第223回 鉄道総研月例発表会:浮上式鉄道技術に関する最近の研究開発

浮上式鉄道技術の研究開発と在来方式鉄道への技術応用

浮上式鉄道技術研究部 部長  高橋  潔

平成19年1月に山梨実験線の延伸計画を盛り込んだ「超電導磁気浮上式鉄道の技術開発基本計画」が承認され、鉄道総研では車両運動シミュレーション、高温超電導材料の適用研究や地上コイルの基礎研究等を行っている。本講演では、浮上式鉄道技術に関する研究開発と、超電導技術やリニアモータ技術をベースに進めている“在来方式鉄道への技術応用”に関する研究について、その概要を紹介する。


次世代高温超電導線材の浮上式鉄道用超電導磁石への適用検討

低温システム 主任研究員  小方 正文

次世代高温超電導線材(次世代線材)は、これまでの高温超電導線材と比較して、電気的特性の他に機械的特性にも優れた、現在盛んに性能向上の開発が進められている材料である。この次世代線材の適用により、従来よりも簡素な構造で信頼性の高い浮上式鉄道用超電導磁石の構成が可能となる。そこで、次世代線材の通電特性試験ならびに次世代線材を用いた小型レーストラックコイルの製作と通電特性試験を実施し、基礎的な特性を把握したので報告する。


浮上式車両の乗り心地改善のための振動抑制に関する研究

電磁力応用 主任研究員  鈴木 江里光

浮上式鉄道の車両運動特性解明や振動抑制手法の研究に関しては、計算機シミュレーションと、車両模型実験装置による試験を中心に進めている。本発表では、振動抑制手法の一例として、先頭車両の振動情報を用いて制振効果を向上させる2次支持系の制御と、付加的な電磁発生力を用いた1次支持系の振動制御を組み合わせた制振システムについての計算結果を報告し、模型実験による検証結果を紹介する。


FRPブッシュを適用した推進浮上案内兼用コイルの応力評価

電磁路技術 主任研究員  松江  仁

超電導磁気浮上式鉄道用では、莫大な数の地上コイルが屋外で長期間にわたり使用されるため、地上コイルには、高い耐久性が求められる。地上コイルの締結部付近は一般的に応力が集中しやすい箇所となるため、締結部の開発は地上コイルの重要な課題であり、現在、締結ボルトの軸力低下防止と締結部周囲の応力集中緩和を目的として、FRPブッシュの開発を進めている。このFRPブッシュを締結部に適用した地上コイルを試作し、電磁力等により締結部周囲に発生する応力特性を確認したので、その結果を紹介する。


ITを活用した地上コイルの保守管理手法に関する検討

電磁路技術 研究室長  鈴木 正夫

膨大な数が対象となる地上コイルの安定運用に際しては、定期的な保守作業により安全性を確保する必要がある。そのため、適正かつ簡易な保守運用管理手法の確立が、保守コスト低減やシステムの信頼性を確保する上で極めて重要であると考えられる。本発表では、ICタグを利用した地上コイル個別情報管理手法並びに、トラブルの未然防止を目的とした地上コイル自己診断手法の開発状況について紹介する。


フライホイール用超電導バルク体磁気軸受の基礎技術開発

低温システム 主任研究員  清野  寛

鉄道用フライホイール蓄電装置の軸受に適用することを目指し、超電導バルク体と超電導磁石を組み合わせた磁気軸受の技術開発を行っている。その第一段階として、液体窒素冷却した超電導バルク体と超電導磁石で構成する試験用スラスト磁気軸受を製作し、その特性試験を実施した。本発表では、この特性試験結果について報告する。


超電導磁気センサーによるレール白色層の検出

低温システム 研究員  宮崎 佳樹

鉄道用レールには、車輪との接触面に白色層と呼ばれる硬化層周辺に微小き裂が発生する場合があり、これらがレール頭頂面のはく離やレール破断を引き起こすことがある。本研究では、白色層の検出手法として超電導磁気センサー(SQUID)による非破壊検査の検討をしており、実レールサンプルの白色層検出が可能であることを確認したので報告する。


リニア技術を応用したレールブレーキの基礎検討

電磁力応用 副主任研究員  坂本 泰明

非粘着ブレーキの1つに渦電流レールブレーキがある。これにリニアモータ技術を応用することによって課題となっていたレールの発熱を低減し,且つ,電源喪失時でもレールブレーキの動作に必要な励磁電力を確保できるようになる可能性がある。本発表ではリニアレールブレーキの開発における電機子やインバータ制御などの要素技術への取組み及び基礎的な試験を行った結果を報告する。



第223回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2009 Railway Technical Research Institute