第238回 鉄道総研月例発表会: 車両技術に関する最近の研究開発

最近の車両の研究開発の話題

車両制御技術研究部 部長 小原 孝則

鉄道総研では、平成22年度より新しい基本計画のもと「安全性の向上」、「環境との調和」、「低コスト化」、「利便性の向上」の4つの目標を持ち、研究開発を進めている。そこで、それに則った車両関係の研究開発の進め方を概説するとともに、最近の研究開発成果の一部を紹介する。


ディーゼルハイブリッド車両用運転シミュレータの開発

動力システム 主任研究員 中村 英男

ディーゼル車両のエネルギー消費量削減策の1つとして、蓄電池とディーゼルとのハイブリッド車両が投入されつつある。ディーゼルハイブリッド車両のシステム検討に当たっては、様々なシステム構成案に対し、車両の走行線区、運転条件などの各種条件下における運転時分、エネルギー消費量を計算し、省エネルギー効果などを定量的に評価する必要がある。そこで、ディーゼルハイブリッド車両用運転シミュレータを開発したので、本発表ではシミュレータの概要について紹介する。


すべり率滑走制御の最適化による減速度の向上

ブレーキ制御 副主任研究員 中澤 伸一

在来線列車の非常ブレーキ距離は600m以下とするよう省令の解釈基準に示されており,低粘着条件下でも安定した高いブレーキ力の確保が要求される。制動距離の延伸を抑制する制御方式の一つとして「すべり率滑走制御」があるが,制御の性能を十分に発揮できていないことが分かった。本発表では,新たに開発した,目標となるすべり率までの滑走をより活用してブレーキ距離の短縮を図る「目標すべり率滑走制御」について,現車試験による結果と併せて報告する。


交流電車のパンタグラフ上昇時に発生するサージ電圧の抑制対策

駆動制御 主任研究員 廿日出 悟

交流電車のパンタグラフ上昇時に、サージ電圧が発生して車上機器が損傷する事象がときどき発生している。これは発生する車体のサージ電圧が高圧引通し母線導入により上昇したのに加え、耐電圧の低い電子機器が車両に広く採用されたことが原因と考えられる。そこで本発表では、車体のサージ電圧抑制対策として、サージ電圧を低減するための接地回路の考え方や、サージ電圧による損傷を軽減する電子機器取付方法について、一連の成果を報告する。


空気ばね並列油圧ダンパの減衰力制御による車体上下振動低減

車両振動 主任研究員 菅原 能生

軌道不整が比較的大きい線区を走行する鉄道車両では,車体の上下剛体モードの振動が乗り心地に大きく寄与している場合がある。このような車体の剛体モードの振動を低減するために,可変減衰油圧ダンパを空気ばねと並列に取り付け,車体の振動に応じてこのダンパの減衰力を制御することにより車体の振動を抑制するシステムを開発した。本発表では,このシステム構成の概要と,在来線で実施した走行試験について述べ,本システムが実際の車両に対して有効に機能し,乗り心地向上効果が得られることを示す。


制御付きボギー角連動誘導操舵台車の開発

車両振動 主任研究員 鴨下 庄吾

ボギー角連動誘導操舵台車は振子特急気動車として実用化されており、円曲線区間での横圧低減に寄与している。ただし緩和曲線区間では、幾何学的に構成される台車ボギー角と軌道の曲率が整合しないため、必要な横圧低減が達成されていない。そこで、油圧アクチュエータを用いて緩和曲線区間で台車旋回方向に制御力を加え、横圧低減を行うシステム(制御付きボギー角連動誘導操舵台車)を開発した。本発表では、本システムの特徴、制御方法およびその横圧低減効果などについて報告する。


車両の側面圧縮強度特性評価

車両強度 主任研究員 沖野 友洋

従来、踏切事故やオフセット衝突事故を受けて、先頭車および車両端部の衝突安全性に関する技術開発が行われてきているが、側面からの荷重に対する車体強度に関する検討はほとんどなされていない。そこで、本報告では、車両の側面強度特性を評価するため、実物大のステンレス鋼製部分車体を用いた静的圧縮試験を実施した。また、試験体をモデル化したFEM解析を行い、実験結果と比較・検証し、モデルの妥当性を確認したので報告する。



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