第236回 鉄道総研月例発表会: 鉄道の将来に向けた研究開発−信頼性の高い鉄道/利便性の高い鉄道−

鉄道の将来に向けた研究開発(総論)

企画室 室長 木谷日出男

鉄道の将来に向けた研究開発(将来指向課題)は、概ね5年から10数年先の実用化を念頭に置き、鉄道事業者のニーズや社会動向などに応え、先行的な技術開発や鉄道の将来を指向する研究課題として、技術分野の垣根を越えて横断的に進めてきた。ここでは、将来指向課題の推進体制などを含め、全体の概要を紹介する。


ハイブリッドシミュレータによる車両特性評価法の開発

車両構造技術研究部 部長 佐々木君章

HILS(Hardware In the Loop Simulation) 技術を核として、シミュレーション、部品試験機、車両試験台を有機的に結び付け、仮想的な走行試験環境を実現することで、車両特性評価、車両開発効率の飛躍的な向上を実現するシステムの開発を行った。また、台車の性能を試作前に大まかに評価することが可能な「ラピッドプロトタイプ台車」を開発した。ラピッドプロトタイプ台車を含むシステム全体の性能と、これによる評価法等について報告する。


既設鉄道施設の耐震性評価と対策

構造物技術研究部 主管研究員 佐藤 勉

鉄道システムは、土木構造物、建築物、電力設備、軌道、車両など、多くの要素で構成されているため、これまで地震時の挙動評価や対策をそれぞれ個別に検討してきた。そこで、共通の考え方で評価するため、地震動の設定、要素間の相互作用を考慮した地震時挙動の評価法、耐震対策とその効果の評価法、および施すべき耐震対策を判断するための手法を開発したので報告する。


設備管理業務へのセンシング技術、ITの適用

輸送情報技術研究部 部長 土屋隆司

センシング技術や情報通信技術の活用することで、設備管理保守業務の支援、効率化が期待できる。そこで、構造物、分岐器、橋梁基礎等を対象とした各種のセンシング、ヘルスモニタリング技術を開発した。これらの技術を用いた各設備のヘルスモニタリング手法および、これらを統合するデータ伝送システムや設備情報管理システムについて紹介する。


RAMSによる信号システムの評価と構築

信号通信技術研究部 部長 渡辺郁夫

安全性以外のアベイラビリティなどの要素も考慮した総合的なシステム評価手法として、信号システムを対象としたRAMS指標に基づく評価手法とシステム構成手法を提案したので、これらについて紹介する。また、RAMS性能の向上が期待される新しい概念の信号システムの機能と構成について述べる。


鉄道における高速大容量情報通信技術の開発

輸送情報技術研究部 旅客システム 研究室長 松原 広

鉄道環境に適した大容量モバイルネットワークを構築することで、旅客サービスの高度化や設備保守管理の効率化が期待できる。この実現に必要な要素技術と応用技術について検討した。ここでは、鉄道用高速大容量通信システムの実現方法としてレーザ光を用いた光通信システムを開発したので、そのシステムの概要と試作システムによる試験結果等について紹介する。


動的デマンド推定に基づく輸送計画の効率化

輸送情報技術研究部 主任研究員 福村直登

利用者のデマンドを的確に把握・予測し、それに対応した適切な輸送計画を作成することで、利用者に提供する輸送サービスの水準を保ちつつ、経営資源の効率的使用も達成できる可能性がある。そこで、自動改札機の通過履歴データ等を用いた利用者デマンドの予測手法、デマンド変動に対応した輸送計画とダイヤ乱れ時の運転整理案作成手法、及び輸送計画評価システムを開発した。これらについて報告する。


ヒューマンシミュレーション技術の鉄道への適用

人間科学研究部 部長 鈴木浩明

人間の心理や行動のシミュレーション技術を活用して、鉄道の従業員や旅客の安全性・快適性向上に資する評価手法の開発に取り組んだ。本報告ではプロジェクトの概要を紹介した上で、運転士の異常時対応能力向上プログラムの提案、駅シミュレータの開発、駅の旅客流動評価シミュレーションや避難誘導シミュレーションの開発などの代表的成果について報告する。



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