第230回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

構造物に関する最近の研究開発

構造物技術研究部 部長 舘山勝

構造物技術に関する研究開発では、技術基準整備、性能や経済性に配慮した工法や設計法の開発、延命化や耐震補強などの構造物の維持管理・耐震に係る技術開発などを中心に取り組んでいる。ここでは、鉄道総研が取り組んでいる構造物技術に関する研究開発の中から最近の話題を紹介するとともに、今後の展望について解説する。


線路上空建築物の中高層化に対応した構造設計法

構造物技術研究部(建築)副主任研究員 山田聖治

線路上空を利用した建物の構造設計に関しては、高さ20m以下の建物を対象とした構造設計標準が制定され、橋上駅などの低層建物に数多く適用されてきた。しかし、線路上空空間の高度利用に対するニーズが高まる中、高さ20mを超える場合の設計手法の確立が求められるようになった。そこで、構造解析などによる技術的な検討結果に基づき大地震時においても耐震性能を十分確保するための規定や照査方法を新たに定め、高さ31mまで対応した構造設計法を提案したので紹介する。


鋼繊維コンクリートを用いたラーメン高架橋の部材接合構造の開発

構造物技術研究部(コンクリート構造)副主任研究員 田所敏弥

耐震設計で考慮する地震力の増大にともない、ラーメン高架橋の接合部においては、鉄筋量が増大し、施工が難しいこともある。そこで、鋼繊維コンクリートを用いた合理的な部材接合構造を開発した。本開発では、鋼繊維の補強効果を定量的に評価し、鋼繊維コンクリートを用いた接合部の設計法を提案した。また、鋼繊維コンクリートを用いた部材接合構造によって、接合部内の帯鉄筋が省略できるとともに、フックの省略または、定着長の削減が可能になることを試設計により確認した。ここではその内容について紹介する。


セメント改良礫土を用いた軟弱地盤上の盛土構築方法

構造物技術研究部(基礎・土構造)副主任研究員 渡辺健治

通常のセメント改良土は不良土に対する安定処理に用いられるが、良質な礫材をセメント安定処理した場合(セメント改良礫土)には強度が飛躍的に高まる。さらに、このセメント改良礫土にジオグリッドを併用した複合材料は曲げ抵抗を有し、軟弱地盤上の盛土建設において盛土下のスラブ版として用いることにより、地盤改良率を大幅に低減できる。本講演では、セメント改良スラブ版に関する研究内容、設計方法、JRの盛土建設現場での適用事例について紹介する。


既設鋼下路桁における疲労変状のメカニズムおよび対策方法

構造物技術研究部(鋼・複合構造)副主任研究員 小林裕介

既設の鋼鉄道橋は半数以上が経年で60年を超えており、疲労や腐食といった変状が生じているものがある。特に、縦桁・横桁連結部から発生する疲労き裂は、進展が早く、列車の走行を支障する可能性があることから、効果的な補強方法が求められている。そこで、この疲労き裂に関して、き裂発生のメカニズムと対策方法について検討を行なったので、その結果を報告する。


鋼矢板を用いた既設基礎の簡便な耐震補強工法

構造物技術研究部(基礎・土構造)研究室長 神田政幸

既設基礎の耐震補強工事は、補強対象が地中にあるため、従来の増し杭工法や地盤改良工法では多大なコストと時間が必要となる。そこで、既設基礎の周囲に鋼矢板を打設し鋼矢板と既設基礎を増しフーチングにより一体化させる簡便で経済的な耐震補強工法を開発した。1/10模型を用いた模型実験により、既設杭に発生する断面力が半分程度に低下し、耐震性が向上することを確認した。また、その補強メカニズムを取り込んだ骨組み解析モデルを提案し、試設計を行った。本発表では、これらの結果について紹介する。


盛土中に埋設された橋脚の耐震性能評価法

構造物技術研究部(耐震構造)研究室長 室野剛隆

地盤中に埋設された橋脚や、盛土地盤中に構築された橋脚の地震時挙動に関しては、未解明な部分が多く、耐震補強の要否を検討する場合にも問題になることが多い。そこで、盛土地盤中に建設された橋脚を対象として、実験的および解析的手法を用いて、盛土と橋脚の動的相互作用の影響を解明した。この結果をもとに、耐震性能評価の考え方について検討を行ったので紹介する。


山岳トンネルの地震被害メカニズムと耐震性能評価

構造物技術研究部(トンネル)副主任研究員 野城一栄

地震時の山岳トンネルの被害メカニズムの把握は、耐震性を検討する際に非常に重要である。そこで、地震被害事例の形態を分類し、震源からの距離とトンネルの被害との関係、地質条件、構造条件が地震被害に与える影響を明らかにして被害メカニズムを構築し、模型実験によりその検証を行った。さらに、山岳トンネルの耐震性能の評価を行い、山岳トンネルの耐震性向上のための方策について検討した。本発表では、被害メカニズムおよび耐震性向上方策について報告する。



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