第247回 鉄道総研月例発表会:輸送情報技術に関する最近の研究開発

最近の輸送情報技術

輸送情報技術研究部 部長 土屋隆司

鉄道の競争力の維持・向上のためには、安全性の確保を前提としつつも、利便性や効率性のさらなる向上を目指すことが必要である。そのためには、各種の最適化技術を用いた業務効率化やIT利用の支援に加えて、顧客満足度の評価技術や利用者行動の分析・モデル化技術等、利用者視点に立った基礎的な技術開発が特に重要である。本講演では、このような利用者視点の開発成果を中心に、最近の輸送情報技術関連の研究開発動向について紹介する。


日々の需要変動に対応した輸送計画作成手法の提案

運転システム研究室 室長 坂口 隆

定期列車と日々の臨時列車によって構成される現行の輸送計画は、利用者にとって覚えやすい反面、日々の需要変動が見込まれても対応が困難であり、結果として車両等の運用効率が低い、一部列車に混雑が集中するといった問題がある。そこで、日別、時間帯別、発着駅別の単位で推定された利用者数に対応した輸送力の確保と、車両・乗務員の効率的な運用を両立する輸送計画作成手法を提案し、試験プログラムによる検証結果を報告する。


通勤線区におけるダイヤ乱れ時の利用者不満モデルの構築

運転システム研究室 主任研究員 平井 力

通勤線区におけるダイヤ乱れは、多くの鉄道利用者に影響を与える。ダイヤ乱れの規模を測る尺度はこれまでに提案されているが、それらは広域的な視点によるものであり、例えば案内の不適切さが個々の利用者の不満にどの程度つながるかを定量的に説明することができなった。そこで、ある通勤線区を対象として、実際にダイヤ乱れを体験した利用者を対象としたインターネット調査を実施し、ダイヤ乱れ時に利用者が感じる不満を定量的に説明可能なモデルを構築したので報告する


旅客の嗜好性を考慮した交通機関選択モデルの開発

交通計画研究室 副主任研究員 柴田 宗典

従来の都市間幹線旅客の需要予測では、旅客は幹線鉄道、自動車、高速バス等の利用可能な全ての交通機関を選択肢として認知しているとの前提に立った交通機関選択モデルが適用されているが、実際には、主に交通機関に対する好き・嫌いといった「嗜好性」等によって交通機関の選択肢が絞り込まれていることがアンケート調査により明らかとなった。そこで、交通機関への嗜好性等により選択肢が絞り込まれるプロセスを考慮した交通機関選択モデルを開発したので報告する。


ICカード乗車券の相互利用に関する標準化動向

旅客システム研究室 主任研究員 明星 秀一

日本では1枚のICカード乗車券で日本の大都市の鉄道を利用できる環境が整いつつあるが、1枚のICカードを様々な地域や交通機関で利用できる「相互運用可能な運賃管理システム」(IFMS)の導入に向けた動きは日本に限られたものではない。2007年には国際標準化機構がIFMSのアーキテクチャの概念モデルの国際規格を発行している。本発表は、IFMSの国際規格を概説し、本規格と日本における相互利用との関係について紹介する。


ID管理方式による出改札システムの開発

旅客システム研究室 副主任研究員 杉山 陽一

地方都市など比較的乗降の少ない駅には、コスト面の制約から、大都市の駅の一般的な自動改札機に比べて簡易な機能の自動改札機が設置されていることが多く、無人駅では特に運賃捕脱が生じやすい傾向にある。そこで、乗車券の識別番号(ID)を管理することで安価に不正を防止することができる改札方式を検討した。ここではID管理方式の一例として2次元コードを利用した出改札システムを考案したので、その内容について報告する。


設備監視における無線センサネットワークのデータ伝送経路設計手法

設備システム研究室 研究員 羽田明生

構造物ヘルスモニタリングで活用される無線センサネットワークにおいては、監視対象となる構造物の設置環境に応じて最適にそのデータ伝送経路の設計を行う必要がある。そこで、本発表では山間部や僻地のような過酷な設置環境にある構造物を取り上げ、センシングデータをゲートウェイに一定期間蓄積し、後日それを回収するといった蓄積運搬型無線センサネットワークのデータ伝送経路設計手法について紹介する。


トンネル内無線センサネットワークの性能評価

基礎・土構造研究室 研究員 阿部慶太

無線センサネットワークシステムを活用した鉄道土木構造物の劣化監視技術の構築を目的に、地下鉄トンネルおよび沿線にシステムを導入して,設備の状態監視に向けた適用性について検討している。本発表では、主にトンネル内で形成されたネットワーク構成とデータ損失量の変化から、当システムの通信特性と性能評価について検討を行ったので、その内容を報告する。



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