第237回 鉄道総研月例発表会: 鉄道の将来に向けた研究開発−環境と調和した鉄道/低コストの鉄道−

鉄道の将来に向けた研究開発(総論)

企画室 室長 木谷日出男

鉄道の将来に向けた研究開発(将来指向課題)は、概ね5年から10数年先の実用化を念頭に置き、鉄道事業者のニーズや社会動向などに応え、先行的な技術開発や鉄道の将来を指向する研究課題として、技術分野の垣根を越えて横断的に進めてきた。ここでは、将来指向課題の推進体制などを含め、全体の概要を紹介する。


燃料電池車両の開発

車両制御技術研究部 主管研究員 秦 広

燃料電池は水素を燃料とするクリーンで高効率な電源として注目されている。この燃料電池を鉄道車両に適用するためには、小型・軽量化や電源特性の確認など多くの検討事項がある。これらの課題の解決に取り組み、鉄道車両に搭載可能な100kW級燃料電池を導入した。さらに、リチウムイオン二次電池とのハイブリッド電源による走行試験を実施する段階まで開発が進んだ。これらの開発経緯や走行試験結果等について報告する。


在来方式鉄道へのリニア技術の適用

浮上式鉄道技術研究部 部長 岩松 勝

浮上式鉄道の開発で培った超電導及びリニアモータ等の先端技術を在来鉄道へ応用展開するため、超電導磁気軸受を用いた鉄道用フライホイール蓄電装置、リニアモータを応用したレールブレーキ、超電導磁気センサを用いたレールの非破壊検査手法等の開発を行ったので、これらの概要を報告する。


転動音・構造物音の予測ツールと低減対策法の開発

環境工学研究部 部長 飯田雅宣

転動音および構造物音は鉄道騒音の主要な音源であり、沿線騒音を低減するためには、新幹線、在来線を問わず、これらの音の低減がその鍵を担っている。そこで、転動音および構造物音に関する多くの物理的現象を解明し、それらを取り込んだ形の転動音および構造物音の予測・評価手法を開発したので報告する。また、これらの騒音に対する低減策についても報告する。


省保守・低騒音新型式軌道の開発

軌道技術研究部 部長 石田誠

少子高齢化による労働力不足、騒音・振動の環境問題および運営コストの縮減は、鉄道事業者にとって重要な課題である。これらの課題に軌道の構造・施工・管理の側面から応えるために、レール埋込型軌道をベースとして、メンテナンスコストの最小化を指向した次世代軌道構造を開発したので報告する。


レール損傷・バラスト軌道劣化モデル構築と保守低減技術評価

鉄道力学研究部 軌道力学 研究室長 名村 明

車両走行に伴う軌道の劣化予測を目指し、車輪/レールの転がり接触疲労を考慮したレール損傷モデルとバラスト軌道の動的挙動を再現する3次元粒状体モデルを開発した。これらのモデルを活用して既存の軌道構造を評価し、線区の条件に応じた保守コスト低減のための設備改良案を提示したので、その内容を紹介する。


高速安定集電に向けた架線・パンタグラフ系の構築

電力技術研究部 部長 長谷伸一

営業速度300km/h超に伴い、著大接触力や大離線に伴うトロリ線損耗が増加し、保守作業量の増大が予測される。本テーマでは集電系の弱点要素を削減し、トロリ線の損耗抑制、保守作業量の低減、メンテナンスコスト増加の抑制を図ることを目的に、現状の300km/hと同等な接触変動を維持し、局部摩耗が発生しにくい架線・パンタグラフ系の提案、疲労を軽減したトロリ線の開発、新しい評価・保守手法を構築したので報告する。



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