第252回 鉄道総研月例発表会:構造物技術に関する最近の研究開発

環境工学に関する最近の研究開発

環境工学研究部 部長 飯田 雅宣

鉄道には、地球環境、沿線環境、駅環境、車内環境など、様々な環境に関連した課題があり、鉄道総研では車両、施設、電気等、各技術分野が連携し、広範囲に研究を進めている。ここでは、沿線環境の騒音・振動を中心に、その他の問題も含め、最近の研究開発の状況を紹介する。


電気鉄道による低周波電磁界と規格・ガイドライン

電力技術研究部 部長 奥井 明伸

近年、低周波電磁界に対する人体防護を目的に、WHO等の国際機関を中心にガイドライン、測定法等の整備が進められており、既に日本国内では中立的立場で情報公開とリスクコミュニケーションの増進を図る電磁界情報センターが設置されている。ここでは電気鉄道に起因して発生する低周波電磁界と、人体防護を目的とした規格・ガイドライン等の動向について報告する。


機械換気を行う長大トンネル内の流れ・温熱環境の予測手法

環境工学研究部 主任研究員 梶山 博司

大深度地下鉄道では長大トンネルに立坑を配置して換気することになるが、トンネル内の温熱環境を維持するためには送風機による機械換気が必要となる。しかし、新幹線のような高速列車が走行する場合、トンネル内に大きな圧力変動が生じて既往の送風機ではその運転に支障をきたす可能性が高い。そこで、立坑に換気経路とバイパスを備えてダンパ切換により送風機へのダメージを回避するシステムを想定した数値シミュレーション手法を開発したので、その概要を報告する。


駅コンコース温熱環境の予測方法と主観評価

構造物技術研究部 建築研究室 室長 伊積 康彦

温熱環境は、駅の快適性に関する重要な要因の一つである。そこで、橋上駅や高架下駅のコンコースを対象に気温や風速の実測と数値シミュレーションを行い、駅コンコースの温熱環境予測方法を提案した。また、実物大模擬駅舎を用いて自然換気による夏季暑熱環境の改善効果を確認した。さらに、首都圏の駅コンコースにおいて被験者による主観評価試験を行い、気温などの物理量と温熱環境に対する不満足率との関係を明らかにした。ここでは、これらの検討結果について紹介する。


在来線車両の空気抵抗低減による省エネルギ効果の評価

環境工学研究部 車両空力特性研究室 主任研究員 井門 敦志

車両の走行抵抗は機械抵抗と空気抵抗に大別できる。在来線車両は、新幹線車両と比較して速度が低いために、空気抵抗を考慮した車両設計が積極的に行われてきたとは言い難い。しかしながら、車両の軽量化や電動機の高効率化等による機械抵抗の低減が進んだ結果、走行抵抗に占める空気抵抗の割合が大きくなりつつある。ここでは、風洞実験により在来線車両の空気抵抗の低減効果を評価し、空気抵抗の低減による消費エネルギの低減効果について検討した結果を紹介する。


列車退出側坑口におけるトンネル微気圧波低減対策

環境工学研究部 (熱・空気流動) 研究室長 斉藤 実俊

微気圧波対策としてトンネルの列車突入側坑口に設置される緩衝工は、営業速度の向上に伴い長くなる一方であるが、ある程度以上長くなるとその低減効果は小さくなる。そこで、さらなる高速化に対応すべく、微気圧波を効果的に低減するために、列車退出側坑口(微気圧波放射段階)での対策方法を提案する。これは、緩衝工内部を線路方向に壁で仕切り、その坑口を塞ぐことで微気圧波の一部分を遅れて放射させ、微気圧波の最大値を下げるものである。本発表では、微気圧波低減効果確認のために実施した模型実験について報告する。


風洞試験における台車部空力騒音測定手法の精度向上

環境工学研究部 騒音解析研究室 副主任研究員 山崎 展博

新幹線車両の台車部は主要な空力騒音源の一つである。本研究では車両床下の空気の流れ場を模擬した状態で台車部から発生する空力騒音の測定を可能とする風洞試験法の開発を行った。また、台車部付近から発生する騒音の測定精度を改善するため、マイクロホンアレイにより得られた音圧レベル分布図をもとに、台車部側方の測定点における騒音レベルへの換算法に関する検討を行った。ここでは、台車部騒音測定結果をもとに、本手法の妥当性について報告する。


レール近接位置の低防音壁による騒音低減効果

環境工学研究部 騒音解析研究室 主任研究員 小方 幸恵

鉄道沿線の高層建物等、鉄道の走行に伴って発生する音の音源を直接見通すことができる高所空間では、従来の防音壁による騒音対策が難しい。そこで、主要音源である車両下部音に対する新しい吸遮音対策の一つとしてレール近接位置の低防音壁に着目し、高さ、形状、吸音材の有無等種々の条件における騒音低減効果を、音響模型試験および実車試験により検証した。ここでは、これらの結果およびレール近接防音壁設置時の沿線騒音の予測方法について紹介する。



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