第303回 鉄道総研月例発表会

日時 2016年09月28日(水) 13:30〜16:55
場所 日本工業倶楽部 大ホール(3F)
主題 構造物の性能照査技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:40
構造物の性能照査技術に関する最近の研究開発

鉄道に関する技術上の基準を定める省令が性能規定型に改正されたことに伴い、鉄道構造物等設計標準の性能照査型設計法への移行が順次進められてきたが、現在改訂中のトンネル設計標準で一巡する見通しとなった。これらの移行に対応するため、種々の構造物の性能照査技術が開発され、新設の設計だけでなく既設の診断にも活用されている。ここでは、このような構造物の性能照査技術に関する研究開発の中から最近の話題を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 部長  谷村 幸裕

13:40~14:00
コンクリート梁のせん断耐力算定方法

鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)棒部材や鉄筋コンクリート(RC)棒部材のせん断耐荷力は、部材の諸元や支持条件に依存して異なることが知られている。本発表では、RC梁やSRC梁の耐荷力を簡易に評価可能なマクロ式に関するこれまでの経緯や、関連する最近の実験的検討および解析的検討について紹介する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 主任研究員  渡辺 健

14:00~14:20
コンクリート充填鋼管柱を用いた高架橋の柱・梁接合部の照査法

コンクリート充填鋼管柱を用いた高架橋は駅部を中心に多く採用されているが、その柱と梁をつなぐ接合部の合理的な照査方法が求められている。ここでは、「鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼とコンクリートの複合構造物」(平成28年1月改訂)で新たに示された接合部の照査の考え方を紹介するとともに、コンクリート充填鋼管柱の接合部のうち、鉄骨鉄筋差込み方式と鉄筋差込み方式について提案した照査法に関する検討の概要を報告する。

発表者
構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 副主任研究員  吉田 善紀

14:20~14:40
減衰が低く弱点箇所となる構造物の抽出法と必要減衰量の推定

減衰が低い構造物では、地震時に構造物の応答増幅や選択共振により、構造損傷や車両走行性の低下が懸念される。そこで、実構造物の振動観測と地震応答解析、車両運動解析結果を統合することで、こうした弱点箇所を簡易に抽出する手法を提案した。さらに、弱点箇所への対策を行う際の目標減衰性能を与えるため、変位制限標準におけるSI値の照査を満足させるために必要な減衰量の推定図を構築した。本発表ではこれら一連の手法について紹介する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震応答制御研究室 主任研究員  豊岡 亮洋

14:40~15:00
地下環境を考慮した開削トンネルの耐久性の検討方法

土中に建設される構造物の一つである開削工法で施工される鉄道トンネル(開削トンネル)は、その設計においては地下特有の環境条件を考慮する必要がある。そこで、設計精度の向上を図るため、維持管理において実施された材料劣化に関する現場調査結果を収集・分析した。本報告では、これらを考慮した開削トンネルの耐久性の検討方法を取りまとめた結果を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員  仲山 貴司

15:00~15:15
休 憩

15:15~15:35
壁式RC橋脚の杭基礎フーチングのせん断耐力評価手法

橋梁の杭基礎フーチングの部材諸元は、地震時のせん断力の照査から設定される。フーチングのせん断耐力は、地震時にフーチングが下側引張となる場合には直接支持、上側引張となる場合には間接支持として評価される。既往研究では、間接支持のせん断耐力、直接支持のせん断スパン比が小さいせん断耐力は十分に検討されていない。本研究では、壁式RC橋脚を対象とし、支持条件に応じた杭基礎フーチングのせん断耐力評価手法を作成したのでその結果を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 コンクリート構造研究室 副主任研究員  轟 俊太朗

15:35~15:55
地盤調査の信頼性向上を考慮した杭の設計鉛直支持力の算定方法

平成24年に改訂された基礎標準では、信頼性設計法に基づく杭の設計鉛直支持力算定方法が示され、例えば載荷試験を行って信頼性を高めた場合には設計鉛直支持力を引き上げられることが示されている。しかしながら、ボーリング間隔を密にするといった地盤調査の信頼性向上効果を実務上で効率的に反映させる方法は未提案であった。本発表では、このような地盤調査の信頼施工向上効果を反映させた杭の設計鉛直支持力算定方法を紹介する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 主任研究員  西岡 英俊

15:55~16:15
鋼管群杭を用いた線路上空建築物の設計手法

線路の上空部分を利用する橋上駅等の線路上空建築物では、地中梁の無い構造形式となるため、基礎構造として採用の多い場所打ちコンクリート杭が大口径となって施工上の制約が大きい場合がある。一方、小口径羽根付き鋼管杭を群杭とする方法では施工性向上が期待できるが、地中梁の無い特殊な構造形式に対しての設計手法が体系化されていない。そこで、線路上空建築物に適用するための構造設計手法を開発したので報告する。

発表者
構造物技術研究部 建築研究室 副主任研究員  清水 克将

16:15~16:35
既設盛土の耐震診断における不飽和強度特性の適用性

既設盛土は建設年代により施工管理基準値が異なり、盛土内部の状態は様々である。そのため、盛土内部の密度や含水比を詳細に把握し耐震診断に反映させることで、より合理的に設計できる可能性がある。本発表では、盛土材料の不飽和状態における強度増加を考慮した耐震診断手法の構築に向けて実施している、降雨時の既設盛土における含水状態の長期計測結果および地盤材料試験による不飽和強度特性の評価について報告する。

発表者
構造物技術研究部 基礎・土構造研究室 研究員  佐藤 武斗

16:35~16:55
地盤の非線形性を考慮した表層地盤の簡易な地震時挙動評価手法

鉄道構造物等設計標準において分類されるG6、G7地盤は、地震時の非線形化が顕著なため地盤の固有周期Tgのみによる地盤種別の判別が難しく、標準設計応答スペクトルが示されていない。そこで、地盤全体の強度を示す指標Kfを用いて地盤種別を細分類化することによる設計応答スペクトルの設定手法と、地盤のインピーダンス比を考慮したモード解析による地盤変位算定法を構築し、地盤の動的解析と同等の精度で表層地盤の非線形性を考慮した地震時挙動を簡易に評価可能としたので報告する。

発表者
鉄道地震工学研究センター 地震動力学研究室 主任研究員  井澤 淳

司会:伊積 康彦 (構造物技術研究部 建築研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。