第277回 鉄道総研月例発表会:車両技術に関する最近の研究開発

車両の研究開発における最近の話題

車両構造技術研究部 部長 早勢剛

車両技術の研究・開発にかかわる最近の話題を紹介する。2012年度,2013年度に実施したテーマの中から、「車輪踏面の微小凹凸による曲線走行時の横圧低減」、「車両の衝突安全性」、「新しい粘着力の測定手法」などについて紹介し、今後の車両技術開発の方向性について述べる。


可変減衰上下動ダンパを用いた車体制振制御システムの開発

車両構造技術研究部 走り装置研究室 主任研究員 菅原能生

地方交通線などの軌道整備基準が低い線区では,幹線と比べて軌道不整が大きく,特にレールの継ぎ目通過に起因する車体の上下振動が大きくなる傾向がある.このような振動を低減し乗り心地を向上するために,2次ばね系に取り付けて使用する可変減衰上下動ダンパおよびその制御システムを開発し,実用化した.本発表では,そのシステム構成および制振効果について紹介する.


鉄道車両の床板構造に着目した新たな固体伝搬音対策

車両構造技術研究部 車両振動研究室 副主任研究員 朝比奈 峰之

新幹線をはじめとした高速鉄道車両の台車直上における車内騒音は、100〜300Hzの周波数帯域が特に高いレベルを示し、台車系からの固体伝搬音成分が支配的であることがわかっている。そこで本研究では、固体伝搬音低減対策として、試験車体の一部の床板構造を浮床構造に変更および床板を分割して弾性支持に変更し、床板振動・放射音特性について詳細に調べた。各対策と現状の床板構造との床板振動・放射音の比較を行い、騒音低減効果について報告する。


地震時脱線対策クラッシャブルストッパの開発

鉄道力学研究部 車両力学研究室 副主任研究員 中嶋 大智

車両の地震時走行安全性向上を目的に、通常時は従来の左右動ストッパ遊間を維持しつつ、地震のような異常時に強い左右動ストッパ当りが生じた際に左右動ストッパ遊間を拡大する地震時脱線対策クラッシャブルストッパ装置を開発している。本装置はこれまでに開発した地震時脱線対策左右動ダンパ(以下、地震対策ダンパと記す)との同時運用を前提としており、汎用性向上を目的に地震対策ダンパの小型化開発も併せて実施した。これらの要素技術の開発に関する取り組みについて報告する。


高速新幹線用の小型分散空気抵抗ブレーキ

車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 室長 高見 創

速度350km/h超からの非常ブレーキ性能向上(減速距離短縮)の一環として、粘着に頼らない空気抵抗ブレーキを開発中である。屋根上に小型抵抗板を分散配置して空気流による抗力を得る方法として、非常ブレーキ指令を受けて最初にバネ力開放で起動した後は、走行風を動力源として空気抵抗自体により自然に開度を得る「トルクバランス形水平展開機構」方式を開発した。試作機を用いて実車の屋根上流れを模擬した大型風洞実験を行い、小型空気抵抗ブレーキを列車の長手方向に最大10列配置すれば速度300km/hで現行非常ブレーキの約1/3の減速度を確保できる見込みを得た。本発表では上記内容について報告する。


直流電車帰線電流の低周波成分予測手法の構築と検証

車両制御技術研究部 駆動制御研究室 主任研究員 廿日出 悟

直流電車の帰線電流には低周波成分が多く含まれる。帰線電流が流れるレールには軌道回路電流も流れているため、通常は両者が干渉しないよう設計・製作される。ところが、現状では帰線電流の低周波成分は理論的に予測できないため、理論に基づく車両設計ができない。そこで本発表では、直流電車帰線電流の低周波成分を車両性能から予測する理論を構築し実測結果による検証を行った内容を報告する。


車輪はめ合い部の形状変更による車軸の疲労強度向上

車両構造技術研究部 車両強度研究室 副主任研究員 山本 勝太

車軸の車輪はめ合い部には、車軸のたわみによる相対的な繰返し微小すべり(フレッティング)に起因したき裂が発生、進展する可能性があり、疲労強度向上のためには、フレッティングを抑制する必要がある。そこで損傷の低減、車軸取替率の低下を目的として、1/3スケール模擬輪軸疲労試験およびFEM解析を用い、車輪はめ合い部形状と疲労強度の関係を定量的に評価することにより、疲労強度を大幅に向上させた形状を提案した。さらに実物大車軸の疲労試験により妥当性を検証したので報告する。


難燃性マグネシウム合金の車両構体への適用可能性

材料技術研究部 摩擦材料研究室 主任研究員 森 久史

車両構体の軽量化を目標として、車両構体への難燃性マグネシウム合金の適用が考えられるが、難燃性マグネシウム合金の機械的特性については不明な点が多く、さらに車両に適用するための加工性や溶接性について調べられた例が少ない。本報告では、いくつかの難燃性マグネシウム合金を試作して機械的特性、加工性及び溶接性について評価した結果を紹介する。また、車両構体への適用に向けた今後の課題について述べる。


気動車の燃料消費量簡易推定手法

車両制御技術研究部 動力システム研究室 室長 村上 浩一

運行経費節減の観点から「省エネ運転」の取り組みが進められており、省エネ方策によるエネルギー削減効果の定量的把握が重要となっている。ディーゼル車の燃料消費量を簡易な方法で正確に把握したいとの要望も高まっていることから、車両情報やエンジン制御情報を利用してエンジンの燃費性能データなどから簡易に燃料消費量を計算する手法を検討した。また本手法を適用して運転台モニタ装置に燃料消費量などを表示する「燃費モニタ装置」を開発し、実車走行での検証を行った。本発表では上記一連の結果を報告する。




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