第251回 鉄道総研月例発表会:人間科学に関する最近の研究開発

構造物の耐震に関する最近の研究開発

構造物技術研究部 部長 舘山 勝

橋梁や高架橋、盛土や土留め壁、トンネル、建築上家といった鉄道構造物に関する耐震性能評価技術、耐震対策技術について、各種の研究開発を行ってきた。ここでは、今回の東北地方太平洋沖地震のような巨大地震への対応を含め、最近の耐震に関する研究開発について紹介するとともに、今後の動向について展望する。


東北地方太平洋沖地震の地震動の特徴と構造物への影響

構造物技術研究部 耐震構造研究室 室長 室野 剛隆

日本の地震観測史上、最大のマグニチュード9.0を記録した東北地方太平洋沖地震について、現在公開されている強震記録に基づき、過去の地震動との比較や設計地震動との比較の観点から、今回の地震の特徴と構造物への影響について報告する。


部材角測定装置を用いた高架橋群の地震被害評価システムの開発

構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員 仁平 達也

地震時における高架橋柱の損傷評価の精度向上とダウンタイムの短縮を目的として、鋼板巻き補強され内部の調査ができない柱も含む、RC ラーメン高架橋柱の損傷レベルを評価する部材角測定装置を開発し、動的載荷試験等によりその測定精度を確認した。また、営業線に適用するため、限られた数の部材角測定装置から線区内の高架橋柱の損傷レベルを効率的に推定する設置箇所選定手法も提案したので報告する。


既設鋼製線支承を用いた鋼構造物の耐震評価法

構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 室長 杉本 一朗

既設鋼桁には鋼製支承が多数用いられているが、過去の大規模地震時において支承部の損傷が報告されている。そこで、本研究では、代表的な鋼製の線支承を対象として、実物を用いた載荷試験と非線形FEM解析を行い、耐震評価に用いる非線形復元力モデルや損傷レベルについて検討した。そして、時刻歴応答解析を行い、支承部の非線形特性が構造物の耐震性能に及ぼす影響や支承部を補強した場合の効果を明らかにしたので報告する。


橋梁−電車線柱連成系の地震応答特性の解明と評価方法

構造物技術研究部 耐震構造研究室 研究員 坂井 公俊

橋梁と電車線柱間の地震時相互作用については未解明な部分が多い。そこで今回は、橋梁−電車線柱連成系の動的相互作用を明らかにするための検討を行った。その結果、橋梁のロッキング変形が電車線柱の応答を増大させる可能性があることを明らかにした。さらに動的相互作用の影響を考慮した電車線柱の簡便な耐震評価法を提案するとともに、過去の地震被害に対して提案手法を用いることで、手法の妥当性を検証したので報告する。


山岳トンネルの路盤隆起補強工の効果とその設計法

構造物技術研究部 トンネル研究室 室長 小島 芳之

山岳トンネルでは、地圧の長期的な作用や地震時の地盤変位により路盤部に有害な隆起が生じることがある。その対策として、路盤部へのロックボルトによる補強がしばしば実施されるが、経験的に設計されているのが現状である。そこで、事例分析、模型実験、数値解析を行うことにより、路盤隆起メカニズムと路盤ロックボルトの補強効果を明らかにし、隆起の程度に応じた路盤ロックボルトの最適諸元と解析的設計法を提案したので報告する。


粒子法による地盤の大変形・崩壊挙動評価

構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 研究員 阿部 慶太

近年、流体や固体を粒子の集合によってモデル化する解析手法(粒子法)が発展しているが、斜面崩壊や土石流など地盤の大変形問題に対する適用は限定的であった。そこで、地盤を粒子と格子によりモデル化することで、地盤の大変形・崩壊挙動を評価できる解析ツールを開発した。開発した解析ツールにより、従来の有限要素法では困難であった地盤の大変形・崩壊挙動に関する既往の実験結果、実現象をミュレートし、高い整合性があることを確認したので報告する。


混雑時および非常時における駅の旅客流動評価方法

構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員 山本 昌和

朝夕のラッシュ2時間帯に大部分の利用者が集中しがちな鉄道駅においては、施設計画を旅客流動の観点から検討することも重要であり、そのひとつとしてシミュレーションによる検討が挙げられる。近年では、旅客流動の可視化のみにとどまらず、旅客の歩きにくさを指標とした評価手法による問題箇所の明確化や火災など非常時の旅客の避難時間検証への応用のための検討をおこなっており、それらの取組みについて紹介する。



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