第229回 鉄道総研月例発表会:電力技術に関する最近の研究開発

電力技術に関する最近の研究開発

電力技術研究部 部長 長谷 伸一

将来の電力技術の発展に寄与する最近の鉄道総研の研究開発計画の概要を「電力」、「電車線」および「パンタグラフ」の観点から紹介する。また、最近の研究開発課題のひとつとして地上用電力貯蔵装置に触れ、これまでの鉄道総研の研究開発の経過、成果の概要に加え、内外の技術動向について紹介する。


電柱振動抑制の研究

電力技術研究部 主管研究員 網干 光雄

架線を支持する電柱と高架橋との共振現象により,中規模地震においても架線振動に起因する事故や,日常の列車走行時の振動による架線金具損傷などが発生している。そこで電柱の耐震性能向上及び架線の振動抑制を目的に,電柱に減衰機能を付加して共振周波数付近での振動を抑制する手法を提案した。本発表では,電柱制振器を試作して電柱制振特性を解析するとともに,実スケール電柱を用いた実装加振試験を行ってその効果を確認した結果を報告する。


電車線の支持点における張力抑制抵抗の評価と集電特性への影響

電力技術研究部 電車線構造 研究員 常本 瑞樹

電車線は良好な集電性能を維持するため、その張力は一定であることが望ましい。しかし、電車線を支持している様々な金具の摩擦力など抑制抵抗と呼ばれる抵抗力により、その箇所の両側で多少の張力差が生じる。本研究では、電車線の張力・移動量測定、支持滑車の回転摩擦力測定などにより支持点における抑制抵抗を評価し、さらに、架線-パンタグラフ走行シミュレーションにより、この抑制抵抗が集電特性へ及ぼす影響について検討したので報告する。


交流用同相セクションの機械的特性改善

電力技術研究部 集電管理 研究室長 菅原 淳

交流電化区間の同相セクションではスライダ破損やトロリ線疲労破断の機械的要因による事故例があり、電車線設備の弱点箇所となっている。そこで、現行形セクションの事故例を踏まえたトロリ線疲労防止策を提案するとともに、しゅう動面高さ調整操作が低減可能で、かつ列車走行方向性がないスライダ支持構造を検討し、パンタグラフ走行試験で実用化の可能性を確認したので報告する。


営業線実態調査に基づくトロリ線摩耗予測式

鉄道力学研究部 集電力学 副主任研究員 臼田 隆之

架線系の最適な架設状態を決定する上で重要となるトロリ線摩耗の進行予測を可能にするため、新幹線営業線にて通過するパンタグラフの接触力と離線アークを測定し、測定されたパンタグラフの接触力と離線アークをトロリ線の摩耗進行状況と照合することにより、トロリ線摩耗予測式の検討を行った。本発表では、構築したトロリ線摩耗予測式および実測データとの照合に対する評価について報告する。


紫外線検出式離線測定装置の開発

電力技術研究部 電車線構造 副主任研究員 早坂 高雅

離線時のアーク光を検出する光学式離線測定装置は、可視光線を検出している。しかし、この装置は測定精度が周囲の明るさに影響されるため、測定は夜間に限られている。そこで昼間でも測定が可能な装置として、紫外線を検出して離線を測定する装置を開発した。開発した装置は受光部に紫外線を可視光線に変換するアダプタを装着することで、コストを低減している。本発表では、開発した装置の概要および検証試験結果を報告する。


交流き電回路用故障点標定装置の開発

電力技術研究部 き電 主任研究員 安喰 浩司

故障点標定装置は、き電回路故障時に故障点を特定するもので、早期復旧のために必要な装置であるが、現用の交流き電回路の故障点標定装置は、標定誤差が1km程度であり、さらなる標定誤差の短縮が望まれている。そこで、故障時に故障点で発生するサージが変電所とき電区分所に達するまでの時間から故障点を標定する手法を提案し、フィールドでのインパルス発生器を用いた基礎試験および人工故障試験の結果から、故障点を100m程度にすることが可能であることを確認したので報告する。


電鉄用変電所が発生する電磁界解析と低減対策

電力技術研究部 き電 研究員 森田 岳

変電所周辺で発生する低周波電磁界に関して、国内では「電磁界情報センター」が設立される等、電磁界問題の解消に向けたに調査や情報提供が進められているが、低周波磁界は低減が困難なため、変電所設計段階で発生量の予測、低減対策が重要である。そこで、電鉄用変電所が発生する磁界解析手法を提案するとともに解析式に基づく低減対策について検討を行ったので報告する。



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