第299回 鉄道総研月例発表会

日時 2016年04月15日(金) 13:30〜16:55
場所 日本工業倶楽部 大会堂 (※4月より会場が変更となります)
主題 軌道技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:40
最近の軌道技術の開発状況と今後の展望

鉄道総研における最近の軌道技術の開発状況と今後の展望について、下記の点に着目して概略を紹介する。
・軌道に関する理論研究
・軌道の維持管理技術の研究開発
・持続可能な軌道システムに向けた技術開発

発表者
軌道技術研究部 部長  村本 勝己

13:40~13:55
レール鋼製ノーズ可動クロッシングの開発

現在、新幹線が高速で走行する分岐器には、高マンガン鋼製ノーズ可動クロッシングが使用されている。ただし、鋳鋼製であるため、内部の微細な空隙を完全に除去することが難しく、また、超音波による探傷検査が困難なため、内部傷の進展を把握することができない。さらに、材質が異なるため前後のレールとの溶接が難しい。そこで、国内の現有設備および技術を活用し、超音波探傷検査が可能で、前後のレールとの溶接が容易となるレール鋼を用いた新幹線用ノーズ可動クロッシングを開発したので、その成果を報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道構造研究室 主任研究員  及川 祐也

13:55~14:10
レールガス圧接の施工プロセス簡略化

ガス圧接法は、主要なレール溶接法として用いられているが、レール端面の研削工程や加熱バーナーによる加熱作業工程において、熟練技能が必要とされている。そこで、ガス圧接の脱技能化を目的に、端面研削およびバーナー揺動工程の簡略化の可能性について検討した。検討により、端面研削工程を簡略化し、かつバーナー揺動工程の自動化を達成したレールガス圧接施工プロセスを提案するに至ったので、その成果を報告する。

発表者
軌道技術研究部 レール溶接研究室 室長  山本 隆一

14:10~14:25
木まくらぎ曲線を対象としたPCまくらぎ化計画作成システム

一般に、木まくらぎ構造の軌道では、まくらぎの腐食等により締結力が低下すると横圧による軌間拡大が懸念されること、軌きょうの横抵抗力が小さいため大きな通り変位が発生する可能性が高いこと等が特徴として挙げられる。このため、木まくらぎ構造の軌道に対してPCまくらぎへの交換が行われることがある。そこで、曲線諸元や軌道構造、車両・運転条件、軌道状態を考慮して各曲線のPCまくらぎ化の優先度を評価するシステムを開発した。本報告では、システムの概要と機能を紹介する。

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 研究員  金丸 清威

14:25~14:40
休 憩

14:40~14:55
スラブ軌道におけるロングレール敷設範囲の拡大

スラブ軌道等の直結系軌道を高架橋上に敷設すると、温度変化による桁の伸縮に伴いレールに付加軸力が発生するため、ロングレール化にあたっては、最大圧縮レール軸力とレール破断時開口量の照査を行うこととしている。伸縮継目を撤去してロングレール敷設範囲を拡大するためには、これらの限度値を再検討する必要がある。本報告では、実物車両を用いた開口部の走行試験と、開口部の走行を模擬可能な走行シミュレーションにより、レール破断時開口量の限度値を検討した結果を報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道構造研究室 副主任研究員  西宮 裕騎

14:55~15:10
耐久性を考慮したレール防食工法の開発

トンネル等の腐食環境下のレールについて、これまでに様々なレール防食工法が試行されてきたが、レール締結部で防食塗膜が損傷し腐食が進行することが課題となっている。そこで、列車荷重に対する耐久性を考慮したレールの防食工法およびレール締結装置を開発した。室内試験において性能を確認し、かつ良好な結果を得ており、既に営業線で試験敷設されている。これらの成果について報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道構造研究室 副主任研究員  細田 充

15:10~15:25
MBD(マルチボディダイナミクス)ソフトを援用したレール摩耗形状予測

レールは車両通過に伴い、摩耗による形状変化がもたらされるが、車輪との接触状態は線形により逐次変化するため、摩耗形状も複雑に変化する。車両の運動解析を行なう上で、マルチボディダイナミクス(MBD)ソフトは非常に有益なツールである。MBDソフトによる車両運動解析から、さまざまな線形に応じた車輪・レール接触状態が得られるため、その結果は摩耗計算に応用できる。そこでMBDソフトの1つであるSIMPACKを援用し、車両運動を考慮したレール摩耗形状予測モデルを構築した。本発表では、これらについて報告する。

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 副主任研究員  辻江 正裕

15:25~15:40
レール波状摩耗の効率的な管理手法

レール波状摩耗は、沿線の騒音・振動低減や軌道変位進み抑制等の観点から、さらに近年は鉄道各社での観光列車の運行開始に伴う車内快適性向上の観点からも管理すべき対象になりつつある。そこで、鉄道総研では、車上から波状摩耗の発生状況を大まかに把握する「車上モニタリング装置」、および地上でレール凹凸を詳細に測定する「レール凹凸連続測定装置」を開発し、これらを組み合わせて使用し効率的なレール削正を行い、レール波状摩耗を管理する手法を提案したので、その成果を報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 副主任研究員  田中 博文

15:40~15:55
休 憩

15:55~16:10
経年PCまくらぎの耐荷力評価

PCまくらぎは、1950年代ごろから導入が始まり、輸送の高速化・快適化に欠かせない近代軌道の重要な構成要素となっている。PCまくらぎの寿命は概ね30~50年程度と考えられているが、膨大な本数のPCまくらぎが敷設されているため計画的な維持管理が必要である。本研究では、営業線に敷設されていた経年PCまくらぎに対して各種力学試験を行い、PCまくらぎの力学的な性能評価を行うとともに、耐荷力低下に対する各種パラメータの影響を把握するための数値解析による検討を実施したので報告する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 副主任研究員  渡辺 勉

16:10~16:25
スラブ軌道におけるCAモルタル大断面補修工法

スラブ軌道のてん充層であるCAモルタルの主な補修方法として、劣化部を100mm程度除去して補修用材料を再充填する額縁補修が実施されている。しかし、CAモルタル内部の劣化範囲を定量的に評価し、その程度に応じて補修を行った事例はなく、適切な補修が行われているかを判断することは困難であった。本件では、衝撃貫入試験により事前にCAモルタルの劣化範囲を調査し、ウォータージェットを用いて広範囲に劣化したCAモルタルを除去して補修用CAモルタルを再充填する大断面補修工法を紹介する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 研究員  渕上 翔太

16:25~16:40
高カント曲線部におけるバラスト流動対策

列車が高速走行する一部の曲線部では、外軌側から内軌側へバラストが流動することがある。この流動が進行した場合、列車の安全走行に支障をきたすことが懸念されるため、発生箇所では高頻度の補修作業が必要となる。この現象を実物大模型で再現して原因を探るため、載荷方向可変式起振機を用いて列車の超過遠心力を加味した加振試験を行った。その中で、載荷周波数やそれに伴うまくらぎの振動により流動の形態が大きく異なることが分かった。加えて種々の流れを抑制する方法を検討し、効果を確認したので報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 研究員  野村 清順

16:40~16:55
バラスト挙動解析のための弾性体個別要素法の開発

バラスト軌道の動的応答解析のための弾性体個別要素法プログラム(QDEM)を開発した。QDEMは個別要素4粒子を用いて四面体要素を構成することにより、弾性変形挙動と不連続体挙動を同時に扱う解析手法である。本法によると、バラスト集合体内部の応力集中現象、波動伝播現象、沈下挙動解析等の解析も可能である。まくらぎ数本分のバラスト軌道を再現したモデルを構築し、実測荷重を入力するバラスト軌道の動的応答解析を実施した。弾性体個別要素法の概要と応用例について紹介する。

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員(上級)  相川 明

司会:片岡 宏夫 (軌道技術研究部 軌道構造研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。