第259回 鉄道総研月例発表会:電力技術に関する最近の研究開発

電力技術に関する最近の研究開発

電力技術研究部 部長 奥井 明伸

電力技術の発展に寄与する最近の鉄道総研の研究開発の概要を、「電力」および「電車線」の観点から紹介する。また、最近の研究開発の話題として2010年から重点的に実施している「電力の新供給システム」の進捗状況について紹介する。


サージ検知による交流き電回路用故障点標定装置の開発

電力技術研究部 き電研究室 副主任研究員 森本 大観

現行の交流き電回路用の故障点標定装置は、最大1km程度の標定誤差がある。標定精度向上のため、故障点において発生するサージがき電回路両端へ到達する時間の差から故障点を標定するサージ検知方式の開発を進めた。電車線路のサージ伝播速度測定、既設電圧変換器(VT)でのサージ検知可否の調査、自動標定アルゴリズムの考案等を経て、現地にてインパルス電圧印加及び実加圧人工故障により標定試験を行い、約20kmのき電区間において誤差100m程度の高精度の標定値を得たので報告する。


電力貯蔵装置の効果的な制御手法の開発

電力技術研究部 き電研究室 副主任研究員 小西 武史

近年、電圧降下対策あるいは回生電力の有効活用、二酸化炭素排出量の削減を目的とした電力貯蔵装置が注目され、電気鉄道の地上設備として適用され始めている。これまでの電力貯蔵装置の制御方式は充電および放電の開始電圧を固定しているため、電圧降下対策と回生電力の有効活用を両立させて機能させることが難しい。そこで、貯蔵媒体を設定した中間充電状態になるように制御する電力貯蔵装置を開発した。ここでは実際の電車負荷に対する電力貯蔵装置の充放電特性と、提案する制御方式の効果について報告する。


画像解析技術を適用した架線検測技術の動向

電力技術研究部 集電管理研究室 主任研究員 根津 一嘉

近年、画像解析技術を適用した架線検測の実用化件数が増加しつつある。画像解析による架線検測装置は従来型の装置と比較して、必要なハードウエアが簡素なうえ、パンタグラフに接していない設備も測定可能といった特長を有する。ここではこのような特長に着目し、近年の導入事例と用いられている技術について動向を整理するとともに、画像解析を用いた新たな測定手法について開発を行っている内容を報告する。


架線系設備の耐震性能向上対策

電力技術研究部 電車線構造研究室 主任研究員 原田 智

現状、電車線路の耐震設計は主に電柱の強度を評価することにより行っている。しかし近年、地震時に高架橋や電柱等に顕著な被害がないにもかかわらず、架線の断線や架線金具の破損など架線系設備に被害が生じ、列車運行が長時間休止する事例が増加する傾向がある。そこで、電車線路の耐震設計法について過去の経緯を含めて今後の展望を紹介するとともに、架線系設備の耐震性能向上策について具体案を検討したので報告する。


剛体電車線におけるパンタグラフの動特性に起因した波状摩耗とその抑制手法

鉄道力学研究部 集電力学研究室 副主任研究員 小山 達弥

地下鉄などに用いられる剛体電車線では、すり板の異常摩耗や電車線の急速摩耗などの原因となるしゅう動面の波状摩耗が発生し、保全上の問題となる場合が多い。波状摩耗には波長や発生場所など様々な形態があり、これらの実情が把握されていないのが現状である。各種の剛体電車線における波状摩耗の発生状況やパンタグラフの特性調査等を行い、波状摩耗の発生条件や要因等をまとめるとともに、波状摩耗抑制について検討した結果を報告する。


通電下におけるトロリ線とすり板の摩耗形態とその遷移条件

電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員 山下 主税

集電部材であるトロリ線やすり板の摩耗特性を把握するためには、ダイナミクスや離線の測定のみならず、摩耗メカニズムを解明する必要がある。そこで本研究では、トロリ線とすり板間の摩耗現象を精緻に把握するための手法および試験装置を検討・開発し、電流や接触荷重を変化させながら摩耗試験を実施した。ここでは、接触荷重と電流によって遷移する硬銅トロリ線と鉄系焼結合金すり板の摩擦係数および摩耗形態について報告する。




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