第240回 鉄道総研月例発表会: 信号通信技術に関する最近の研究開発

信号通信分野の最近の研究開発

信号通信技術研究部 部長 渡辺 郁夫

鉄道総研では、「安全性の向上」「環境との調和」「低コスト化」「利便性の向上」という目標のもと、研究開発を進めている。信号通信関係でもこれらの目標の実現のため、さまざまな研究開発を行っている。ここでは、最近の信号通信関係の研究開発の概要を紹介する。


無線技術を利用した閑散線区向け列車制御システム

信号 研究室長 平栗 滋人

主に閑散線区で使用されている電子閉そくなどの置換えとして使用できるシステムとして、駅近傍で無線による地上-車上間通信を利用した列車制御システムの開発を進めている。現行システムからの段階的な移行を可能にするとともに、無線利用エリアの拡張によって踏切防護や速度制御機能の実現などの発展性も有するシステムの構成、機能について紹介する。


長大軌道回路の耐ノイズ性能向上

信号 主任研究員 寺田 夏樹

長大軌道回路では車上機器から発生する電流に対する妨害許容値が小さいので、機器の変更を最小限にしつつ許容値を向上する手法について検討を行った。そして室内および現場において検証試験を実施して検討の有効性を確認し、許容値を3倍にできる見通しを得た。本報告では許容値向上の手法について、その考え方および検証結果を紹介する。


シミュレーションによる雷害対策の定量的評価

信号 主任研究員 新井 英樹

現状、フィールド試験により信号設備の雷害対策の効果検証を行っているが、その実施箇所の大地抵抗率や接地抵抗値が検証結果に影響を及ぼすという問題がある。そこで、本研究では、信号設備の中で雷害件数が多いとされる踏切設備を対象とし、雷害対策効果の定量的評価が可能な雷サージ解析モデルを構築した。ここでは、フィールド試験結果との比較によるモデルの妥当性検証結果とシミュレーションによる雷害対策効果の評価結果について発表する。


リスク評価と安全要件管理による列車制御システムのリスク低減

列車制御 主任研究員 岩田 浩司

近年の列車制御システムは高機能化した反面、ネットワーク化・ソフトウェア高依存となり、大規模かつ複雑化している。しかし、鉄道信号の機能に高いレベルの安全性が要求されることに変わりない。そこで、列車制御システムのリスク低減をはかるため、システムのリスク評価、及び、システムに適用すべき安全要件の管理の研究に取り組んでいる。本発表では、リスク評価手法とその適用結果を述べるとともに、システム・ハードウェア・ソフトウェアの安全要件ならびに、新たに提案する安全要件の管理手法を紹介する。


車載型前方監視システムのための画像認識アルゴリズム

信号 主任研究員 鵜飼 正人

車上からリアルタイムで線路内障害物を検知する車載型前方監視システムの開発を進めているなかで、徐行予告信号機や特殊信号発光機を認識する画像処理アルゴリズムについては既に報告している。今回、線路内障害物の形状やテクスチャー、動き、背景との違いなどをそれぞれ評価する複数のサブモジュールにより、総合的に障害物を判定する画像認識アルゴリズムを開発したので、その詳細と検証用映像データを用いたシミュレーション実験の結果について報告する。


メタル回線による長区間データ伝送回線構成の評価手法

信号通信技術研究部 主任研究員 関 清隆

鉄道沿線に敷設されているメタル回線を活用し、複数駅間にわたるデータ伝送回線(xDSLを用いたネットワーク回線など)を構成する事例が増えてきている。このような長区間のデータ伝送回線の導入可否を机上で評価する手法の検討を行い、多段構成を仮想的な一段構成に変換したのち、伝送信号や雑音等の周波数特性を考慮して受信S/N(信号対雑音比)を求める手法を開発した。本発表では、開発した評価手法の概要と、本手法による評価結果の検証例を報告する。


鉄道沿線における地上デジタル放送受信品質の予測評価手法

通信 研究室長 川ア 邦弘

2006年12月に全国で地上デジタル放送が開始され、2011年にはアナログ放送が終了する予定となっている。鉄道沿線での地上デジタル放送の受信品質を把握するためには、現状では時間・コストのかかる実測調査に拠らざるを得ない。そこで、鉄道沿線向けの受信品質予測手法を検討し、無列車時の定常的な受信品質ならびに列車通過に伴う影響を予測計算するプログラムを開発した。本発表では、予測手法の概要と開発したプログラムの機能、計算結果例等について報告する。



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