第250回 鉄道総研月例発表会:人間科学に関する最近の研究開発

人間科学分野における最近の研究開発

人間科学研究部 部長 鈴木 浩明

鉄道をさらに安全で快適な交通手段としていくためのヒューマンファクタ研究の最近の取組み事例を紹介する。はじめに、ヒューマンファクタ研究全体の特徴を概観した上で、ヒューマンエラー事故防止、駅構内や列車内の快適性、輸送障害時における情報提供、衝撃時の乗客の安全性など、主なトピックを解説する。


指差喚呼のエラー防止効果体感学習ソフト

人間科学研究部 安全心理研究室 主任研究員 重森 雅嘉

指差喚呼はエラー防止のための基本動作の一つであるが、普段の作業の中でその効果を実感することは難しく、実施の不徹底や形骸化が懸念される。そこで本研究では、指差喚呼のエラー防止効果をパソコンで体感しながら、エラー防止の仕組みを学習できるソフトを開発した。また、本ソフトを用いた研修の効果を鉄道会社の研修において検証した。今回は、開発したソフトと検証実験の結果を紹介する。


貨物列車運転士の眠気の発生要因

人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員 鈴木 綾子

運転士の運転中の眠気発生の報告が少なくなく、眠気による事故の防止は古くて新しい重要な課題となっている。そこで、本研究では、貨物列車運転士を対象としたアンケート調査と現車での生理的負担度調査を行い、貨物列車運転士の眠気発生の実態および要因を明らかにした。これらの結果をもとに、「安全運転のための眠気予防対策」冊子を作成したので、その内容について報告する。


ヒューマンエラーのリスク管理支援手法

人間科学研究部 安全性解析研究室 室長 宮地 由芽子

事故が発生するまでには、複数のヒューマンエラーが発生し、それぞれについて複数の要因が影響している。そこで、運転作業や保線作業を対象に、要因に対する対策の優先度を把握するためのリスク管理支援手法の開発に取り組んできた。ここでは、ヒューマンエラーに起因するトラブル事例の分析データを用いて評価する方法とアンケート調査により評価する方法との2つの方法について手続きと結果例を紹介する。


駅空間のにおい物質の化学分析と官能評価

人間科学研究部 生物工学研究室 主任研究員 京谷 隆

駅やホームなど、鉄道施設の快適性に影響を与える因子の一つとして、「におい」がある。本発表では、化学分析と官能評価の2つの側面からにおいの原因を調べる方法とその結果について紹介する。具体的には、GCMS-O(におい嗅ぎ装置付きガスクロマトグラフ質量分析装置)を用いた化学分析の結果と、現場で感じたにおいを表現する「駅においチェックシート」による評価結果について報告する。


運転再開見込み情報の早期案内を促進するための教育訓練手法

人間科学研究部 人間工学研究室 副主任研究員 山内 香奈

人身事故などで列車の運転が停止した際,運転再開見込み情報は,駅や車内の複数の案内ツールで統一して早期に案内し,利用者に主体的に判断してもらうことが不満低減に有効であると,先行研究から明らかになっている。このような案内方法を社員に浸透させるため,推奨する案内方法の有効性を実証的に調べたデータを用いて社員に理解,納得してもらうための訓練教材(DVD)を作成し,試用を通じてその有効性を確認したので紹介する。


高周波振動に対する体感を反映した乗り心地評価法の改良

人間科学研究部 人間工学研究室 主任研究員 中川 千鶴

鉄道の高速化に伴い増加した高周波振動成分が体感乗り心地に影響を与えているが、現行の乗り心地評価法は高周波振動の影響を反映できない。そこで本研究は、様々な振動台実験や走行試験を実施し、高周波振動の影響を反映した乗り心地評価法の改良を提案した。本手法は、新幹線はもちろん在来線にも適用できることを確認したので、その内容について紹介する。


通勤列車踏切事故時の乗客挙動シミュレーション

人間科学研究部 人間工学研究室 室長 小美濃 幸司

サバイバルファクター研究では、万が一列車が衝突した時の乗客被害軽減を目的として、数値シミュレーションを用いた車内安全性の検討を行っている。今回、通勤列車が大型自動車と衝突した際の乗客挙動シミュレーションを実施し、乗客の挙動と傷害の程度から被害低減対策の留意点と対策案を検討した。そこで、その乗客挙動シミュレーション手法を紹介し、適用結果について報告する。


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