第285回月例発表会 車両技術に関する最近の研究開発

車両技術に関する最近の研究開発

車両制御技術研究部 部長 山本 貴光

 車両技術の研究・開発に関わる話題として,2013年度に実施したテーマの中から,省エネルギー関連で「走行シミュレーションによる高効率誘導電動機の消費電力量評価」,車両電気機器メンテナンス関連で「高電圧・大電流パワー半導体モジュールの総合的な劣化評価」,ブレーキ性能向上関連で「粉体肉盛溶接を適用したブレーキディスクの開発」について紹介する。


急激な風の立ち上がりに対する車両の挙動解析

車両構造技術研究部 車両運動研究室 室長 日比野 有

 トンネル出口等における急激な風の立ち上がりに対する車両の応答を、縮尺1/10車両模型を用いた走行試験および車両運動シミュレーションにより解析した。本発表では,模型走行試験結果の概要を述べるとともに、風の立ち上がり時間や立ち上がり幅をパラメータとするシミュレーションを行い,これらが車両の応答に及ぼす影響を検討したので,その結果について紹介する。


地震時にロッキング振動する構造物上における車両走行安全性

鉄道力学研究部 車両力学研究室 主任研究員 飯田 浩平

 地震時における車両挙動解析では,これまで軌道面の左右および上下振動のみを考慮し,地震時走行安全性評価は軌道面の左右振動のみを入力とすることが多い。一方,地震動の大きさによっては高架橋天端のロッキング振動の走行安全性への影響が無視できない可能性があると考えられる。そこで,車両運動シミュレータを改良し,左右およびロール振動を入力した場合の車両挙動解析を行い,ロッキング振動の地震時走行安全性に及ぼす影響を検討した。本発表ではその検討結果について紹介する。


車両単位でのブレーキ性能評価手法

車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 研究員 土方 大輔

 列車のブレーキ性能をより詳細に評価するため,車両間の連結器を力センサとして利用することでブレーキ力を推定する手法を考案した。従来手法では,減速度やブレーキ距離によって編成全体を評価していたのに対し,考案手法では,編成内の車両毎にブレーキ力を評価することが可能となる。本発表では,考案手法の妥当性を現車試験により検証した結果について紹介する。


振動加速度を用いた台車枠の荷重推定手法

車両構造技術研究部 車両強度研究室 室長 八木 毅

 台車枠強度評価のための比較的簡易な荷重推定法の開発にあたり,走行時の振動加速度と台車枠各部に作用する荷重の関係を調べた。周波数解析の結果,両者のコヒーレンスが比較的高い値となる場合について,評価対象台車で測定された振動加速度、振動加速度と台車枠各部に作用する荷重の周波数スペクトルから求めた伝達関数,および荷重頻度分布を特徴付ける等価荷重に着目した補正係数を用いて荷重を推定できることが分かった。本発表ではこの台車枠の荷重推定手法について紹介する。


車両駆動用蓄電池の簡易な劣化推定手法

車両制御技術研究部 駆動制御研究室 副主任研究員 門脇 悟志

 蓄電池電車が営業列車として投入され広く普及するにあたり,編成毎に異なる日々の運用の中で蓄電池の劣化状態を逐次把握することが求められる。そこで,鉄道の特状を踏まえ,簡便さに主眼をおいたリチウムイオン電池の容量減少率を推定する方法を検討した。まず,劣化状態が異なる2つのリチウムイオン電池モジュールを等温保管した場合の自己放電特性を調べ,その結果から簡易的にリチウムイオン電池の容量減少率を推定する手法を提案した。本発表ではその簡易的な劣化推定手法について紹介する。


HILSを用いた要素部品性能評価試験環境の車体弾性振動領域への拡張

車両構造技術研究部 車両振動研究室 副主任研究員 小金井 玲子

 HILS(Hardware In the Loop Simulation:実機と数値シミュレーションを組み合わせた試験環境)システムの適用範囲を車体弾性振動領域に拡張する検討を,各種ダンパや牽引リンクなどの要素部品を対象に行った。実機の試験装置については,低・高周波数帯域の線形重ね合わせが成立することを確認し,既存設備と新規製作した高周波用試験機の組み合わせにより対応できることを示した。また,車体弾性振動を考慮したシミュレーションのための多入力多出力の時刻歴応答モデルを構築した。本発表では,それらの検討結果について紹介する。


高強度球状黒鉛鋳鉄の適用による歯車装置の騒音対策

車両制御技術研究部 動力システム研究室 主任研究員 笹倉 実

 駆動系騒音を更に低下させるには歯車装置の騒音対策が重要となる。球状黒鉛鋳鉄(FCD)は材料減衰性能が高く,歯車に適用した場合は歯面なじみ性能にも優れており,噛合い振動と歯車装置からの放射音を低減することが期待できる。ここでは,高強度の新材料であるFCD900を用いた縮尺歯車の騒音測定および実車相当の歯車モデルに置換えた振動・騒音シミュレーション結果について紹介する。



第285回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ
Copyright(c) 2014 Railway Technical Research Institute