第225回 鉄道総研月例発表会:車両技術に関する最近の研究開発

車両関係の最近の研究開発

車両制御技術研究部 部長 小原 孝則

鉄道総研では、「信頼性の高い鉄道」「利便性の高い鉄道」「低コストの鉄道」「環境と調和した鉄道」という目標のもと、研究開発を進めている。車両関係でもこれらの目標の実現のため、さまざまな研究開発を行っている。ここでは、最近の車両関係の研究開発の概要を紹介する。


燃料電池・バッテリーハイブリッド試験電車の開発

車両制御技術研究部 動力システム 研究室長 山本貴光

鉄道総研では非電化区間を走行する車両の代替として燃料電池車両の開発を行っている。今回は新たにバッテリーを搭載して燃料電池・バッテリーハイブリッド構成とした。本発表では、燃料電池・バッテリーハイブリッドの機器構成、制御方法および走行試験結果の概要について報告する。


架線・バッテリーハイブリッドLRVの車両試験台試験

車両制御技術研究部 駆動制御 研究員 末包洋士

鉄道総研が開発した架線・バッテリーハイブリッドLRVは、軌道線だけでなく、鉄道線にも乗り入れ、相互直通運用が可能な車両である。2007年度には軌道線の営業線において、各種性能確認を行った。2008年度は、鉄道線走行の前段として、車両試験台において速度80km/hまでの高速台上試験を行い、その性能特性、ハイブリッドモード、バッテリーモードによる連続走行でのエネルギー回収率・各機器の温度特性を測定した。その結果、鉄道線走行でも十分な駆動性能を有することを確認したので報告する。


HILS用車両運動モデルの構築と検証

車両構造技術研究 走り装置 主任研究員 真木 康隆

HILS(Hardware In the Loop Simulation)用車両運動モデルについて,ブロックダイアグラム形式を特徴とするプログラミングツールを用いて構築し,その精度向上のために実車両を用いた周波数応答試験によるパラメータ同定を実施した。さらに同定値を車両モデルに組込み,実軌道不整データによる強制変位試験を実車両および車両モデルに対してそれぞれ実施した。本発表では車両モデルの構造,強制変位試験結果などについて報告する。


アシスト操舵システムの開発

車両構造技術研究部 車両振動 主任研究員  鴨下 庄吾

外部からの操舵力の補助により台車の曲線通過性能を向上させるシステム(アシスト操舵システム)の開発を行っている。ボルスタレス台車の台車枠−軸箱間に空気圧アクチュエータを組み込み、曲線位置に合わせて輪軸の自己操舵性を補助するように操舵制御力を付加する。最大操舵力には制限を加え、非制御時には通常の軸箱前後支持剛性を確保できるため、フェイルセーフ性が高い操舵方式である。このアシスト操舵システムの基礎的な試験結果について報告する。


空気ばね装置の非線形モデルによる車両の曲線通過シミュレーション

車両構造技術研究部 車両運動 主任研究員 下澤 一行

鉄道車両の空気ばね装置には自動的に車体床面高さを保つための高さ調整装置弁が備わっており、急曲線を低速で走行する車両の挙動を考える際には高さ調整弁を無視することができない。今回、在来線で使用されている2種類の高さ調整弁をモデル化し、かつ非線形空気ばねモデルを用いた曲線通過シミュレーションを実施し、高さ調整弁の特性の違いによる車両の挙動の比較検討等を行ったので報告する。


模型実験によるスノープラウの排雪抵抗力評価方法

鉄道力学研究部 車両力学 研究員 中嶋 大智

相似則にもとづいて,模型実験結果から実車スノープラウの排雪抵抗力を評価する方法について検討し,従来から行われている面積比から換算する手法に比べて,排雪抵抗力を高い精度で計算する手法を考案した。縮尺の異なる模型プラウ(縮尺1/10,1/6.7,1/5)による排雪試験を行い,縮尺1/10,1/6.7の排雪抵抗力を縮尺1/5相当へ換算し,縮尺1/5の試験結果と比較することによって,相似則の妥当性を確認した。


超電導主変圧器の実用化に向けた特性向上

車両制御技術研究部 主任研究員 上條弘貴

2004年度まで実施した超電導主変圧器の試作、試験の結果を受け、実用化に向けた課題とされる交流損失の低減および1kW級冷却システムの確立に向けて、交流損失低減対策を施した幅狭Bi系超電導線や1kW級パルス管冷凍機の研究開発を進めてきた。その結果、交流損失は、今回目標とした2004年度試作器の交流損失の約1/2程度に低減できること、1kW級のパルス冷凍機の製作が可能であることを確認した。本発表では、これまで得られた成果を報告するとともに、さらなる交流損失の低減など、今後の実用化に向けた課題を紹介する。



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