第311回 鉄道総研月例発表会

日時 2017年07月19日(水) 13:30〜16:55
場所 日本工業倶楽部 大会堂
主題 電力技術に関する最近の研究開発

プログラムと発表内容

13:30~13:45
電力技術に関する最近の研究開発

電力分野における研究開発は、鉄道総研の2015~2019年度の基本計画に沿った将来に向けた研究開発を中心として、「省エネルギーで安定した電力設備実現に貢献する」ことを目標として進めており、その概況を報告する。一方、国家プロジェクトとしての高速鉄道海外進出が話題となっていることから、海外の高速鉄道電力設備の潮流を紹介し、国内との違いについても概説する。

発表者
電力技術研究部 部長  兎束 哲夫

13:45~14:10
交流き電回路における電圧共振を考慮した高調波共振解析手法

交流き電回路は変電所から末端までの距離が数十kmにも及ぶことから分布定数回路としての性質を有している。また、電車走行時にき電電流の高調波成分が共振し電話回線の通信品質低下等をもたらすことから、事前に共振の有無を把握する必要がある。一方、新たな車載電力変換装置の普及に伴い、従来のモデルでは説明できない共振事例が散見されている。そこで変換装置に起因する電圧共振も考慮した新たな高調波共振解析モデルを提案するとともに、現地試験を通じて提案解析モデルの妥当性を確認したので報告する。

発表者
電力技術研究部 き電研究室 主任研究員  赤木 雅陽

14:10~14:35
BTき電回路における鋼管柱箇所の地絡保護方式

BTき電回路における地絡保護方式として、駅構内等で使用されるせん絡保護地線(FW)方式がある。一方で、近年電化柱として鋼管柱が普及しつつあるが、コンクリート柱と接地抵抗が違うため、現状のFW方式が適切かを再考する必要がある。そこで、鋼管柱が設備された線区において低圧印加による人工故障試験を行い、交流き電多線条回路網解析プログラムによるシミュレーションと併せ、鋼管柱等の接地抵抗の低い構造物に適した地絡保護方式のあり方を提案したので報告する。

発表者
電力技術研究部 き電研究室 副主任研究員  吉井 剣

14:35~15:00
電車線コネクタの耐疲労性向上

電車線コネクタは、パンタグラフの通過に伴う振動によって疲労損傷するが、これまで明確な耐疲労設計指針は提案されていない。本発表では、架線—パンタグラフ運動シミュレーションと有限要素解析によるコネクタの耐疲労性の評価マップおよび耐疲労設計指針を紹介する。また、同設計指針に基づき、耐疲労性を向上させたコネクタを開発し、フィールド試験により性能を確認したので報告する。

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 主任研究員  山下 主税

15:00~15:15
休 憩

15:15~15:40
電車線非接触検査手法の車両搭載試験と検査対象拡大

電車線設備を画像解析等の非接触で検査する手法の研究開発を行っている。これまでに保守用車等による低速での線条位置測定試験を実施し、トロリ線だけでなくちょう架線や補助ちょう架線の位置測定も可能であることを確認した。鉄道車両への適用の検証のため、試験電車に測定装置を搭載し、鉄道総研の所内試験線の電車線の測定を行った。その結果、車体の動揺を補正することで、提案する測定手法が適用可能なことを確認した。また、検査対象の拡大を目指した電車線金具検出機能の新規開発を行ったので報告する。

発表者
電力技術研究部 集電管理研究室 副主任研究員  松村 周

15:40~16:05
パンタグラフ接触力によるトロリ線静高さ推定手法の営業線への適用

電車線設備の保守作業をより効率的に行うため、パンタグラフ接触力とパンタグラフ高さを活用してトロリ線の静高さを推定する方法を提案している。本発表ではこの手法を、現車で測定したパンタグラフ接触力とパンタグラフ高さのデータに適用しトロリ線の静高さを推定した結果について報告する。また、別途実施したトロリ線の静高さの実測値を比較した結果、両者は概ね一致することを確認した。この結果についても合わせて報告する。

発表者
鉄道力学研究部 集電力学研究室 室長  臼田 隆之

16:05~16:30
カーボン系すり板における段付摩耗の発生メカニズムの解明

カーボン系すり板はトロリ線の摩耗低減効果があり、広く使用されているが、すり板に局所的な摩耗(段付摩耗)が発生することが知られていた。段付摩耗は実フィールドでの再現性がほとんどなく、発生メカニズムも明らかになっていない。そこで、これらを所内試験装置で再現し、その過程で得られる知見を用いて発生メカニズムの解明を目指した。その結果、段付摩耗は、離線アークがカーボン基材を黒鉛化し、同箇所の摩耗率がある条件下で急増するために発生することが明らかとなった。本発表ではこれら概要を報告する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 主任研究員  早坂 高雅

16:30~16:55
張力調整装置の特性が電車線の構造と集電特性に及ぼす影響

電車線の静的構造や集電特性は、張力調整装置の特性に応じた張力変動の影響を受けて変化する。このため、従来から用いられている滑車式やばね式と、近年採用が広がりつつあるガスばね式の張力調整装置を適用した場合を想定し、張力調整装置単体の特性と電車線の構成(線条の種類や長さ)や状態(摩耗、温度)が、電車線の張力、高さ、集電性能に及ぼす影響を明らかにした。この検討に当たり、ガスばね式の張力調整装置を採用した場合の張力計算手法を新たに構築した。本発表ではこれらの概要を報告する。

発表者
電力技術研究部 電車線構造研究室 研究員  武藤 洋

司会:根津 一嘉(電力技術研究部 集電管理研究室 室長)

都合により、プログラムを変更することがあります。


  • 入場無料
  • ご来場の際には、お名刺を頂戴します。
  • 会場内のビデオ・写真・レコーダ等による撮影および録音等はご遠慮ください。
  • 質問コーナーの設置
    前半の発表件名については休憩時、後半の発表件名については発表会終了後に、質問コーナーを設けますので、発表者に直接ご質問いただけます。
  • 鉄道総研では、5月1日より節電対策としてノーネクタイ運動を実施しております。本発表会でも発表者はネクタイを着用致しませんので、ご理解頂きますようお願い致します。