第310回 鉄道総研月例発表会

日時 2017年05月17日(水) 13:30〜17:04
場所 日本工業倶楽部 大会堂
主題 軌道技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:38
持続可能な線路の実現に向けた軌道技術

鉄道総研では、持続可能な線路の実現に向けて、以下に基づいた軌道技術の開発を推進している。
・低コストにメンテナンスを省力化・自動化する技術
・軌道および軌道構成部材を延命化する技術
・省資源・環境負荷低減に資する技術
本発表では、上記に基づいて進行中の研究開発事例および今後の展開について紹介する。

発表者
軌道技術研究部 部長  村本 勝己

13:38~13:54
タイプレート式レール締結装置のアンカーボルトの腐食対策法

近年、敷設から10年以上経過したタイプレート式レール締結装置において、タイプレートを固定するアンカーボルトに断面減少を伴う腐食が発生することがある。腐食によりアンカーボルトの破断もしくは軸力の低下が生じた場合、レールの締結機能が十分に発揮されず、列車の走行安全性への影響が懸念される。そこで、アンカーボルトの腐食原因を調査するとともに、交換の方針および腐食対策法を提案したので紹介する。また、対策品を営業線に敷設し追跡調査を行った経過を報告する。

発表者
材料技術研究部 防振材料研究室 主任研究員  鈴木 実

13:54~14:10
テルミット溶接部の凝固形態が溶接欠陥発生に及ぼす影響

テルミット溶接のさらなる信頼性向上のため、テルミット溶接部の溶接欠陥発生に影響を及ぼしていると考えている溶鋼の凝固形態を把握し、溶接欠陥の発生原因を解明するとともに、発生防止策について検討した。本発表では、温度測定試験や数値解析によって、これまで明らかにされていなかった溶鋼の凝固形態を可視化した結果を紹介するとともに、溶鋼の凝固形態が溶接欠陥発生に及ぼす影響について考察した内容を報告する。

発表者
軌道技術研究部 レール溶接研究室 主任研究員  寺下 善弘

14:10~14:26
曲線外軌用新型熱処理レールの開発

主に曲線外軌に敷設される熱処理レールは耐摩耗性に効果を発揮しているが、近年、曲線半径が600mから800mのような比較的大きな区間の外軌において、きしみ割れとは異なる特有のき裂を原因とした損傷によって、折損に至るケースが散見される。一方、同区間に普通レールを使用した場合には、摩耗進みが早くなるため、摩耗によるレール交換の頻度が高くなる。そこで、熱処理レールの折損抑制および保守経費の節減を目的として、新型熱処理レールを開発したので紹介する。

発表者
材料技術研究部 摩擦材料研究室 副主任研究員  兼松 義一

14:26~14:40
休 憩(14分間)

14:40~14:56
コンクリート道床をスリム化した低コスト新型弾直軌道の開発

弾性まくらぎ直結軌道(弾直軌道)は、弾性材を介してまくらぎをコンクリート道床で支持する直結系軌道である。騒音・振動低減効果を有し、都市部の高架化事業を中心に広く採用されてきたが、施工性の改善や低コスト化が求められていた。そこで、まくらぎ側面の突起で横荷重に抵抗する構造(せん断キー方式)とすることで、コンクリート道床をスリム化し、低コストで施工性にも優れた新型弾直軌道を開発した。本発表では、開発における実物大模型実験やFEM解析による検討内容を報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 研究員  谷川 光

14:56~15:12
超微粒子セメントを用いた既設線省力化軌道の開発

既設線のバラスト軌道を省力化軌道に改良する場合、一般に既設のまくらぎとバラストを交換してグラウト材を注入する必要があるため、施工費が高価となり、閑散線区での適用事例があまり見られない。そこで、細粒土混入率の高いバラストに対する各種グラウト材の注入特性試験および実物大軌道模型の繰返し載荷試験を実施し、既設のまくらぎとバラストの交換が不要な、超微粒子セメントを用いた既設線省力化軌道を開発した。本発表では、本軌道構造の室内試験結果と営業線における試験施工の概要について紹介する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 副主任研究員  渕上 翔太

15:12~15:28
高強度人工バラストを併用した高減衰弾性まくらぎ工法の開発

車輪通過による動荷重と衝撃荷重が同時に道床に伝わることでバラストの劣化が促進される。鉄道総研では、バラストに加わる衝撃荷重を低減し、バラストの微細な動きを抑制する「高強度人工バラストを併用した高減衰弾性まくらぎ工法」を開発した。本発表では、バラスト層内部における荷重伝達のしくみについて説明するとともに、実物大模型を用いた衝撃載荷実験と、開発中のバラスト軌道シミュレータの2つを用いて、提案工法の沈下抑制のメカニズムおよびその効果について報告する。

発表者
鉄道力学研究部 軌道力学研究室 主任研究員(上級)  相川 明

15:28~15:44
MTT保守とレール削正の組合せによる軌道変位保守効果の向上

一般的に、溶接部や波状摩耗等のレール凹凸が大きい箇所は、輪重変動により軌道変位進みが大きいとされており、レール削正とMTT(マルチプルタイタンパ)による軌道変位保守を同時期に組み合わせて実施することで、軌道変位進みの抑制が期待できる。そこで実データを分析して、その効果を推定する手法と、これまで別々に作成されていた削正車とMTTの運用計画を連携させた組合せ保守計画の作成手法を構築した。本発表では、これらに基づいて開発した、組合せ保守計画を考慮した軌道保守計画システムを紹介する。

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 研究員  松本 麻美

15:44~16:00
休 憩(16分間)

16:00~16:16
高次モードに着目した損傷まくらぎ検知手法

経年劣化や損傷を有するPCまくらぎは適切に検知し交換していく必要があるが、バラスト軌道では上面以外の損傷を目視で確認することは難しい。このような損傷PCまくらぎを衝撃加振時の振動により検知する手法の構築を目的とし、実験室および実環境での種々の振動測定を実施してきた。本発表においては、PCまくらぎの損傷とモード特性との関係、損傷まくらぎ検知に適した指標、効率的な損傷検知を実現するための非接触簡易計測の適用性について得られた結果を報告する。

発表者
鉄道力学研究部 構造力学研究室 副主任研究員  松岡 弘大

16:16~16:32
バラスト軌道における軌道支持剛性評価方法の開発

バラスト軌道は、一般に軌道変位に基づいて管理されており、軌道支持剛性は直接の管理対象となっていない。しかし、熟練技術者の減少に備えた軌道保守の高度な品質管理を実現し、列車の走行安定性をさらに向上させるには、バラスト軌道の支持剛性の定量的管理が有効であると考えられる。そこで、鉄道総研では、バラスト軌道の支持剛性を簡易かつ迅速に評価する手法および装置を開発中である。本発表では、軌道支持剛性評価方法について、実物大模型試験およびFEM解析による基礎的検討結果について紹介する。

発表者
軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 主任研究員 中村 貴久

16:32~16:48
低コストな動的軌間・平面性測定装置の開発

軌道変位の測定には、軌道検測車による動的検測と手押しの検測装置等による静的検測がある。軌道検測車は高価なため、地方鉄道事業者や大手鉄道事業者でも構内線等では静的検測が行われているが、車両走行時には軌道に輪重・横圧が作用し動的な変位が生じるため、脱線を防止するには動的検測を行う方が望ましい。そこで、脱線事故のさらなる低減を目的として、保守用車等に簡単に搭載可能な低コストな動的軌間・平面性測定装置の開発を進めている。本発表では、その開発状況と今後の展望について報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 主任研究員  坪川 洋友

16:48~17:04
高頻度検測データに対応した軌道変位の位置補正・急進把握法

軌道変位の急進は、路盤陥没等の構造物の異常によって引き起こされることが多く、列車走行の安全性確保のために迅速な対処が求められる。近年、導入が進められている営業車両に搭載した慣性正矢軌道検測装置による高頻度軌道検測は、軌道変位の急進を早期に把握することが可能であり、鉄道の信頼性向上が期待できる。本発表では、高頻度軌道検測データから急進箇所の位置を自動的に特定するために開発された、精度の高い位置補正手法および急進箇所の変位進み予測手法について報告する。

発表者
軌道技術研究部 軌道管理研究室 副主任研究員  田中 博文

司会:桃谷 尚嗣(軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 室長)

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