さらに多岐にわたる条件を考慮する必要があるため多くの時間を費やしている。そこで、勤務予定表をパソコンによって自動作成するシステムを開発した。本システムは、各種操作機能と帳票出力機能および考慮すべき条件を満たした予定表を出力する機能を持っている。本発表では、開発したシステムの概要およびケーススタディによる計算時間評価実験の結果について紹介する。


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