第278回 浮上式鉄道とその技術の応用に関する最近の研究開発/車両技術に関する最近の研究開発

浮上式鉄道とその技術の応用に関する最近の研究開発

浮上式鉄道技術研究部 部長 長嶋 賢

 浮上式鉄道の研究開発としては将来を見据え、次世代高温超電導材料の超電導磁石への適用や地上コイルの保守に関する研究を行っている。また、超電導技術やリニアモータ技術を在来方式鉄道へ応用するものとして、フライホイール装置や磁気冷凍、非接触給電、車内低周波磁界評価の研究開発を実施しており、これらの開発状況について紹介する。


非接触給電システムの鉄道車両への適用

浮上式鉄道技術研究部 電磁システム研究室 主任研究員 柏木 隆行

 ハイブリッド気動車やバッテリートレインなど蓄エネルギ媒体を持つ車両が実用化されつつある。蓄エネルギ媒体が車両重量に占める割合は大きいが、多頻度の充電を行う事で搭載量の削減が図れる。また、これらの車両に非接触給電を適用することで、容易かつ安全に多頻度の充電を行うことが可能になる。一方で、非接触給電は接触給電に比較し、損失が大きいという課題があり、この低減が必須となる。ここでは、非接触給電を鉄道に適用する際に損失低減を図る構成について紹介する。


鉄道車両の低周波磁界の評価方法

浮上式鉄道技術研究部 電磁システム研究室 主任研究員 加藤 佳仁

 近年、国内外で低周波磁界に関する規制・規格化が進められている。鉄道総研では、超電導磁石から発生する磁界についてこれまでに測定手法や磁気シールド等のノウハウを蓄積してきた。そこで、このような技術を応用して、在来方式鉄道車両における低周波磁界の推定法、評価法を検討した。ここでは、国内外の低周波磁界に関する動向を解説するとともに、磁気シールドや車両構体構造を考慮して構築した鉄道車両磁界の解析モデル、国際ガイドラインに基づいた評価方法等について紹介する。


フライホイール蓄電装置用の超電導磁気軸受の開発

浮上式鉄道技術研究部 低温システム研究室 副主任研究員 荒井 有気

 近年、回生電力の有効利用などのために、電力貯蔵装置が適用され始めている。鉄道総研では、長寿命・省メンテナンス・低損失が期待される、超電導フライホイール(FW)蓄電装置を開発している。低温容器の中に配置された、超電導コイルと超電導バルク体の間の電磁力で非接触浮上支持させる構造を提案し、小型の高温超電導磁気軸受によるFWの完全非接触浮上・回転を確認した。また、電鉄向けに必要と試算された20kNの電磁力を発生させる高温超電導磁気軸受を製作し、この発生電磁力下での完全非接触浮上・回転を確認したので報告する。


鉄道車両空調用の磁気冷凍機の開発

浮上式鉄道技術研究部 低温システム研究室 副主任研究員 宮崎 佳樹

 鉄道車両内空調の省エネルギの観点から、現行の蒸気圧縮式冷凍に代わり得る方法として、磁気熱量効果を用いた冷凍技術の開発を進めている。磁気冷凍において、圧縮膨張冷凍サイクルにおける「作動ガス」の役割を担うのは、「磁気作業物質」と呼ばれる磁性体である。この磁気作業物質として、これまで室温領域の磁気冷凍の評価に多く用いられてきたガドリニウムと、新たに注目されはじめたランタン−鉄系材料での検討を行ったので紹介する。


車両の研究開発における最近の話題

車両構造技術研究部 部長 早勢 剛

車両技術の研究・開発にかかわる最近の話題を紹介する。2012年度,2013年度に実施したテーマの中から、「車輪踏面の微小凹凸による曲線走行時の横圧低減」、「車両の衝突安全性」、「新しい粘着力の測定手法」などについて紹介し、今後の車両技術開発の方向性について述べる。


可変減衰上下動ダンパを用いた車体制振制御システムの開発

車両構造技術研究部 走り装置研究室 主任研究員 菅原 能生

地方交通線などの軌道整備基準が低い線区では,幹線と比べて軌道不整が大きく,特にレールの継ぎ目通過に起因する車体の上下振動が大きくなる傾向がある.このような振動を低減し乗り心地を向上するために,2次ばね系に取り付けて使用する可変減衰上下動ダンパおよびその制御システムを開発し,実用化した.本発表では,そのシステム構成および制振効果について紹介する.


地震時脱線対策クラッシャブルストッパの開発

鉄道力学研究部 車両力学研究室 副主任研究員 中嶋 大智

車両の地震時走行安全性向上を目的に、通常時は従来の左右動ストッパ遊間を維持しつつ、地震のような異常時に強い左右動ストッパ当りが生じた際に左右動ストッパ遊間を拡大する地震時脱線対策クラッシャブルストッパ装置を開発している。本装置はこれまでに開発した地震時脱線対策左右動ダンパ(以下、地震対策ダンパと記す)との同時運用を前提としており、汎用性向上を目的に地震対策ダンパの小型化開発も併せて実施した。これらの要素技術の開発に関する取り組みについて報告する。


高速新幹線用の小型分散空気抵抗ブレーキ

車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 室長 高見 創

速度350km/h超からの非常ブレーキ性能向上(減速距離短縮)の一環として、粘着に頼らない空気抵抗ブレーキを開発中である。屋根上に小型抵抗板を分散配置して空気流による抗力を得る方法として、非常ブレーキ指令を受けて最初にバネ力開放で起動した後は、走行風を動力源として空気抵抗自体により自然に開度を得る「トルクバランス形水平展開機構」方式を開発した。試作機を用いて実車の屋根上流れを模擬した大型風洞実験を行い、小型空気抵抗ブレーキを列車の長手方向に最大10列配置すれば速度300km/hで現行非常ブレーキの約1/3の減速度を確保できる見込みを得た。本発表では上記内容について報告する。


車輪はめ合い部の形状変更による車軸の疲労強度向上

車両構造技術研究部 車両強度研究室 副主任研究員 山本 勝太

車軸の車輪はめ合い部には、車軸のたわみによる相対的な繰返し微小すべり(フレッティング)に起因したき裂が発生、進展する可能性があり、疲労強度向上のためには、フレッティングを抑制する必要がある。そこで損傷の低減、車軸取替率の低下を目的として、1/3スケール模擬輪軸疲労試験およびFEM解析を用い、車輪はめ合い部形状と疲労強度の関係を定量的に評価することにより、疲労強度を大幅に向上させた形状を提案した。さらに実物大車軸の疲労試験により妥当性を検証したので報告する。



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