第282回月例発表会 鉄道施設用材料に関する最近の研究開発

鉄道施設用材料に関する最近の研究開発

材料技術研究部 部長 曽根 康友

 鉄道を支える構造物、軌道、電力等の施設の機能向上、長寿命化、保守軽減のためには、設計施工技術の向上だけでなく、使用されている材料自体の性能向上や劣化抑制が必要である。ここでは、振動低減、疲労損傷検知などの機能を持つ材料の施設への適用とレールの疲労層評価技術の検討、コンクリート構造物の維持管理に関する材料技術の状況について紹介するとともに、超電導材料の基礎的な材料開発とその送電線への適用に関する取り組みの状況など、今後の展望について解説する。


超電導材料のき電ケーブルへの応用

材料技術研究部 超電導応用研究室 室長 富田 優

鉄道分野への超電導技術の応用を目指して、基礎的な材料の製作から応用、実用化技術までの多岐にわたる分野で研究を進めている。材料開発においては、強力磁石として使用可能な超電導バルク磁石の製作方法やその用途について報告する。また実用化技術として、送電線として適用できる超電導き電ケーブルの開発状況についてその概要を報告する。


X線フーリエ解析によるレール転がり疲労層評価

材料技術研究部 摩擦材料研究室 主任研究員 松井 元英

これまで困難であったレール転がり疲労層最表面から内部に至るまでの広範囲における組織形態の定量分析を達成する目的から、新しいX線解析手法を適用した分析手法について検討した。その結果、本X線解析手法で最表面から内部に至るまで評価可能であった。また、得られるX線結晶粒径と転位密度(塑性ひずみ量の尺度)がレール転がり疲労層内で大きく変化することが明らかとなり、これらが、転がり疲労に伴う材料組織の変質程度を評価する指標として適用できる可能性を見出したのでその内容について紹介する。


ノーズ可動クロッシング用き裂検知システムの開発

材料技術研究部 防振材料研究室 副主任研究員 坂本 達朗

高マンガン鋼製ノーズ可動クロッシングの維持管理にあたり、き裂の検査方法は主に目視や浸透探傷法などであり、多大な労力を要する。また、当該部材のき裂進展特性について十分な知見が得られていない。そこで、き裂を効率的に検知できる手法の確立を目的として、き裂発生の懸念される可動レール部におけるき裂進展特性を評価するとともに、有用と考えられるき裂検知手法について検討した。その結果、鋼橋用に開発したき裂検知性能を有する導電性塗料を活用したき裂検知システムを開発したので、その内容について紹介する。


イオン交換物質を利用したアルカリシリカ反応抑制材料の開発

材料技術研究部 コンクリート材料研究室 主任研究員 上原 元樹

鉄道総研ではアルカリシリカ反応(ASR)抑制材料として、アルカリ成分を吸着するイオン交換物質であるカルシウム(Ca)含有ゼオライトを実用化している。また、近年、アルカリ成分を吸着した上に、さらにASR抑制に効果的なリチウム(Li)成分を放出するLi含有ゼオライトを開発した。現在、その実用化を進めているが、さらに次世代のASR抑制材料として、アルカリ成分を吸着し水素イオン(H+)を放出して躯体のpHを低下させASRを抑制する安価なH+型ジオポリマーの研究も進めている。本発表では、それらイオン交換材料によるASR抑制材料の効果やこれからの課題に関して紹介する。


コンクリート表層部の物質透過性に関する非破壊評価技術

材料技術研究部 コンクリート材料研究室 副主任研究員 西尾 壮平

コンクリート表層部の物質透過性(以下、「表層品質」という)が鉄筋コンクリートの耐久性に大きく影響することはよく知られている。しかし、実構造物の表層品質を非破壊で評価する技術は確立されていないため、近年、研究開発が活発化している。本発表では、表層品質の非破壊評価技術の現状を概説するとともに、鉄道総研が開発した簡易評価手法である「散水試験」の研究成果を紹介する。散水試験とは、コンクリート表面に少量の水を散水した際の吸水状況から表層品質を非破壊で簡易に調べる手法で、簡便で作業性に優れるという特長がある。


コンクリートの品質が水分浸透性状に与える影響

材料技術研究部 コンクリート材料研究室 研究員 鈴木 浩明

コンクリート構造物にみられる劣化現象の多くは水が関与しており、特に鉄筋腐食を防ぐ点でコンクリート表層における水分挙動を知ることは重要である。しかし、鉄筋のかぶり深さに関する検討は多くなされているものの、コンクリートへの水分浸透性状について論じた例は少ない。ここでは、基礎的検討として配合と養生の違いに着目し、コンクリートの品質と水分浸透深さおよびその時間依存性についての検討内容を紹介する。


高炉スラグ微粉末を使用したコンクリートの中性化速度の評価

材料技術研究部 コンクリート材料研究室 主任研究員 鶴田 孝司

 現在の中性化促進試験では,実環境における高炉スラグ微粉末(BS)を使用したコンクリートの中性化深さを過剰に見積もることが懸念される。そこで,中性化の条件を変えた試験を行い,BSを使用したコンクリートの物理化学性状と中性化速度との相関を検討した。本発表では,これらの検討をもとに,現在の促進中性化条件による試験結果と実環境におけるBSを使用したコンクリートの中性化速度との関係などについて紹介する。



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