第279回月例発表会 信号・情報通信技術に関する最近の研究開発

信号・情報通信技術に関する最近の研究開発

信号・情報技術研究部 部長 平栗 滋人

鉄道総研では、進展が著しい情報通信技術を用いて、鉄道の安全性・信頼性、経済性、利便性を向上するための研究開発を推進している。本発表では鉄道の安全性・信頼性のさらなる向上をめざした知能列車に関する研究開発、状態監視技術の活用による経済的・合理的な保全手法の構築をめざした研究開発、光空間波、ミリ波等の新しい通信技術の鉄道への適用に関する研究開発について紹介する。


列車制御システムの概念設計段階における安全性確認手法

信号・情報技術研究部 列車制御研究室 主任研究員 岩田 浩司

列車制御システムには高いレベルの安全性が要求され、システムライフサイクル全体での管理が求められる。特に、前段の概念設計段階に位置するシステム仕様書は、後段となる詳細設計・製造段階以降の参照元となる。また近年、機能は複雑化しており、全体を定義するシステム仕様書の重要性は一層高まっている。一方、障害分析結果では、システム仕様書の誤りが占める割合は大きい。そこで、システム仕様書の確認項目を安全要件として定め、これら項目と対比確認して仕様誤りの低減を図る手法を提案したので紹介する。


閑散線区用割り出し可能転てつ機の開発

信号・情報技術研究部 信号システム研究室 副主任研究員 潮見 俊輔

40Nレールの生産中止により、40Nレール以下を対象として開発された既存の発条転てつ機は、重レール化した場合に復帰力が不足する。しかし復帰力を増加させると、割出し力も増加するため、車両の走行に影響することが課題となる。そこで、発条転てつ機と同様に連動装置の転換制御が不要で、かつ重レールや弾性分岐器の転換が可能な、新しい割出し可能転てつ機を開発した。本発表では、その特徴である、高速・高転換力を実現するための空気圧による転換機構、車両による割り出しを可能とする鎖錠機構、転てつ機毎にローカルで転換制御を行うための手法について紹介する。


無線式列車制御用通信ネットワークの性能評価システム

信号・情報技術研究部 ネットワーク・通信研究室 室長 川ア 邦弘

無線式列車制御システムで使用される無線通信ネットワークは、その伝送品質がシステム全体の安全性や安定性に大きく影響する。鉄道沿線での伝搬環境を考慮しつつ、所要の伝送品質を確保できるように無線通信ネットワークを設計・構築するためには、多くの労力が必要となる。そこで、これらの設計作業や性能の評価作業を効率的に行えるよう、伝送品質をシミュレーションして列車制御に与える影響を予測する評価システムを開発した。本発表では、開発の背景と経緯について述べたのち、評価システムの機能と実行例を紹介する。また、今後の展望についても述べる。


旅客利便性・経営上の観点による運行計画の評価手法

信号・情報技術研究部 運転システム研究室 副主任研究員 武内 陽子

近年の列車運行に対するニーズは定時性だけでなく、低コスト、省エネ等多様化しており,これらに応えるためには、旅客の視点,社会に対する影響,経営上の視点という複数の観点で列車運行を多面的に評価する必要がある。そのため、駅間走行時分を運転曲線レベルで計算する機能を持つ精緻な列車運行・旅客行動シミュレータを開発し、シミュレータでの出力結果を元に列車運行を多面的に評価する手法を構築した。本発表では、多面的評価の実例について紹介する。


旅客利便性の観点による折り返し設備設置効果の評価手法

信号・情報技術研究部 運転システム研究室 副主任研究員 國松 武俊

輸送障害発生時に、不通区間の手前、または先の駅において折り返し運転を実施し、利用者への影響を低減するため、折り返し設備新設の検討が事業者内で行われている。本研究では、折り返し設備の新設効果を、利用者の観点から定量的に評価する手法について検討を行った。その結果、利用者ODデータ、ダイヤデータを利用し、内部的に自動生成する輸送障害シナリオ、運転整理案データに基づき、列車運行・旅客行動シミュレーションを行う手法を構築したので、その折り返し設備評価手法について発表する。


交通機関の乗り継ぎを考慮した幹線鉄道の需要予測

信号・情報技術研究部 交通計画研究室 研究員 鈴木 崇正

幹線旅客鉄道の需要を予測するにあたり、航空機と新幹線など複数の幹線交通機関を組み合わせた経路は、都市間幹線旅客を対象とした既存の需要予測手法では適切に取り扱うことが不可能であった。この問題を解決するため、複数の幹線交通機関を含む混合経路の存在を考慮した経路選択モデルの開発と需要シミュレーション手法の検討を行った。本発表では、開発したモデルとその適用例について紹介する。


運行情報の提供が旅客の列車選択行動に与える影響

信号・情報技術研究部 交通計画研究室 室長 深澤 紀子

都市圏では様々な種別の列車が多数運行されており、数分の遅れが列車の到着順序や混雑度に影響を及ぼすことが多い。このため個々の列車に関する詳細な運行情報の提供が望まれているが、情報提供の結果、それが旅客の列車選択などの意思決定にどのような影響を与えるかは検証されていない。そこで個々の列車に関する詳細な情報が与えられた場合の、旅客の列車選択行動ならびに行動選択理由の変化を調査した。本発表では、その結果について紹介する。



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