第222回 鉄道総研月例発表会:環境工学分野に関する最近の研究開発

環境工学分野に関する最近の研究

環境工学研究部 部長 飯田 雅宣

鉄道の環境問題には、騒音、振動、低周波音、電磁場、駅の衛生環境など、さまざまな課題がある。列車の速度向上、輸送力の増強に際しても、環境に対する負荷を小さくし,環境に優しい快適な鉄道の実現をはかることが重要である。ここでは,現在、鉄道総研が取り組んでいる環境問題に関する研究の全般を概説する。


鉄道施設内の衛生環境評価

環境工学研究部 生物工学 主任研究員 川ア たまみ

鉄道利用者に対する意識調査の結果によると、駅空間の快適性に影響を与える要因として、においなどの空気環境を重要視していることが明らかとなっている。このため、駅構内の衛生環境を定量的に評価することが重要と考え、研究を進めている。これまでに利用者の意識調査、空中浮遊微生物調査、及び鉄道施設内で採取した微生物が放出するにおい物質の分析を試みているので、その結果を紹介する。


在来線切妻車両の空力特性向上策

環境工学研究部 空気力学 主任研究員 佐久間  豊

先頭部端部に丸みのほとんど無い車両の場合、丸みの大きい車両と比較して、空気抵抗、トンネル突入時の圧力変動などが増大する傾向にある。この増加の原因は、先頭部付近の大規模な流れのはく離により見かけの車両断面積が増大したためと考えられる。そこで本発表では、風洞実験、模型実験、現車試験による実態の把握と,はく離を効率良く抑制できる先頭部端部の丸み形状、および、付加物の検討結果について報告する。


長大スラブ軌道トンネルに適した緩衝工開口部

環境工学研究部 空気力学 研究員 宮地 徳蔵

長大スラブ軌道トンネルで発生する微気圧波低減のための、最適な緩衝工開口部についての考え方を紹介する。これまでの緩衝工開口部の最適化は、トンネル入口での圧力勾配最大値を低減することを目指していたが、新しい考え方では、圧縮波の長大トンネル伝播特性が初期波形に依存することを考慮しており、さらなる微気圧波低減が期待できる。本発表では、従来の最適開口部決定方法と新しい決定方法による微気圧波低減効果の比較例を示す。

多孔質材貼付による集電部空力騒音の低減

環境工学研究部 騒音解析 研究員 末木 健之

高速鉄道車両の空力騒音低減のためには,部材の簡素化や形状の平滑化という方法が主に用いられているが,機能上の問題や空力特性等の制約から大きな形状変更が困難な場合がある。そこで,多孔質材を物体表面に貼付することにより,形状変更をあまり必要としない空力騒音低減手法を提案した。円柱による基礎試験を経て集電部への適用を試み,これらの空力騒音の低減が可能であることを風洞試験により明らかにしたので,その内容について紹介する。


動的連成解析に基づく軌道の不整と地盤振動の関係の検討

防災技術研究部 地質 主任研究員 横山 秀史

列車走行により沿線で生じる地盤振動に影響する要因の一つに、軌道の不整(軌道変位、レール頭頂面の凹凸)が考えられる。近年、比較的土被りの小さい在来線トンネルにおいて、レール頭頂面の凹凸により地盤振動が顕著に増大した事例が報告され、その影響が無視できない場合があることが確認された。ここでは、車両・軌道・構造物系の動的解析モデルを作成し、軌道の不整と地盤振動の関係について新幹線を対象に検討した結果について紹介する。


レール防音材の開発

材料技術研究部 防振材料 主任研究員 半坂 征則

従来よりレール/車輪間で発生する転動騒音に対して簡単に施工ができる有効な対策の開発が求められてきた。そこで、内層に軟質の発泡エチレンプロピレンゴム、外層に制振鋼板を積層した構造からなるレール防音材の開発を行い、営業線において効果確認試験を行った。開発した防音材は簡単に施工できるうえに、着脱可能であるため、施工後のレール点検等のメンテナンスも容易である。ここでは、今回開発したレール防音材の特性および現地での検証結果を紹介する。


転動音における軌道・車両に係わるパラメータの影響に関する検討

環境工学研究部 騒音解析 主任研究員 北川 敏樹

在来線における騒音の主な構成要素の一つは、転動音騒音である。転動音は、車輪・レール面上の凹凸により両者の間に相対的な変位を生じ、車輪・レールが振動することによって発生する。本発表では、転動音に関する評価を行うために構築した車輪・レール系の振動・放射音モデルを紹介し、さらに、このモデルを用いて軌道パッドの剛性などの軌道・車両に係わるパラメータが転動音に与える影響を解析した結果について報告する。



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