第260回 鉄道総研月例発表会:軌道技術に関する最近の研究開発

軌道構造に関する設計法の変遷と最近の研究開発

軌道技術研究部 部長 古川 敦

 平成23年12月に鉄道構造物等設計標準【軌道構造】が通達され、出版・講習会によって関係事業者等に周知されている。この設計標準は、我が国で初めて性能照査設計法を軌道構造の設計に取り入れたものとなっている。ここでは、国鉄時代からの軌道構造の設計技術の変遷と、鉄道総研で現在実施している軌道構造、軌道部材の性能照査法に関する研究開発、および今後の方向性を紹介する。


踏切部における腐食レールの余寿命評価

軌道技術研究部 軌道構造研究室 研究員 細田 充

 腐食したレールの余寿命を把握することは、レールの適切な管理を行う上で重要である。本研究では、湿度や塩化物等により腐食しやすい環境下である踏切部の減肉したレールを収集し、底面と底側部の腐食量の測定および曲げ疲労試験を行い、それらの関係を分析した。そして、腐食量の程度に応じたS−N曲線を求め、踏切部における腐食レールの余寿命の推定方法を提案した。ここでは、試験の概要と余寿命推定方法について報告する。


分岐器介在ロングレールの横方向安定性評価法の高精度化

軌道技術研究部 軌道構造研究室 主任研究員 片岡 宏夫

 分岐器介在ロングレールについては、特にバラスト軌道上の横方向安定性やまくらぎ直結分岐器敷設時のロングレール縦荷重等に関して、より適切な評価が求められている。そこで本研究では、要素試験によるパラメータの取得と座屈解析法の改良によりバラスト軌道上の横方向安定性の評価法の精度を高め、また、まくらぎ直結分岐器区間の現地試験結果に基づいたレール軸力解析ツールの検証を実施して、分岐器介在ロングレールのレール軸力解析法の深度化を図った。ここでは、それらの試験および解析の結果について紹介する。


曲線部における車輪/レール潤滑方法の評価

鉄道力学研究部 軌道力学研究室  主任研究員 陳 樺

 曲線部における車輪とレールの摩耗、きしり音などを抑制するために,車輪とレール間の潤滑を行うことが一般的に知られている。しかしながら、実際に使われている潤滑剤の種類、塗布方法、塗布量などの潤滑方法は、必ずしも効果的あるいは合理的とは言えない場合がある。ここでは、既存潤滑剤ならびに新規潤滑剤の延び性、トラクション挙動および横圧低減効果の評価を実施したうえ、線区条件に応じた潤滑方法を検討したので、その内容について報告する。


自動沈下補正補助まくらぎの開発

軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 室 長 村本 勝己

 バラスト軌道の構造境界部等に発生しやすい浮まくらぎの効果的な防止対策として自動沈下補正まくらぎ(AICS)の開発を進めてきたが、さらに、既設軌道のまくらぎを交換することなく、沈下補正の機能を低コストに付加することができる短まくらぎタイプのAICS(SS型)を開発した。本発表では、AICS(SS型)の概要を紹介すると共に、実物大軌道模型載荷試験によって確認されたレール継目部の浮まくらぎ抑制効果について報告する。


発生バラストを活用した営業線路盤改良工法の開発

軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 主任研究員 桃谷 尚嗣

 路盤の軟弱な箇所では、路盤改良を行う必要があるが、例えばクラッシャランやスラグを用いる場合は十分な締固めが必要であり、夜間の限られた作業時間では十分な施工延長を確保することができなかった。そこで、発生バラストと急硬性グラウト材を混合することにより、締固めの必要がなく、短時間で路盤を改良する方法を開発した。この新しい路盤改良工法について、材料試験、繰返し載荷試験および現地試験施工を実施した結果を報告する。


慣性正矢法による軌道検測装置の開発

軌道技術研究部 軌道管理研究室 副主任研究員 坪川 洋友

 これまでに、1軸での測定が可能な慣性正矢法を用いた、低コスト軌道検測装置の開発を進めてきた。このうち、台車装架型装置については既に実用化し、2009年8月から九州新幹線800系1000番台に搭載されている。また、台車装架型装置に比べて測定範囲を拡大した車体装架型装置については、試作機を製作し、在来線試験電車に搭載して検測精度と長期耐久性の確認を実施した。ここでは、装置の開発経緯と、装置による検測の再現性および従来の検測車との整合性を検証した結果について報告する。


長期的な経済性を考慮した軌道保守工種の選択法

軌道技術研究部 軌道管理研究室 室 長 三和 雅史

 バラスト軌道では、レール凹凸量の増加,道床の細粒化や土砂混入等といった材料劣化の進行は、軌道(高低)変位進みの促進等をもたらすことになる。こうした箇所の保守には適切な保守工種を検討すべきであるが、材料保守は軌道変位保守よりも費用が高いため、保守効果を考慮して適切な時期に施工する等して、総保守費用を長期的に減らすことが重要である。そこで、軌道変位等の履歴データを用いて各箇所の軌道状態を評価し、適切な保守工種を提案するモデルを構築したため、その内容を報告する。




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